2022年12月31日

日本サッカー界の武器

26分の4。

この数字が日本サッカー界、最大の武器なのかも知れない。

U12年代から、U15、U18とずっとプロクラブの下部組織で育った選手の人数です。

街クラブ、少年団、中体連、高体連、大学サッカー。

これらを複雑に組み合わせて、プロの世界までたどり着いているのです。

実は、世界的に見ても、特殊な状態です。

Jクラブの下部組織から、一度、追い出されてから復活している。

セレクションを落とされた経験があり、他を経由して、プロになる。

プロの世界にたどり着くまでに、実に多様な道のりがあります。





 多様な道を辿っていることが、力にもなっています。

今回のワールドカップのクロアチア戦。

PK戦で決めたのは、高体連出身の浅野選手。

ユース出身の吉田、三苫、南野選手はユース出身。

2010年南アフリカ大会。

ここでもベスト16のパラグアイ戦はPK戦でした。

PKを決めた、本田、長谷部、遠藤選手は、いずれも高体連出身。

外した駒野選手は、ユース出身。

これは、単なる偶然でしょうか?

一発勝負のトーナメント戦の経験、高体連特有のトレーニングの経験がプラスに作用したのでしょうか。





Jリーグが発足したのが、1993年。

今回の代表選手は、物心ついた時には、J下部のチームがあった。

それでも、エリートコースを通り続けた選手だけになっていない。

逆に、9歳10歳の頃から、ずっとJ下部に所属しながらも、プロ選手になれずにサッカーを終えた選手が多数。

これを見れば、意図的に、ずっとJ下部にいない方が良いのでは?

と疑ってしまう現状があります。

でも、それは、エリートコースの指導者が悪いのではないのです。

多くの指導者やスタッフの支えで成り立っている、様々なチームに素晴らしい価値があることを意味しています。

少年団などのボランティアクラブ、教育機関でありながら選手を育てている学校。

ここを含めた競争が、日本の力になっているのでしょう。








 今年も一年ありがとうございました。

ワールドカップが終わっても、少しずつアップしていきます。

来年もよろしくお願いします。


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2022年12月18日

免除するか、全員に同じタスクか

 ワールドカップもいよいよ決勝戦を残すのみとなりました。

決勝戦は楽しみですが、お祭りの最後はさみしい気持ちにもなりますね。

フランス対アルゼンチンという、優勝経験がある国同士の対決。

試合を分けるポイントは、あのエースの2人です。







 フランスにはエンバペ、アルゼンチンにはメッシ。

ここまで、5得点ずつ奪い、チーム内でも、大会全体でも得点王の2人。

どちらがゴールを決めて、チームを勝利に導くのか?

見どころは、そこだけではありません。




 2人に共通している事があります。

それは、守備を免除されているということです。

一見、二人とも守備をしているようにも見えますが?

実際には、守備の局面では、最低限のことしかしていません。

自分の近くにボールが来たら、寄せる。

隣の選手が寄せたら、自分のスペースを埋める。

彼らのタスクはこれくらいでしょうか。

(ボールを奪われたら追いかける、このプレーはさぼらずにやってます。
 ですが、攻撃から守備への移り変わりの局面ですので厳密には違います)

実は、このタスクすら、サボっています。

攻め残って、自分のポジションに戻らないこともしばしば。

自分のタスクを放棄していると言われても、仕方ないかもしれない。










 でも、これは監督も、チームメイトも分かっている。

「あいつには、守備を期待しない。その代わり攻撃で決定的な仕事をしてくれればOK」

エースの2人が得点、決定機の創出という結果で応え続けている。

そこで、監督やチームメイトは、こう考えます。

「メッシの(エンバペ)の分まで守備のタスクを引き受けよう」








 この考えは、相手に弱みを見せることにもなります。

アルゼンチンは、最前線のメッシが守備をしないため、前線からの守備が上手く行かない。

相手の最終ラインが余裕を持って、ボールをつなぎ、ボールを持ち出す。

ボールを受けたボランチも、背後から挟まれることもないので、彼らが周囲を観る時間が生まれている。

DFラインは下がり、ボールを奪う位置が低くなってしまう。

日本のFW前田や浅野があれだけ前線から走り回っていた姿とは、大違いですよね。






フランスの場合は、左サイドを崩されてしまう。

左のウイングに位置するエンバペ。

守備の局面になっても、ゆっくり歩いていることも。

その結果、左サイドの守備が後手に回ってしまう。

枚数も足りませんしね。



モロッコ戦では、相手のストロングポイントがまさにこの位置。

ハキミとジエシュの2人が面白いようにドリブルやパスで崩していました。

はっきり言って、フランスの左サイドの守備は崩壊。

他の試合でも後手に回ることはありましたが、ここまで崩されたのは初めて。

フランスのデシャン監督も我慢できずに、左サイドにテュラムを送り込みました。

エンバペを中央に回して、応急処置を施しました。









 JFAの講習会では、この言葉を必ず耳にします。

現代のサッカーでは、守備を免除される選手はいない。

全員が攻撃に、守備に、積極的に関わらなければならない、と。

日本代表は、この言葉の通りに、全員で戦い、スペイン・ドイルを撃破し、ベスト16へ進出しました。

でも、アルゼンチンとフランスは、1人だけ守備を免除される選手を配置しています。

エースの彼らが試合を決定づけるプレーを見せるのか?

それともチームの穴になってしまうのか?

これが、試合の大きな分岐点になるでしょう。

さて、残り1試合楽しみましょう!!
posted by プロコーチ at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 観戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月09日

PK戦とは何か。

ベスト16、クロアチア戦。

残念ながら、PK戦で敗れてしまいました。

途中から、勝ちたい!よりも負けたくない!気持ちが増していったように感じましたね。

リスクはあるでしょうが、勝つためにどうすれば?!というプレーが見たかったです。

特に、後半から出てきた切り札の三苫選手。

彼が守備に回る機会が多かった。

守備でもかなりの貢献をしてくれていました。

でも、あえて攻め残るようなポジショニングもありでしょう。

それは、伊東純也選手に言えます。

例えば、フランスのエンバペ選手。

彼はかなり守備をサボっていました。

でも、チームとしてそれを許容し、カバーし合っていたように見えます。

その分、ゴール!という結果が求められるエンバペ。

そしてゴールを見事に叩き込み、ベスト8にチームを連れて行きました。

これも、戦略であり、チームプレーです。







日本が敗れた、PK戦についてまとめておきます。

・先攻になれば勝率は高い。(→ABBA方式の導入が検討されている)

・交代で入った選手が優先的に蹴るべき。

・PK戦は運ゲー、コイントスなどではない。準備により勝率は高まる。

・ゴールはGKと分析班との共同作業で守る。

・自分たちのサポーターがいるサイドで行いたい。



PKは大別すると2種類。

・コースを予め決めて、蹴り込む。

・GKと駆け引きして逆に蹴る。(遠藤やネイマール)

どちらにしても、メンタルが占める要素が高い。

スポーツ心理学に基づいてトレーニングすべきです。

トレーニングの最後にリラックスしてするのではメンタルの部分が向上しません。

試合の状況を再現しながら、緊張感を高めてトレーニングをする。

120分戦った後にPK戦を実施することを考えれば、フィジカルを上げる、しんどい内容のあとに実施するのもいいかなと思います。





選手には、2種類のうち、どちらの蹴り方をするとしても、徹底したいことがあります。

・ボールを手でセットすること。レフェリーがセットしてくれても置き直すこと。

・毎回、同じ助走をすること。

・笛が吹かれても、自分のタイミングでキックを始動させること。

これら全てがルーティンになり、どんな大舞台でも同じ力を発揮することを助けます。

イチローのあれも、五郎丸のあれも、ルーティン。

トレーニングの時から、ルーティンをすることが大切です。

この視点で見れば、日本の選手は蹴り急いでいたように感じました。

この空間、時間は俺のためにある。くらい、自分のタイミングでPKに臨めば、結果は違ったかもしれません。







最後に一つ強調しておきます。

フットボールの能力とは違うものが求められるので、PKの実力を高める必要があります。

くれぐれも、運が全てではありません。

本人が運が全てだと思ったとしても、指導者として、そのように伝えることは決して出来ないのです。

カタールでの日本代表の戦いは、終わってしまいました。

でも、ワールドカップは続きます。

最後まで盛り上がり、見届けましょう。
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2022年12月05日

お手本となる好チームとの対決

クロアチアのスタイル。

それは決まったものがないのがスタイルとでも言うでしょうか。

チームとして特筆すべき他との差異も無ければ、目立ってしまう弱点もありません。

当たり前のことを当たり前にプレーする。

しかも、かなりのハイレベルで。

全ての基準が高いのです。

日本にとってもお手本になるようなチームです。





  しかも、彼らは勝負にこだわり、粘り強く、集団で戦い続けます。

後半になってもメンタルは壊れず、最後の最後まで戦い続けます。

前回のロシアW杯。

決勝トーナメントの1回戦から3試合連続で延長戦の120分を(内2試合はPK戦)戦いました。

疲れが蓄積し、足が止まって不利なのでは?との予想も当たりません。

彼らは最後の最後までハードワークを続けました。

まるで今大会の日本代表のようではありませんか。

ドイツやスペインのように後半になったら足が止まり、圧力が弱まることは期待できません。

日本得意の後半勝負!後半になれば勝機が来るとは思えないのです。







クロアチア。

彼らの戦いはオーソドックスです。

攻撃においては、1−4−3(中盤は逆三角形)−3のシステムがベースになります。

両サイドバックも攻撃に積極的に関わります。

ボール保持の局面では、1−2−3−2−3に見えるでしょう。

中盤の三人に素晴らしいタレントが並びます。

メガクラブで主力を張る、コバチッチ(チェルシー)、ブロゾビッチ(インテル)、モドリッチ(レアル・マドリード)。

彼らが流動的にポジションを変えながら基点となり組み立てる。

サイドにボールが展開されたら、サイドバックがスピードに乗ってオーバーラップ。

サイドを崩し切ってマイナスのクロスをPKマークに入れるのが、最も狙っている形だと思われます。








 守備においては、3つの陣形を使い分けながら、試合を進めます。

ミドルサードでは、1−4−1−4−1。

両サイドのウイングが中盤に入り、どっしりと構える。

後ろが少し重たいので、ボールを奪う位置が低くなりがちですが、相手の中盤にスペースを与えないことを重要視しているのでしょう。

これをベースにしながら、前に奪いにいく時は、システムを崩します。

前から順番にマンツーマンで相手を捕まえに行きます。

ここで選手の並びは重要視していません。

とにかく相手を捕まえて、ボール狩りに行くのです。

一方、相手に攻められた時は、中盤のセンターの1人が最終ラインに落ちます。

(サイドバックとセンターバックとの間に)そして1−5−4−1に変形。

サイドのスペースで相手をフリーにさせない。

そして中央にセンターバックを残して空中戦を制する。

これが目的。

自分たちのタイミングで、ボールに対して後ろから前に強く寄せてボールを奪う。







 攻守において5つのシステムを使い分ける彼ら。

これは特別方法ではありません。

攻守における彼らの設計図は、あまりにオーソドックス。

教科書に書いてあるような、現代のヨーロッパでは有名であり、たくさんのクラブが実践している内容です。

ヨーロッパで活躍する選手の多い日本代表にとっても、全く珍しくないはずです。

ただし、一つ一つの精度や、強度が高いのです。

彼らの実践している基準の高さは、見ていて勉強になりますね。







では、そんな彼らと、どのように戦い、勝利に向かっていくのか?

守備においては、森保監督は、1−5−4−1のサンフレッチェ型を用意しているのでしょうか。

相手は3トップ。中央に1枚、両サイドにアタッカー。

最後尾を3バックにすると、中央のCBが2枚余ってダブついてしまう。

相手のサイドアタッカーをウイングバックがマークします。

すると相手SBのオーバーラップをマークするのはシャドーの選手。

少し相手が攻めてくると9枚が後ろにへばりつく。

後ろが不必要に重たく、相手ゴールが遠くなりやすいです。







 私が今回お薦めするのは、1−4−2−3-1です。

このシステムの方が、相手と噛み合い、効率の良い守備ができるからです。

4バックならセンターバックの2人でどちらかがセンターフォワードをマーク、もう1人がカバー。

両ウイングをサイドバックでマーク。

相手のインサイドハーフをボランチ2枚でマーク。

ボランチはトップ下が見る。

相手のサイドバックのオーバーラップはサイドアタッカーがケア。

というように、一人一人の担当が分かりやすく、責任がはっきりします。

そして人につく守備をする傾向がある日本は、すんなりとこのプランを遂行できます。

相手の長所を押さえる傾向のある森保監督は、この方法がプランにあるのではないでしょうか。








  攻撃でポイントとなるのは、横、斜めです。

直線的な動き、縦パスは、通用しない。

クロアチアの守備陣は、後ろから前にガツンと奪いにいく、ボールを弾き返すのを得意としています。

その一方、横の動きに対する対応は脆さがあります。

ボールを保持したら横に揺さぶる。

サイドチェンジや、フェイントからのカットインは特に有効だと思います。

とはいえ浅い位置からの単純なクロスは全く通用しないでしょう。

横に揺さぶりたいですね。







相手の攻撃の特徴として、攻撃になったら幅を作るためにサイドの選手が拡がる。

かつ中盤の3選手が流動的にポジションを変えながら攻める、というものがあります。

ボールを高い位置で奪ってからのカウンターアタックは、とても有効です。

奪った瞬間、たくさんのスペースを相手に渡してしまうのがクロアチア。

そして、能力の高い中盤の3選手だからこそ、良くない状況でも自信満々にボールを保持している。

ここに日本のプレッシングで奪うチャンスが必ずあるはずです。

何度外されても諦めずに複数で囲んでボールを奪い、素早いカウンターアタックは有効です。







 もう一つの得点の匂いは、GKです。

相手GKのリバコビッチ。

ビッグセーブもありシュートストップに力を発揮します。

ですが、彼はニアサイドを守ろうとする意識が少し強すぎる。

そしてサイドにボールがあるときは、そのポジショニングや飛び出しが命取りになる。

GKを超えてファーサイドにボールを送り込む。簡単に被ってしまうことがあるでしょう。

スペイン戦の三苫の折り返しに田中が飛び込んだ、あのイメージです。






 クロアチアはタレントも優れていて、チームとしての成熟度も高い。

日本代表とクロアチア代表を比べると、クロアチアの方が身長で5センチ高く体重で3キロ重い。

まるで1学年上の選手と試合をするくらいの体格の差があります。

その大柄な彼らが集団として機能し、諦めずに戦い抜くメンタルもある。

本当に難敵です。

ですが、グループリーグを通して同じ選手がプレーを続けている。

そして選手の高齢化も進んでいる。

一方、我々日本代表は、ターンオーバーも駆使し、多くの選手が試合に出ている。

つまり、相手よりもフレッシュな選手が多い。

そして暑さにも慣れていて、我慢強い国民性は夕方の暑さも吹き飛ばすはず。

コンディションの良さでは日本に歩があるでしょう。

試合展開としては、我慢比べをしながら、延長戦まで持ち込み勝利を目指すのが、得策かな?と思います。

さあ、歴史の証人になるべく応援しましょう。
posted by プロコーチ at 19:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 観戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月04日

クロアチアを知る(モドリッチ)

 見事に決勝トーナメントに進出を決めた、日本代表。

ベスト16の対戦相手はクロアチアに決定。

我々にとっても馴染みのある相手ですね。

前回のロシアW杯では、見事ファイナリストに。

人口わずか400万人ながら、フットボール強国として名をはせています。

旧ユーゴスラビア時代は東欧のブラジルと呼ばれ、テクニックの高い選手が出てくる地域でもありますね。







 近年のクロアチアと言えば、モドリッチがあまりも有名。

レアル・マドリードで10年も活躍。

2018年のロシアW杯ではMVPに、同年には世界一の選手としてバロンドールも獲得しました。

名実ともに、世界でもトップオブトップのプレーヤー。





 実は、JFAも公式に、ではありませんが、日本人選手の目標とする選手の好例として示しています。

どの部分を評価し、日本人の目標とする姿としているのでしょうか?
  
一つは、パワーやスピードに頼っていないこと。

モドリッチは、172センチ66キロ。

Jリーガーの中に入っても、小柄で細身ですね。

10代の時には、あまりにも華奢なために、セレクションを落とされたこともある。

恵まれた体格を生まれ持った訳ではない。

その選手が、どのようにプレーをしているのか?




彼の特長は、高いテクニックを発揮し、判断も早い。

しかも、足元にボールを止めて、時間を作る、そこから仕掛けるのは彼のスタイルではありません。

そのようなプレーだと、相手DFとのぶつかり合いが増え、相手に潰される危険が増してしまいます。

だから、止まらずにボールを受けて、動きながらボールをコントロールし、動きながらパス・シュート。

すぐさま一歩目から走り、繰り返しボールに関わる。

動きながらテクニックを発揮し、ボールを受けるためのサポートも優れている。

まさに日本の目指す姿そのもの。

このテクニックは、彼がユース世代に所属していたディナモザグレブのスタイルとのこと。

ファーストコントロールを足元に止めると、プレーが遅くなってしまう。

トップレベルの試合では許されない。

だから、ファーストコントロールで斜めに動かして、相手のプレッシャーを受けず、次のプレーに向かう。

モドリッチは、この教えを忠実に守り続けているのです。

ディナモザグレブは、未来を予測しながら、今の選手を育ているとのこと。

だから、現代フットボールに適合した選手を育て続けれているのでしょうね。









そして、守備においても、自らボールに寄せて奪う。

仲間のためにスペースを埋めながら、危険なエリアをカバーリングもする。

守備時においても、免除されるのでなく、常に積極的に関わっている。

体の大きくない選手が、どのようにプレーすればいいのか?その答えが彼には詰まっているのです。

だからこそ、JFAがモドリッチを目標にすべき選手であると考えているのでしょう。






 日本の子どもたちが目指すべき選手であるモドリッチ。

彼が中盤に君臨する強国クロアチア。

どのような試合になるのかが本当に楽しみです。
posted by プロコーチ at 01:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月01日

おすすめはガスペリーニ、ビエルサ、ミシャ

 いよいよ決戦のスペイン戦。

なんとしても、勝ち点1以上を奪わなくてはならない。







 超強豪スペイン相手に、どのような試合をすれば良いのでしょうか。

そのためにスペインの指導、戦術を少しだけお勉強。

3つほど戦術のコンセプトを知れば、彼らの闘い方が見えてきます。

・デスマルケ(相手のマークを外すアクション)

・エントレリネアス(ライン間の意味、そこから相手のラインとラインの間を活用すること)

まずは、この2つは常時繰り返されています。

これ無くして、スペインのサッカーは成り立たないと言っても過言ではないでしょう。

マークを外してボールを受ける、人と人との間で受ける・受けようとする。

このふたつのアクションを活用しながら、ボールを保持し、相手の穴を作り出し、ゴールを目指しています。









 ただ、これだけだど、整備された守備組織は崩せないことも出てきます。

相手が、集結し、バランスを取り続け、集中してマークを続けている状態です。

その時に大切になるのがもう一つのコンセプト、

・エスパシオリブレ(自由なスペースの意味、実際にはスペースを作り、代わりに他の選手に活用させるアクション)

ポジションチェンジまでは行かないのですが、動きを増やし、流動性を高めるのです。

ドイツに先取点を奪われた時の、PKを与えたシーンがイメージしやすいでしょう。

あの時は、サイドの選手が中に入って相手のマーク(酒井宏樹)きて、外にスペースを創出。

空いたスペースに後ろから選手が飛び出してきました。

絵に書いたようなエスパシオリブレの成功例です。











 これらのアクションを繰り返す、スペイン。

どのように対抗すれば良いのでしょうか。

おそらく考えられるのは、1−9(5−4)−1の布陣を敷いて、人海戦術で守ること。

サンフレッチェスタイルですね。

元サンフレッチェのミキッチも、俺たちのやり方だ!と語っていたとか。

ドイツ戦の成功体験があるので、最初からか、途中から採用することは十分にありそうです。

これも一つの方法だど思います。

ここから点を奪うには、サイドアタッカー(ミキッチ、柏)の躍動と、2シャドー(ウタカや柴崎、ドゥグラス)の飛び出し。

この辺りがポイントになりそうです。













 でも私のおすすめは、これではありません。

ガスペリーニ、ビエルサと書けば、勘のいい方ならピンと来ますね。

オールコートマンツーマン、もしくはマンツーマン主体の守備システムの構築です。

森保監督の師匠とも言える、ミシャ監督。

彼が、近年、川崎フロンターレや横浜マリノス対策で用いています。

ボールや人が流動的に動いても、目の前の選手についていく。

そうすれば、エントレリネアスも、エスパシオリブレも無効化できます。

そもそもスペースもライン間も無くしてしまうからです。

相手のミスを誘い、ボールを刈り取り、背後に飛び出してゴールを目指す。

ジェフ、代表のオシムさんも、このやり方をよく採用していましたね。

ダイナミックで躍動的で、見ている人を魅了してくれました。

戦力的に下回るチームの選択肢としては、いまだに有効だと思います。








 ただ、マンツーマンでついていくときに、デスマルケには注意しなくてはならない。

1人マークを外されると、全部が狂ってしまうのがこのやり方。

ドリブル突破も同じ理由で許してはなりません。

おそらくこのやり方は採用しないでしょうが、このようなアイデアもあることを知ってほしい。

急に採用するのは、リスクが高すぎるからです。

この提案は私の個人的な趣向でしょう。








 ただ一つだけ知ってて欲しいこと。

ご自分が体験した方法だけが、サッカーの全てではないということ。

世界には様々なサッカーが存在します。

様々なサッカーを知ることで、豊かになれると思います。

そのためにも、ワールドカップをたっぷり楽しんでください。
posted by プロコーチ at 18:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 観戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ズレを活かすか、ズラさないか

 コスタリカ戦は残念な結果に終わってしまいました。

そして、内容も凡戦でした。

負けてしまったのは、もちろん予定外。

ただし、内容が凡戦だったのは、森保監督のイメージ通り。






 試合の開始は、私の予想?願望?であった、川崎フロンターレカラーの強いものでした。

田中碧こそいないものの。

システムもテレビの表記こそ1−4−2−3−1でしたが、実際は中盤に鎌田が入る時間も長く1−4−3−3とも言えるもの。

ボールを保持しながら、相手を動かし、崩す試合をするように見えました。

が、鎌田のポジショニングと、上田綺世のボールのターゲットとしての役割がうまく、はまらない。

相手の組織力がそれほど高くないので、チャンスにはなりかけますが、決定的な形にならない。

そうこうしている内に、相手が5バックに変更。

私は、これはチャンス!と思いました。

そのほうが中盤にスペースが生まれるので、よりボールを保持してサイドを崩し切る機会が増えるのでは?

相手と噛み合わずに、フリーになる選手も出てくる。

そこを基点にすれば、どんどんズレが生まれ、相手の対応が後手になるはず!









 でも、その希望はすぐに無くなりました。

それは、日本代表も、相手に合わせるように、5バックにシステムチェンジを。

相手の動きに対して、ズレを作らずに対応する方法を選んだのです。

確かにこうすれば、相手の動きを抑えることが楽になるでしょう。

誰が、誰に付くのかがお互いに明確になりますからね。

しかも日本代表はポジションチェンジや、スペースを作って侵入するプレーも少ない。

結果として、ピンチにはならないけど、チャンスも作れない。

時間が過ぎていく、クローズドな展開になりました。

三苫や伊東が仕掛けれる状態でボールを持てないのも、残念ながら分かっていたのでしょう。








 ズレは無くなり(意図的に)、時間が過ぎていきました。

0−0でも構わない。

いい形ができれば、1点くらい取れるかも?

ただし、ピンチは作らないぞ。

ですので、あの盛り上がりに欠ける内容はプラン通り。

ただ一つの誤算は、ミスから失点しまったことなのでしょう。

監督として、その判断はあり得るものだと思います。












 さて、グループリーグ最終戦、スペイン戦。

私たちは幸せだと思います。

スペインも有利とはいえ、グループリーグの突破を決めていない。

コンディションも上がってきているスペインと、本気の勝負がワールドカップで出来るのです。

日本サッカー界においても、宝物のような時間です。

偉大なる目標の一つであり、調子も良い国と真剣勝負ができるのですからね。

1瞬、1秒も目を離さずに、歴史の証人になりましょう。
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2022年11月27日

オーストラリア戦にヒントあり

 コスタリカ代表をどのように攻略するのか?

コスタリカと言えば、堅守速攻。

粘り強い守備からカウンターやセットプレーでゴールを目指す。

このイメージは、2014年ブラジルワールドカップでの成功からでしょう。

当時、私も現地でコスタリカの試合を観戦しました。



ポイントは5バック。

統率の取れた5バックが、見事にラインコントロールしながら、守備を行う。

4枚のDFラインでさえ、ズレが生じるものなのに、5枚でスムーズな上下動。

(2002年のトルシエ監督はラインコントロールを極めるために3人でしたよね)

中盤の選手も献身的に上下動を繰り返し、チームとして組織していました。

「リコー、リコー」とサポーターの声援を受けて、最後までは走りぬきました。

ギリシャを倒し、ベスト8を勝ち取った瞬間、ピッチの全員とスタンドとが一つのチームでした。







 それは、8年前のイメージです。

4年前のロシア大会の時も、堅守と呼ぶには疑問な守備組織でした。

そして、今回のカタールワールドカップ。

8年前の面影は、ほぼありません。

ケイラー・ナバスが守護神であることは変わりませんが、守備組織は違います。

これはスペインに負けたから、というわけではありません。





 本大会前の最終予選、プレーオフ。

そして、あの0-7のスペイン戦。

彼らは4バックがメインのシステム、1-4-4-2。

ゾーンディフェンスで相手を網にかける方法と、前からハメにくる方法を使い分けようとします。

ただし、これは時間の経過とともに、崩れていきます。

勝手に人についていく選手、ゾーンを守る選手、ポジショニングをサボる選手。

崩れた立ち位置なのですが、無理やり、ボールに人に寄せていきます。

後手に回ることもしばしば。

それでも予選で失点が少ないのは、ナバスが守護神だから。

そして相手が勝手にミスをしてくれているから。

結果的に失点が少ないだけなのです。

スペイン戦では前半途中から、4バックを諦め、5バックに変更し、なんとかスペースを埋めて対応。

しようとしましたね。

でも、組織が無いので、本物の攻撃を止めることは出来ない。









 では、我々日本代表は、このコスタリカをどのように攻略し、勝利を収めればよいのか?

ヒントは、最終予選のオーストラリア戦ではないでしょうか。

アウェーでの厳しい試合でしたが、三苫の2ゴールで、本大会出場を決めたあの試合。

日本代表(1-4-3-3)
権田
山根、吉田、板倉、長友(63分 中山)
遠藤、守田、田中碧(84分 原口)
伊東、浅野(63分 上田)、南野拓実(84分 三笘)

メンバーに川崎フロンターレ派閥が5人もいます。

この時のシステム、人選を持ち込むのはどうでしょうか。

彼らは相手が引くのも、ゾーンを組むのも、ボールに食いつくのも慣れている。

攻撃の局面においては、素晴らしく力を発揮してくれるはずです。

(守備の時間が長くなってしまう試合では、残念ながら不向き。)

ボールを動かしながら、相手を外し、いなし、動かして、じわじわと足を弱らせる。

そして、空いてきた隙間を崩し、ゴールを陥れる。

先取点も田中からのパスを山根と守田がワンツー、最後に三苫が飛び込んでゴール。

このゴールの形こそが、狙うべき形。






 コスタリカを崩すためには?

守備組織が強固ではないとはいえ、アジアレベルではありません。

中央突破や、サイドからの簡単なクロスが入るとは思えない。

(スペインは何度も中央を崩し、ゴールも決めましたが、彼らは参考にはならない)

コスタリカの守備の弱点、それはゴールを背にしながら前向きに守備が出来ない時。

相手に深い位置まで侵入される、そしてマイナスに戻すようなクロスへの対応は苦手。

DFラインはただただ下がるでしょう。

MFラインはマークを見失う。

深い位置から、PKのマーク辺りにグラウンダーのプルのクロスを送りこみたい。

ここからシュートを打てば、さすがのナバスの牙城も崩せるでしょう。










 そして、もう一つのコスタリカの弱点。

クイックリスタートへの反応です。

接触プレーで倒れると、座り込んでレフェリーに対してファールのアピール。

時計が進むと、その傾向は強くなります。

相手を倒してしまったときに、俺は何もしていないよアピールもしてくる傾向。

日本代表は、賢くたくましくプレーすれば、チャンスがあるでしょう。

相手の反則の瞬間に、さっとクイックリスタート。

ファールのアピールがあっても、笛が鳴るまでプレーを止めない。

相手のリズムでなく、自分たちのリズムを崩さないことでしょう。










 コスタリカは、乗ってくると止めるのが難しい。

セットプレーやカウンターで、先取点を与え、相手のリズムになってしまえば、敗れる可能性も十分にあるでしょう。

日本がドイツ戦で見せてくれた、一体感を持ち、粘り強い戦いをすれば、勝てる可能性は高い。

勝利を信じて、カタールに声援を届けましょう!!

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2022年11月25日

ドイツ戦の前半。

 歓喜の日本対ドイツ戦

日本は2つの守備プランを用意していました。

あまりにも当たり前ですが、高い位置での守備と押し込まれた時の守備。

それがうまく行かなかった理由は、次のように考えられます。




まずは、高い位置での守備。

相手の布陣を4バック+2CMFと読む。

2センターバックには、1トップ前田とトップ下の鎌田を横並びにして当てる。

両サイドバックには、久保と伊東の両サイドハーフが当たる。

CMF(セントラルMF)には遠藤と田中蒼が当たる。

マンツーマンとは言わないものの、責任をはっきりさせて、同数で守備。

狙いとしては、奪うというよりも前進させたくない?

もちろん奪って速い攻撃はイメージしているでしょうが、簡単に前に進ませないことを優先したようにみえました。




 これが上手くいかなかった理由は、ドイツが左肩上がりの変則の4バックだったから。

そして、空けておいたスペースを中盤の選手が活用したから。

右サイドバックは上がらずに、センターバックのように振る舞う。

逆サイドの左のサイドバックは、左サイドハーフのように。

そして、変則的にポジションを取ることにより、

空いた右サイドバックがいるであろうポジションにミュラーが、入ってくる。

ミュラーがズレを作ると、周りが連動して、ボールを受けに来る。

一番抑えたい、キミッヒやギュンドアンの中央すらもフリーになってしまう。

全くと言っていいほど、プラン通りにはハマりませんでした。












 もう一つのプランは押し込まれた時のプランです。

まずは、4バックが中央を固める。

その前にボランチの2人が立ち、ブロックを形成する。

相手のサイドバックが上がってきたら、サイドハーフが下がって対応する。

前線の2人は、相手のCMFを監視する。

まあ、定石通りの方法でしょうか。




これが破綻してしまったのは、守備陣の人への意識が強すぎたことではないか?

ゾーンのように配置はするものの、人の動きに付いていっていました。

これは指示によるものだと考えられます。

相手のレベルが低く、出し手と受け手の関係だけでサッカーをするチームには有効です。

ただ、3人目の動きや、スペースを作りスペースに入ってくるような動きには弱い。

ポジションチェンジをする相手にも、釣られてしまいますね。

人への意識が強く、後手に回ってしまった。

PKを与えたシーンは典型でしょう。

正しくゾーンDFで守っていれば、あの位置に、あのタイミングで人がいないことは考えにくいです。









高い位置での守備、低い位置での守備。

どちらも、上手く機能していませんでした。

この状態で、前半のうちは2失点目をしなかったことが、大きな勝因と言えるでしょう。

全員での気迫こもったボールへの執着心ですね。

ただ、これをどこまで計算していたのかは、私には分かりません。


後半は、1-9(5-4)-1に変更し、勝利したのはご存知の通り。

良い守備が、良い攻撃を生み出していましたね。


posted by プロコーチ at 18:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 観戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年11月22日

1-9(5-4)-1かな?

 カタールワールドカップが開幕しました。

熱戦が続いています。

アジア勢などの欧州・南米以外が苦労しているようです。

特にヨーロッパがシーズン中の大会。

例年なら、長く厳しい戦いを終えた選手たちは疲弊しきっている。

ところが今大会は違います。

ヨーロッパのトップリーグで活躍している選手がそのまま活躍しそうです。







 そう考えると、日本が相対する、ドイツ、スペインというのはアンラッキーでしょうか?

グループリーグの3試合。

一番可能性が高いのは、ドイツ戦だと思います。

それは、ドイツが優勝候補であるからです。

ドイツは当然決勝戦まで意識して、準備を進めているでしょう。

決勝戦は12月18日。

約1か月も先です。

こんなにトップコンディションを維持できない。

優勝候補の国々は、ベスト8の12月10日前後に照準を合わせているはず。

日本と対戦する11月23日は、まだまだピークとは言い難いコンディションでしょう。

ここに日本が付け入るスキがあると思われます。









 そして、日本代表のメンバーを見た時に、森保監督はどのような試合展開を意識しているのか?

勝手に、これを想像してみました。

ヒントは、広島時代の戦い方。

3バックの両脇を下げて、5バックにし、両サイドのスペースを埋めてしまう。

中盤もボランチ2枚に加えて、シャドーの2枚も下がる。

そして、9人で(5-4)のブロックを形成。

低い位置で粘り強く守る。

相手を引き込んで、カウンターアタックでゴールを目指す。

失点の少ない、計算できる戦い方で、広島時代は優勝を重ねましたよね。








 大会前に相手チームをスカウティング。

ボールを保持して、コンビネーションでゴールに迫る方法は成り立たない。

それなら、守備と守備から攻撃の2局面が戦いのカギを握ると考えたのでしょう。

つまり、相手を引き込み、低い位置でボールを奪い、相手の背後にスプリントしてカウンターアタック。

そのために、長い距離をスプリント出来るアタッカーを選んでいます。

大迫でなく、原口でなく、浅野や前田に伊東。

そして、3バック出来るようにCBの人材も豊富。

長いボール一発でゴールに迫れる、柴崎も残しています。

1-9(5-4)-1。

昨年の欧州王者チェルシーが、引きこもる時の戦い方がイメージしやすいでしょうか。







 この戦い方で勝つ、もしくは引き分けで勝ち点を得るためには、絶対条件があります。

それは、先取点を与えないこと。

出来るだけ0-0の時間を長くすることです。

全員が体を張って、守備をする。

もちろんGKのビッグセーブも欠かせない。

そうすれば、勝ち点獲得も見えて来そうです。





 つまらない戦い方なので、選手から不平不満の声が上がるかも?知れません。

ベンチ・スタッフも含め一体となり戦う必要もあるでしょうね。

試合中にベンチが映し出されます。

ベンチの姿が、一つの目安になります。

その時に、「お!ベンチも戦っているな!」と感じるのか?

それとも、「?」ベンチに座り込んで談笑している選手が一人でもいたら厳しい。

引いて守るのは、難しい。

レベルが高い相手だと尚更です。

スペース無くても、こじ開けてくるのが、トップオブトップの国々。

大量失点での敗退も十分が考えられます。









 ご存知のように、W杯は初戦が大切。

日本代表も、初戦を引き分け以上ならば、グループリーグを突破しています。

2002年日韓引き分け、2010年南アフリカ勝利、2018年モスクワ勝利。

一方、初戦で敗れた年は、必ず敗退しています。

1998年フランス、2006年ドイツ、2014年ブラジル。

初戦で勝ち点1をなんとかもぎ取りたいのです。

我々、サポーター、JFAファミリーも一体となって戦いたいですね。

posted by プロコーチ at 23:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 観戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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