2008年11月14日

タイミングをズラして。

 ガンバ大阪が、見事アジアNO.1の座を勝ち取りましたね!
日本でフットボールに携る者として、正直に嬉しいです。
何よりも、日本人が好きな試合を展開するチームの1つですよね。

 短いパスを丁寧につなぐ。
サイドの高い位置で、ドリブルを仕掛けていく。
個々の技術力の高さが感じられる集団です。

 そのテクニック集団の中でも、中盤に君臨する遠藤選手。
不必要なボールタッチは、ほとんどありません。
ワンタッチ、ツータッチでボールを動かしていきます。
全ての攻撃が、彼を経由していくのでは!?
そんな錯覚を覚えるほどの、存在感。

 全体がスムーズに行くように、ものすごく繊細に気をつかっています。
ピッチのあらゆる場所にボールを配球していく。
さながら、血液を全身に行き渡らせるように。
まるで、ガンバ大阪の心臓部のようにです。

 もちろん、対戦相手も分かっているのですが、なかなか止めることが出来ない。
ボールテクニック、視野の広さが際立っている。
シンプルかつ、相手DFの逆を取り続けていくのです。
彼にグッと寄せれば、パスやボールタッチで外される。
様子見でいれば、大きな展開やミドルシュートで局面そのものを変えてしまう。
フットボールの理解が、素晴らしく高い。
中盤の選手の、最高のお手本と言えます。


 さて、パスを出した後、止まってしまう。
「パス&ムーブ」「パス&ゴー」が出来ない。
これは、日本人選手の悪い特徴として、挙げられています。
パスを出しては、一回お休み。
足だけでなく、頭までも止まってしまているのではないか?!
オシム前監督は「走れ」「走れ」言い続けた。
私達の有する弱点の1つ。

 遠藤選手にも、しばしばそのような姿が見られるのです。
パスをつないだ後、ほとんど!動かずに止まっている。
そんな姿を目にしたこと、皆さんはありませんか。
フットボールの理解が高いはずなのに!!どうして?

 その疑問を氷解してくれるプレーがありました。
決勝戦の2NDレグの後半です。
右サイドに開いてボールを受けた、遠藤。
彼の目の前には、いっぱいに大きなスペースが広がっています。
ウイングや、サイドアタッカーなら、よだれの出るほど美味しいスペース。

 遠藤は、ほぼ真横(やや斜め前)の味方にパス。
ボールを受けた味方は、前を向いて、どこにでもパスを出せる状態。
にもかかわらず、遠藤はその場に留まり、とぼとぼと歩いています。
「目の前に美味しいスペースが広がっているのに!」
「ワン・ツーで簡単に右サイドを深くまで攻略できるのに!」

 とぼとぼ歩いている遠藤を見て、相手のDFは、ゴール前に戻りだしました。
「遠藤は怖くない、それよりもボールを持った選手をつぶさなくては」
そう考えたのでしょう、中央にしぽりながら、守備を固めることを選択しました。

 その次の瞬間です。
遠藤は、急激にランニングのスピードを上げたのです。
右サイドの前方に広がったスペースに向かって、仕掛けるフリーランニング。
見事なまでの、緩急を使った「だまし」です。

 中に絞っていた相手DFは慌てて対応に行くも、間に合うわけも無く・・・。
遠藤は、フリーでリターンパスを受け、ワン・ツーパスを成功させました。
惜しくもゴールにはなりませんでした。
しかし、完全にサイドを攻略して、決定的な形を作ったのです。
たった、一人の気の利いたランニングで。

 遠藤はわざと、とぼとぼとしたムーブを見せたのです。
DFの気を他に向けるためにです。
足は止まっても、頭は全く止まっていない証拠ですよね。
様々な次のプレーを考えていたのでしょう。
高性能のコンピューター並みに、計算を繰り返していたに違いありません。

 パスや、ドリブルで相手の逆を取る。
相手の変化を観て、プレーを変えていく。
ボールを持った状態では、誰もがその工夫をするでしょう。
その1つが、タイミングを外す、ずらすキックやボールタッチです。
彼は、ボールを持っていない時でさえ、相手の逆を取ってしまうのです。
ボールを持っていないのに、相手DFを走らせてしまう。
真似をしようとしても、なかなか難しいでしょうね。


 ガンバ大阪の攻撃的なスタイルは有名です。
その中心で、圧倒的な存在感を示す、遠藤。
めぐり合わせの不思議か、世界レベルの大会でお披露目していないのです。
今回のオリンピックも、前回のオリンピックも。
なぜか、ドイツワールドカップでも1人だけ出場していない。
これだけの能力の高さ、存在感がある選手なのに!!

 
 ガンバ大阪の心配事はただ1つ。
もし、遠藤が完璧に抑えられたら!?
遠藤が試合に出られなければ!?
チームと言うよりも、遠藤個人のサッカーのビジョンに頼っている。
その部分は、否定できないはずです。
彼の代わりは、他の誰であっても不可能でしょう。

 関西の、日本のローカルスターに留まっている遠藤。
彼の能力をもってすれば、世界にも通用するのでは?
是非とも、世界のトップレベルの中でプレーする姿を見てみたい。
彼のビジョンや、テクニックが通用しないならば、他の誰が通用するのか。
クラブワールドカップでの活躍が、今から楽しみですよね。


posted by フットボールコーチ at 17:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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