2008年12月05日

バックパスを無くせば、攻撃的になるのか。

 「日本人は、足元の技術が上達した。」
よく言われる言葉です。

 「ただし、もっとボールを前に運ぶ意識をもつべきだ。」
海外に出た、日本人選手が自分達に足りないものとして、このコメントをしばしば出します。
その真意や、いかに。

  
 さて、ある協会会長が提案しましたよね。
「バックパスは絶対にダメだ。特に若いうちは禁止させたい」
消極的な後ろへのパスは、時間を浪費になる。
さらにパスカットでもされようものなら、一気に失点のピンチに。

 会長曰く、
「いいことはひとつもない」らしいです。
ドイツの育成年代では、バックパスをルールで禁止している。
本当かうそか分からない例まで引っ張り出して、力説しだそうです。


 この案について、どう考えるべきなのか?
ただ否定するだけならば、簡単なのです。
的外れの、フットボール音痴の戯言なのでしょうか・・・。

 まず、私自身は反対です。
指導の現場では、バックパスを奨励しています。
「前が無理なら、横、それでも無理なら後ろも考えよう」
「縦パスにこだわるな!他に選択肢はないの!?」

 ゴール方向へのシビアなパスを狙いたくなるもの。
ましてや、プレッシャーを感じると、どんどん視野が狭くなってくる。
気づいたら、前に、縦に無理やりパスやドリブルで突っ込んで、ボールを失ってしまう。

 攻撃の目標は、ゴールを目指す、シュートを打つこと。
それに近づいていく努力をするのは、当然です。
バックパスを出せるようになるのは、進化の1つともいえるのです。
複数の選択肢を持てているわけですからね。

 
 そもそも、バックパスの定義は、何なのでしょうか。
後ろ方向へのパスは、全てバックパスになるのか?

 FWに、縦パスが入った。
すかさずMFが、サポートにつく。
そこに丁寧にパスを落として、ミドルシュート。
これも後ろ方向へのMFへのパスが含まれています。

 サイドをゴールラインのギリギリまで深く進入した。
パスやドリブルを組み合わせて、素晴らしい崩しです。
そこから、マイナス方向にクロスボール。
トップスピードで走りこんでくる味方が合わせて、ゴール。
これまた、アシストとなるパスは、後ろ方向です。

 これらのプレーは、禁止にはならないはずです。
チャンピオンズリーグでも、ユーロでも、ワールドカップでも。
トップトップのレベルが、得点に結び付けている形です。


 ラグビーは、ボールを自分よりも前に投げることが出来ない。
「スローフォワード」という反則をとられてしまいます。
だから、横に横にボールを展開していくのでしょう。
縦に進むのなら、ドリブル?と、キックに限定されてしまう。


 では、フットサルのようなバックパス禁止でしょうか?
フットサルでは、ゴールキーパーへのバックパスに制限があります。
GKが足で扱おうが、制限は変わりません。
一度、ハーフウェーラインを超える。
もしくは、相手に取られるかしないと再びバックパス出来ないのです。

 これなら、まだ影響は少ないかもしれません。
つまり、会長が求める、積極的な展開の増加にもあまり結びつかない?!

 私は、これすら反対です。
GKを有効に使うことは、ボールを奪われない試合展開の必須条件とも言えるからです。
多くの場合、DFラインの人数の方が、相手FWよりも多いですよね。
4バックに3トップ。
3バックに2トップ。
どんなに攻勢に出るチームでも、恒常的に5トップになることはないでしょう。

 元々、1人、もしくは2人は相手FWよりも多いはず。
さらに、ここにGKを加えることで、数的有利はさらに保証されるのです。
だからこそ、相手のプレッシャーを受けても、ビビらずにパスを動かせれる。

 足という、不自由な場所を使うスポーツ。
トップトップの選手だと言っても、毎回パーフェクトなプレーが出来るわけではないでしょう。
一番いい場所が観えなかった。
思ったとおりのコントロールが出来なかった。
そこで、一回後ろに戻して、攻撃を再構築させる。
DFラインでも足りなければ、GKまでも下げて、やり直す。

 ボールをポゼッションしながら相手を崩していくスタイル。
常に攻撃の主導権を握りながら、確信を持って攻撃していくともいえるスタイル。
誰もが目指したい、理想のスタイルの1つと言えるのではないでしょうか。

 これが出来ないから、守ってカウンター。
奪ったら、相手のDFラインの裏にロングパス。
などと言った、確率の低い攻撃を選択せざるを得ないともいえるのではないでしょうか。

 バルセロナやオランダ代表、ブラジル代表に、アルゼンチン代表。
彼らになりきれないからとも、言い換えれますよね。

 そんな彼らは、GKへのバックパスや中盤でのバックパスを使わないのでしょうか?
「使ってない」ともし本気で言うなら、何も見えていませんよね。
彼らは、普通のチーム以上にバックパスを使います。
統計をとったことはありませんが、実際に観戦した感覚ではそうです。

 不必要な無理をしないのです。
リスクを背負うのは、計算されたリスクのみです。
相手ゴール前なのか、味方のゴールの前なのか。
同じ中盤ゾーンでも、今は?!次は?常に考え続けているでしょう。


 ボールが前に進んだからとは言え、攻撃的だとは言えない。
ボールより後ろに、10人の選手が待機しているチームはどうだろうか?

 また、ボールを後ろに運んでやり直すばかりのチーム。
ポゼッションの意識が強いチームもまた、イコール攻撃的だとは言えないでしょう。
後ろで回すだけではゴールにはつながらない。
後方に人数を割いていては・・・。


 求められているのは、チームとして、個人としてどのように振舞うのか?
攻撃時の姿勢こそが、重要なのではないでしょうか。

 我々に足りないのは、まさにこの部分。
今、行くのか?行かないのか?
仕掛けるのか?仕掛けないのか?
行く、仕掛けるなら、どのようにやりきるのか?!

 もし、会長が育成に対してお達しを出すとするなら、ここではないのか。
シュートを打つ時に打てない。
仕掛ける時に仕掛けれない。
自分の個性や意志を出し切れていない。

 そもそも、今どういうプレーがチームに貢献できるのか?
それすらも判断ついていない。
試合を大局的に観る能力の欠如です。
ここを促すコーチングや教育を求めるのならいざしらず。


 変えるのは、ルールではないでしょう。
もしバックパスを本気で無くすと、どうなるのか?
リスクを排除したいコーチはこう叫ぶでしょう。
「前に大きく蹴り飛ばせ!」
「とりあえず、蹴っとけ!」

 こんな意図の無いキックこそが、排除すべき対象なのに。
もし、百歩譲って、育成世代に対してルール改正をするなら、「キック&ラッシュは禁止」
これのほうが適切だとは思いませんか。


 コーチとしては、落第と言われているみたいで悔しいです。
自分のコーチングで、この問題を解消させたい。






posted by フットボールコーチ at 18:48| Comment(0) | TrackBack(0) | コーチング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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