2015年08月16日

転んだ先のクッション

「コーチ、のどが渇いた。」

「コーチ、ソックスが大きい。」

「コーチ、、、、、、。」








 子供を10人引率し、海外に遠征していました。

子供たちは、全員、とてもいい子でした。

素直で、コーチである私の話を、良く聞いてくれます。

子供ながらに空気を読んで、行動しようとします。

命の危険、盗難の危険など、海外では危険が潜んでいます。

パスポートの扱い、現金の扱い、デジカメにタブレット。

日本と同じ感覚で行動していると、危険を招いてしまう。

冒す必要のないリスクに関しては、我々で最大限に伝え続けました。

日本に帰るまで、大きな問題は起こりませんでした。

いい子で、引率者の話を守ってくれた、子供たちのおかげです。










 一方、苦労した部分もありました。

冒頭に紹介した、「コーチ、、、、。」の部分です。

ほとんどの子供が、コーチの顔色をうかがって行動していました。

そのため、何か些細なことでも報告に来てくれます。

まるで、必要のないことでも報告してくれます。

自分で解決できることもあります。

解決するために、このようにしたい。

そのような発言は皆無でした。

つまり、「コーチ、ソックスが大きい。」で終わりになります。

それを、「コーチ、ソックスが大きいので、小さいサイズはありませんか?」

というようには、話さない?話せない?のです。









 最初、この指示待ちと言える報告を受けた時、少し様子を見てみました。

この子だけかな?他の子、他の現象なら、変わるのかな?

そう思って、他の事例が起こるかを、待っていました。

すると、ほぼ同じ。

指示待ちの報告ばかりを、聞くことになったのです。

報告をすると、こちらの顔をのぞきながら、待っています。

「「コーチ、早く答えをください。」」

「「コーチ、私の問題を解決してくれますよね。」」

言わんばかりの表情に、感じました。

信頼はありがたいのですが、私は疑問を感じました。

慣れない環境、慣れない場所。

コーチや、大人に頼りたい気持ちは、とてもよく分かります。

私としても、さっと答えを出してあげた方が楽です。

問題を解決してあげた方が、スムーズに行動できたと思います。












 ここで、私は我慢しました。

「それは、困ったね。」

「そっか、どうしようか。」

予想外の答えだったのでしょう。

私の返事を聞いて、子供は、その場に固まります。

もう一度、同じ話をする子。

頭をポリポリとかきながら、うつむく子。

それでも、私は待ちました。

すると、「ソックスが大きいから、動きづらいです。小さいのありますか?」

時間はかかりましたが、自分がしたい事を、言葉にして伝えてくれました。

このやり取りを繰り返していくうちに、少しずつ早く伝えてくれるようになりました。

最後には、自分のしたい事を含めて、報告してくれるようになってきました。

小さなことではありますが、自分で問題を見つけ、自分で解決しようとし始めたのです。










 フットボールは、人生や、生活が見えてきます。

その人の日常の姿が、そのまま表れるものだとも言えます。

グラウンドでは、とても頑張っている。

ピッチを離れたら、他人任せ、大人に任せる。

その選手が、ピッチの中では、活躍できる。

普段は問題の解決を他人任せにしている。

ピッチの中では、問題を自分で見つけ、自ら解決している。

どう思いますか?

私は、それは難しいと思います。

ピッチの外、ピッチの周りでも、自ら考えて動く。

問題を自ら解決すべく、考える。

すると、当たり前のように、ピッチの中でも、同じように行動できるでしょう。











 もしかすると、我々、大人が転ばぬ先の杖になってしまっているかもしれない。

子供の困った姿を見ると、解決してあげているのかもしれない。

それに慣れてしまった子供は、自ら問題を解決する力を放棄してしまうかもしれない。

だって、その場に立ち尽くしていれば、大人やコーチがさっと駆け寄り、解決してくれるのですから。

自分で考えるのは、労力がかかりますよね。

自分で考えなくて済むのなら、楽ですから。

でも、コーチも大人も、こう願っているはずです。

「自ら考え、自ら行動する人間に育って欲しい。」












 子供は(もちろん大人も)転んで、痛い思いをする。

すると、覚えていく。

失敗して、悔しい思いや恥ずかしい思いをして、成長していく。

私は、そのように考えています。

転ばぬ先の杖を準備すると、転ばなくなってしまいます。

成長するチャンスを失ってしまうとも言えます。

せめて、転んだ先でケガをさせないように、転んだ先のクッションを準備してあげる。

もちろん、命の危険や、身体の危険は保証してあげる状態を作ってです。










 子供たちの、ピッチ外での良い変化が、日を重ねるごとに見えてきました。

私が、トレーニングの開始時間を伝えます。

すると、自分たちで、集合時間・集合場所を設定し、伝えあいます。

サイズの合わない短パンを渡されるので、自分で短パンを用意する。

自分で問題を解決し始めたのです。

ピッチの中でも、良い変化が見られました。

最初の試合では、得意なプレーも出せない、ただ目の前についていくだけ。

それが、2試合目、3試合目と、どんどん積極的なプレーが見られたのです。

自ら動き、自分のプレーを出そうと奮闘する姿!

成功も失敗もありますが、大きな大きな変化を見せてくれたのです。










 転ばぬ先の杖から、転んだ先のクッションに。

場合によっては、クッションすら準備しなくてもいい局面もあるでしょう。

選手が成長するために、何が必要なのか?

我々大人には、常に考えることが求められている。
posted by プロコーチ at 10:26| Comment(0) | TrackBack(0) | コーチング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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