負けたのに、「よくやった!!」
「感動をありがとう!」
なんて言葉は、必要ないと思っています。
観客はお金を払ってまで、スタンドに足を運んだり、衛星放送を視聴しています。
応援するチームに、勝ってほしいに決まってます。
結果も残せずに、敗退して帰ってきた選手に、「よく頑張ったね。」
こんな言葉を掛けているうちは、そのチームや選手のレベルは上がらないでしょう。
厳しいかもしれませんが、きっちりと批判すること。
責任の所在を明らかにすること。
熱い戦いに拍手するのは、試合が終わったその時だけで十分。
「試合終了の笛は、次の試合の準備を始める合図」ですよ。
U−20ワールドカップ。
期待されていた、日本代表がベスト16で敗退しました。
ヨーロッパの強豪国チェコ代表に、延長戦の末、PK戦での敗退。
2点先制しての敗退だけに悔やまれますよね。
やはりここでも、試合を終わらせることが出来なかった。
勝ってる試合をいかに無難に終わらせるか?
日本のレベルが上がってきたからこその悩みなのですが。
しばらくこの課題は、日本チームにはついて回りそうです。
今回のU−20日本代表は、大会に大きな足跡を残しました。
彼らの求めていたスタイルを表現することが出来た、大きな成果。
今、若年層から、日本サッカー界は同じ方向に向かおうとしています。
このコラムでも何度も取り上げた、ムービングフットボール。
パスをどんどん少ないタッチで、1タッチ2タッチでつないで行く。
そのパスも、待ち構えている足元には出さない。
フリーランニング(素走りをして)スペースに入り込んで、ボールを受け、パス。
さらにパス&ムーブ。
これの繰り返しによって、常に主導権を握って試合を戦って行く。
ムービングフットボールを構成するキーファクターは、分かりやすく言うとこういったことです。
もっと要素はたくさんあるのですが、とりあえず。
日本人という民族の特徴を考えて行き着いたこのスタイル。
背が低い。
体つきが貧弱。
一方、機敏な動きが得意。
応用が利かず、臨機応変には動けない。
そして、天才が生まれにくい「出る杭は打たれる」環境。
ただ、勤勉で自己犠牲をいとわない精神。
それらを考えて、行き着いたスタイルなのでしょう。
ボールがポンポンと早く軽快なリズムで動いて行く。
気づいたら、フリーになった選手が活躍する。
中盤や前線の選手は、守備をサボる。
パスをもらう、スペースを作るといった、ボールが無いところでの仕事が苦手。
それが今までの通説です。
ところが、このU−20代表チームは違いました。
司令塔の役割をする選手や、パスを配給する選手たちが積極的に仕事を見つけていく。
本当に足が止まらない。
グループリーグからの4試合、このスタイルで貫き通しました。
かなうことなら、この年代のトップクラスであるスペイン・アルゼンチンとの試合を見たかった!!
もちろん、上手くいかない時間帯も多くありました。
それでも、俺たちの戦い方はこれなんだ!!
テレビ越しでも、ピッチからの想いが伝わってきました。
テレビの実況では、地元で日本チームが人気者になっていることを伝えていました。
4試合同じ会場でしていたのですが、どんどんファンが増えていったそうです。
破れたチェコ戦などは、チケットが売り切れになるほどの人気。
日本の戦いっぷりに、なにか共感を得てくれたのでしょう。
まさに、お金の取れる試合をしていたということですよね。
彼らは一つの大きな役割を果たしました。
ワールドカップという大きな見本市で、日本フットボールのスタイルを世界に知らしめました。
これは、2006年のドイツではなし得なかった役割です。
もちろん、もっと勝利を目指してほしい。
出来ることなら、タイトルを獲得してほしい。
2050年と言わず、もっと早くワールドカップを掲げてほしい。
それは、現実的に難しいでしょう。
まず、日本が目指すのは、世界への発信。
日本代表は、こういうスタイルで試合を戦う。
技術を中心に、ボールを大事にするスタイル。
ここまでは、認知されてきているようです。
特にアジア諸国での日本代表は、人気度が高いそうです。
これをもっともっと追求してほしい。
そのムービングフットボールのスタイルが現在最も表現できている日本代表はまだ他にあります。
それは、U−17日本代表ではないでしょうか。
8月には、彼らの出場するU−17ワールドカップが開幕されます。
そこでも、日本のスタイルを存分にアピールしてもらいたい。
そんな彼らが、フル代表で活躍する数年後。
その時には、日本のスタイルが日本中に浸透しているのでしょう。
いきなり、大人になって求められても上手くはいかないですよね。
子供のころから身体に染み付いてる方が、楽ですよ。
それを技術と戦術眼でカバーできるのか?
オシム監督の率いるフル代表、まもなくアジアカップ2戦目です。