2019年01月18日

ボックス内の仕事人

 20年も日本のフットボールシーンで活躍した選手が、引退しました。

中澤佑二、楢崎正剛。

代表でもクラブでも、活躍し、周りにいい影響を与え続けたと思います。

彼らの活躍そのものが、日本フットボール界、躍進の歴史とも言えますね。










 2人が引退するのは、年齢、コンディションもあるでしょう。

でも、今すぐ引退しなければならない状態ではなかったようですね。

クラブから、来年の契約、他クラブからの打診もあったと、記事にありました。

それだけ、彼らのプレーや、存在意義は認められているのでしょう。

まだまだ、活躍する姿を観たかったのですが、残念です。










 引退理由の一つが、似ていました。

所属クラブでの活躍の場を失ってしまったこと。

今まで、試合に出続けていたのに、突然、ベンチ、ベンチ外を命じられた。

それは、フットボールそのものの進化が、原因でしょう。

「いいチームは、一番後ろ(GKやDF)から攻撃を始め、一番前(FW)から守備を始める。」

前線の選手は、点を奪うだけ。

後ろの選手は、ゴールを守り、ボールを奪うだけ。

それでは、昔のフットボールスタイルだよ。

チーム全員が、たくさんのタスクを持ち、攻撃も守備も、免除される選手はいない。

それが、近代フットボールの流れであることは、間違いありません。












 
 1990年前後に、バルセロナの監督を務めた、ヨハンクライフ。

スペインリーグを4連覇するなど、ドリームチームと呼ばれたチームを作り上げました。

今につながる、様々な革新をもたらしたことでも知られています。

グアルディオラがチームの中心で、ボールをさばき続けていた。

ボールを受けては出して、それを繰り返す。

全く目立たないので、ロマーリオやクーマン、ラウドルップにストイチコフにサリナスに目が行きます。

でも、ポゼッションなる言葉すら、ほぼ使われなかった、あの時代。

今でいう、ブスケッツや、アルトゥールの仕事の重要性を、見出していた。

さらに、GK。

代表のGKがいたのですが、違う選手を用いようとしていました。

ボールを足で受けて、配球する能力に長けた選手を試していたのです。

当時は、バックパスを、GKが手で拾い上げることすら許されていた時代。

それなのに、一番後ろに、パスの配球役を置こうとしていたのが、クライフ。

この試みは、あまりうまく行かなかったのですが、今思えば、先を見る目はまさに慧眼ですね。

オシム監督も、同じことを求めていましたね。

その時も、まだまだポピュラーではなかったと、覚えています。












 2019年の今では、GKが足でプレーするのは当然です。

ノイアー、テアシュテーゲン、クルトワ、日本なら西川。

足でのプレーで、チームに貢献するGK像が、定着してきましたね。

バックパスは、当然、手を使えない。

でも、後ろでプラス一枚を作るために、GKがビルドアップに積極的に関わる。

私がブラジルリーグの試合を観戦した際も、ロシアワールドカップを観戦した際も同じでした。

試合前のアップで、足を使うトレーニングの比重が高まっています。

足のプレーから始めるチームが、半数を超えている印象です。

いつもなら、体をほぐして、準備が出来たらキャッチボールでした。

今は、ボールを扱い始めるならば、まずは足から。

グラウンダーだけでなく、浮き球の処理、1タッチ、2タッチ。

正面、角度を変えて、さらには近い距離に遠い距離。

とにかく、足でのプレーをたくさん求められるのが、現代のGK像と言えますね。





 









 それは、センターバックも同じでしょう。

ボックス内で、ヘディングで弾き返す。

1対1で、相手を制圧する。

DFラインを統率、カバーリングもこなす。

これだけでは、足りないのが、現代のCB像でもありますね。

攻撃においては、ビルドアップの中核としてのプレーを求める。

バックバスを、ボカーンと蹴り返す。

とりあえず、長いボールを、FW目掛けて蹴り入れる。

このプレーだけでは、当然物足りない。

高い戦術眼と、左右の足での技術。

まるで、中盤の選手のような、組み立ての能力が求められるようになりました。















 中澤と楢崎。

彼らは、ボックス内の仕事人ともいえる存在ではないでしょうか。

シュートを止める、はじく。

1対1で相手をシャットアウトする。

ロングボールやクロスに対して、制空権を制圧する。

体を泥まみれにしても、味方のために体を張り続ける。

そうして、チームに勝利やタイトルをもたらしてきたのが、この二人です。

ところが、この能力は、必要のない過去のものとなった?

それは、違うと思います。

ボックスの中で、相手に勝つ!

ボックスの中で、違いを出す!

これは、ずっと求められる能力です。

我々のプレーする、このフットボール。

その勝利の条件が、相手より得点を奪い、相手よりも少ない失点であること。

これが変わらない限り、2人の有した能力は、求められ続けるものだと、私は考えます。

それをベースとして、組み立てに必要な能力を求める。

それが、未来のCB像であり、GK像になるのでしょう。















 ボックス内の仕事人は、今後も求められる。

素晴らしいお手本のお二人、長年ありがとうございました。











 
posted by プロコーチ at 18:19| Comment(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月11日

なんとなくミシャが

 ロシアワールドカップも、準決勝に入ります。

この幸せなお祭りも、残り4試合。

もっともっと、観ていたいです。

これだけ連日、フットボールの試合を放映している。

そして、テレビや新聞でたっぷりと取り上げている。

ハイライト番組に、ニュースでの特集など、子供や一般な人の目に触れる。

大きなことです。

ここまでとは言わなくても、日常のリーグ戦も、もっと目に触れるようになれば。

日本のフットボールに対する価値や意識も変わるでしょうね。











 残った4チームで最も力があるのは、フランスだと考えています。

ヨリス、バラン、カンテ、グリーズマンにジルー。

センターラインが、バシッと決まっている。

これが大きいです。

その軸があるから、ポグバ、エムバペが活きてくる。

センターラインが崩れたチームは、敗退しています。

いくら世界トップトップのタレントを擁していてもです。

アルゼンチン、ブラジル、ポルトガル。

メッシ、ネイマール、ロナウドに頼って試合を進めるだけでは勝てない。

フランスは、センターラインが背骨のように、堅い。

エムバペが、今大会、大ブレイクしたのは、チーム状況の良さに助けられています。

すごい力も、チームがあってこそ。

個人の組織のバランスを高い位置で保っているのが、フランス。

優勝に一番近いチームなのでしょうね。












 でも、私が気になるのは、イングランドです。

これが、攻撃時の基本的な配置です。

* * * * * *


     *


 *   *   *

     *


モスクワのスタジアムで、イングランドの試合を観ました。

興味深い戦術を採用していました。

日本の皆さんには、こう言えば伝わると思います。

「ミシャ、ペトロビッチ監督の戦い方に似ているよ。」

広島、浦和、そして札幌と結果を出し続けている、ミシャ。

オシムさんの元アシスタントコーチであることも、知られています。

彼は、守備時は5バック(3センターバックと両サイド)プラス、中盤4枚の9枚でブロックを形成。

攻撃時は、ボランチが1人最終ラインに落ちて、DFラインを4枚に。

中盤は1枚だけで、前線に5枚の選手を並べる。

こうやって、攻守でシステムを変えるように見えるので、可変式のシステムと呼ばれていますよね。












 イングランド、ちなみに登録上は、GK1−DF3−MF5−FW2。

最終ラインにセンターバックが3枚いるのは同じです。

が似ているのは、この可変式システムの部分ではありません。

枚数の問題でもありません。



似ているのは、前後をあえて分断させているところです。

GKのピックフォードと3枚のセンターバックで最終ラインを形成。

センターバックも大きく開いて、ビルドアップに積極的に関わります。

中盤は、ヘンダーソン一人だけ。

残る6枚は最前線に入ります。
(FW2、中央のMF2、サイドのMF2)

これは、上から観ると、本当によく分かります。

こんなに中盤の中央に人を配していないチームは、珍しいです。

日本なら最低でも2枚、3枚4枚と中盤の中央に、人が入ってきますよね。











 そして、イングランドの対戦チームは、毎回混乱しています。

最前線の選手をフリーにすることは出来ない。

ゾーンで守備システムを敷いて、試合をしていたとしても。

自陣ゴール前近くの中央で、放置しておくわけにはいかない。

ゾーンを崩して、最終ラインに人がたくさんいる状態になってしまう。

イングランドに合わせてしまっているのです。

後ろに人が多いということは、中盤に人がいないということ。

イングランドは、わざと中盤に人がいないように、選手を動かしている。











 この状況を作っておいて、前線の選手が中盤に下がって、ボールを受ける。

ケインが受けた時は、周りが信頼して動いているのも、良く伝わりました。

中盤で比較的楽に、ボールを受けて、展開している。

さらには、最終ラインの3枚が積極的にボールを前に持ち出す。

我慢できない相手選手が、プレッシャーに来ると、バシッと縦パス。

どこから組み立てるにしても、やりたいようにやっている。

イングランドが常に、先手先手で、ゲームを運んでいました。










 
 中盤を1人で任されているヘンダーソン。

カンテやカゼミロのようにボールを刈り取り続けるわけではない。

モドリッチのように、組み立ての中心に君臨しているわけでもない。

黙々と、バランスを取り続け、穴を埋め続けている。

最高の労働者と言えますね。

まさにイングランド躍進の陰の立役者と言えるでしょう。












 このイングランドのスタイルが、どうなるのか?

あえて前後分断させた、ミシャと似ています。

優勝できるかどうかは別にして、気になるチームです。


posted by プロコーチ at 00:35| Comment(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月27日

戦術的記憶

 賢い選手は、チームを助けてくれるし、相手を窮地に追いやることが出来る。

選手を賢くする。

そのためには、このサイクルをどんどん回していけるようにしてあげること。

見て、判断して、決断して、実行(プレー)。










 一方、思い付きでプレーしている選手。

行き当たりばったりを繰り返す選手。

成功もあれば、失敗もあります。

コーチの側からすれば、困ってしまいます。

相手DFがどうなっているか?

スペースは?

味方は?

ボールは?

ゴールは、どこ?

見ているのか、思い込みで決断を下してしまっているのか。











 メモリア タクティカ。

戦術的記憶と呼ばれる、スペイン語です。

そして、戦術コンセプト。

このような局面では、このような解決法がある。

マークを外すアクション、警戒、前進、ポゼッション、継続的サポート、スペースの管理など。

一つ一つのプレーについて、明確な論理がある。

行動が全て説明できる状態とも言えます。

長年の経験や、勘によるものではありません。

コンセプトを知り、試合の状況を記憶していく。

この記憶がたくさん学習していき、選手の頭の中に蓄積させる。

そして、トレーニング。

記憶を自由に引き出し、使えるようにしていくために。

















 フットサル。

昔から、様々なパターンを、頭に覚えこませ、体で表現できるようにしています。

一人のアクション、二人での動き、チーム全体での動き。

まさに、戦術的記憶を大切にしてきています。

弾まない、小さいボールを使う競技という特性を上手く活かしている。

バスケットボールや、ハンドボールにより近いスポーツだと思います。

11人制のサッカーが、ハンドボールやバスケットボールに近づいてきていると言われています。

つまり、ある意味では、一歩先を進んでいるのがフットサルと言えるのかもしれません。













 先日、サッカーの試合をしてきました。

私が毎週のようにお世話になっている、草サッカーです。

草サッカーとは言え、レベルの高い選手が、ゴロゴロしています。

元プロや、クラブユース出身、強豪高校サッカー部出身ななど。

そこに、フットサルの現役選手が参加しました。

かなりの強豪チームのレギュラーの2人。

しかも1人は、現日本代表選手。

若くて、キレのある、しかも賢い選手。













 バイタルエリアで、その1人が前を向いてボールを持ちました。

攻撃選手は3人。

ボールを持った1人に、左前方に1人、右前方に1人。

ゴールを守る選手は、中央に3人。

同数です。

ボールを持った選手に、1人、プレッシャーをかけに来ました。

残る守備の選手は、ボールホルダーをマークする選手をカバーしながら、中央に絞りました。

そこで、面白いフリーランニングを、左前方の選手が仕掛けたのです。

中央に斜めに走りこもうとします、スルーパスをもらうかのように。

このフリーランニングで、DFのブロックは、さらに中央を固めようと絞りを強くしました。

その瞬間に、斜め外に向かって、高速でバックステップを踏みます。

一気に中央のブロックから離れて、斜め前のスペース目掛けて走り出しました。

ボールホルダーは、その瞬間を待ち構えていたかのように、パス。

フリーで受けた選手は、簡単にゴールを決めていました。













 このように書くと長くなるのですが、簡単です。

ジャゴナウ(ポルトガル語でダイアゴナル)を仕掛けた。

相手DFの動き、ボールホルダーへのプレッシャー、ゴールまでのスペース。

状況を見て、ジャゴナウが適切である。

戦術的記憶から引っ張り出したのです。

あまりに見事なジャゴナウだったので、私は2人駆け寄りました。

ゴールを称え、すぐに確認しました。

すると、出し手も受け手も、同じ絵を描いていたことが分かりました。














 戦術的記憶。

選手を賢くする鍵になっています。

フットサルでも、サッカーでもいいのですが、知ることは大切です。

そしてその知識を、適切に引っ張り出し、実行することが出来る。

賢く、試合でチームのためになる選手になり得るでしょうね。
posted by プロコーチ at 03:02| Comment(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月16日

駆け引きで上回るための能力とは

 前人未踏の記録を成し遂げた二人に、賞が贈られました。

将棋の羽生善治竜王と、囲碁の井山裕太九段が国民栄誉賞を受賞されましたね。

お二人とも、長い歴史のある世界でも、過去に比する人物はいないのではないでしょうか。

囲碁も、将棋も、人間同士が向き合って戦います。

これは、我々のフットボールも同じです。

どのような一手を指すのか?

彼らのような神の領域までたどり着いたような名人だと、何手先まで読んでいるのでしょうか。

数100手先とも、1000手先とも言われます。








 まず、基本となるのが「3手の読み」です。

常に目先を読む「三手の読み」(こうやる、こう来る、そこでこう指す)

これは元々、原田泰夫元将棋連盟会長が提唱されたようです。

羽生竜王は、次のように著書で紹介しています。

「読みの基本となっているのは“三手の読み”という考え方です。
 一手目、自分にとって最善のベストの選択を探します。
 二手目、相手にとって最善のベストの選択を探します。
 つまり、自分にとってもっとも困る一手・選択を考えることです。
 それから、三手目に自分が何をするか事前に決めておくわけです。
             「40歳からの適応力」(羽生善治)







 試合の流れの全てを読むことは、不可能に近いです。

どれだけ準備をして、どれだけトレーニングしても。

そして、どんなに能力が高く、戦え走れる選手を揃えたとしても。

最後にボールがどちらに転がるかは、神様にも分かりません。

それならば、まず、3手の読みを考えてはどうでしょうか。

自分のアクションに対して、相手がどのような反応を示すのか。

そして、それに対する手を用意しておく。

自分たちがしたいプレーだけを続けようとするのではなく。









 例えば、左サイドの高い位置でボールを受ける。

相対する右サイドバックは、数M先で、待ち構えている。

ここで、自分の一手。

ボールをわざと、相手側に少しだけ動かし、さらしてみる。

相手はどのような手を返してくるのか。

ボールを奪うために、グッと食いついてくる。

そうしたら、自分はこう返す。

その瞬間スピードアップ。

ダブルタッチか、アウトで持ち出し抜き去る。










 ボールを受ける瞬間、どのようなファーストタッチをするのか?

すでにここから、自分がこうする。

1手目が始まっている。

さらにその前からも。

自分がボールを受ける前に、マークを外すアクションを入れて、相手を動かす。

相手の背後に走り出すアクションを入れることで、相手にバックステップさせる。

ボールを受ける前から、すでに2手が終わっている。

このような駆け引きは、攻撃でも守備でもありますね。

3手先を読んでも、その通りに行かないことも多々あるでしょうね。

繰り返していくことで、そして修正していくことで、その能力が高まるはずです。










 ボールコントロールを上達するために、たくさんボールを触ることは大切。

壁に向かって、止める・蹴るを繰り返す、パス&コントロールを繰り返すことも大切。

でも、このような読み、考え方を持ってているかどうか。

自分がしたいプレーをしているだけではないのか?

せっかく身に付けたボールを扱う力が、本当のテクニックとして活きているか。

よく、相手と駆け引き出来る選手、という表現をします。

「3手先の読み」を持ってプレーできているかどうか。

この能力を高めることが、駆け引きで相手を上回る、一つのカギになるのではないでしょうか。
posted by プロコーチ at 23:23| Comment(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月01日

レフェリーからの質問

 今年も、社会人リーグを戦っています。

4試合を戦い、2勝2敗。

この試合で、今年の流れが決まる?!

大事な試合でした。

人数の関係もあり、ベンチスタート。

ベンチに座っている分、対戦相手をじっくり分析。

普段出ている試合に出ないのは、じれったいものですね。









対戦相手は、とにかく守備から入るチームでした。

ハーフウェーラインを挟んで、25Mくらいにブロックを形成。

コンパクトな組織を維持するための努力を、続けていました。

DFラインはラインコントロールをコマめに続けている。

こちらが中盤を作ろうとすると、複数で囲い込み、自由を奪う。

FWに縦パスを入れても、プレスバックで、挟んでくる。

サイドにボールを回しても、スライドで対応し、スペースを与えてくれない。

あまり攻めてこないので、失点しそうにはないのですが、得点の匂いもありません。


そして、相手のDFラインにある特徴がありました。

サイドバックは、サイドを上下する。

あまり、中央には絞ってこない。

センターバックの二人は、機動力があり、カバーリングに力を発揮する。









 私は、ある作戦を立てました。

相手のサイドバックの裏を狙う。

最終ラインからでも、長いボールをサイドに入れていく。

サイドバックの裏のスペースを突ければ、相手のセンターバックがカバーリングにくる。

すると、DFラインは下がっていく。

相手を下げさせ、間延びさせる。

しかも、サイドバックは、そのまま下がるだけなので、中央のスペースがポッカリ。

間延びさせておいて、攻め込んで行く。

さらに、ドリブルを出来る選手をサイドに置いて、サイドバックを足止めする。










 狙い通り、相手はコンパクトな状態を保持することができなくなりました。

チャンスをたくさん作り、2得点。

試合が狙った通りに動き出しました。

もっと点を取れたと思いますが、2点どまり。

残念ながら、こちらも2失点。

オフサイド?を認められず1失点、神様コースのロングシュートで1失点。

2対2で、タイムアップの笛です。

引き分けで勝ち点1を獲得しましたが、勝ち点2を失った気持ちです。

しかも、PKを私が外してしまって、、、。








 試合終了後、レフェリーが私の方に歩み寄ってきました。

ニコニコと笑いながら、話しかけて来たのです。

顔見知りとは言え、試合直後に話にわざわざ来るのは、珍しい。

「後半、何をしたの?試合の展開が全く変わったように感じている。」

「あまりに展開が変わったから、レフェリングが難しかったよ。」

私は、正直に、後半の作戦を伝えました。

相手のコンパクトな状態を壊すために、サイドバックの裏を狙ったこと。

サイドでドリブルを使わせたこと。

意図的に、コンパクトな状況を崩したかったことを伝えたのです。

「前半0対0だったから、そのまま行くかと思っていたけど、そんな考え方もあるんだね。」

「いやー、勉強になったよ。」

だそうです。

彼は2級のレフェリーで、プロの2軍の試合などの高いレベルの試合も含め、様々な試合を吹いています。

でも、ここまで、前後半で試合の意図を変えてくることは珍しかったようです。








レフェリーが戸惑うくらいですから、対戦相手も困っていました。

ちなみに、自チームにも、いた?かもしれません。

試合の中で、チーム全体が駆け引きをしながら、試合を進めていく。

自分たちがやりたいことをやり続けるだけでなく。

ボールを扱うこと、局面で相手とやり合うことも、もちろん楽しいです。

でも、こういった部分も、フットボールの楽しみの一つですよね。










 これで、2勝2敗1分け。

完全に、中位ですね。

次節こそ!勝利を。
posted by プロコーチ at 10:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月05日

受け入れられますか?

 世界でも最注目の試合の一つ。

リーガエスパニョーラ、レアルマドリード対バルセロナ。

このクラシコで、劇的なゴールが決まりました。

このゴールは、とても素晴らしいもので、心技体のすべてが揃ったものでした。

特に、90分を過ぎてからの時間に、あれだけのスプリントを見せたバルサ。

ゴール前に7人もの選手が、5〜80Mを駆け抜けて、殺到していました。

一方のレアルは、5人しか戻れていない。

メッシの決定力がすごい!の一言では片づけられないゴールですね。







 試合後に、クリスチャーノロナウドのつぶやきが、少し話題になりました。

以下、引用です。

後半アディショナルタイムの92分、バルセロナのDFセルジ・ロベルトは前方の広大なスペースを見るなり中央突破を試みた。これが最終的には決勝点の起点となるプレーとなった。

 ファウルもオフサイドもなく、文句のつけようのない崩しからの得点であったが、これに不服だったC・ロナウドはやりきれない態度で「ファウルしろよ」とつぶやいた。スタンドで観戦していたマドリーファンの人たちも同じように不満を露にし、最終的にはS・ロベルトと対峙したDFマルセロがファウルをしてでも止めなかったことを非難されたようだ。

 一方マルセロ自身も「S・ロベルトを止められなかった責任は僕にある」とコメントした後、「もしあそこでファウルをしていたらゴールは決まっていなかっただろうと」と振り返り、失点を避けるための最後の手段としてファウルすべきだったことを認めた。

引用…フットボールチャンネル







 戦術的なファールをしろ、ということですね。。

プロフェッショナルファールなどと呼ぶこともあります。

ファールと分かってて、あえてファールをする。

チームに利益をもたらすために、自分が犠牲になる。

野球の犠牲バントと違うのは、相手に危害を加えてしまうこと。

野球は、アウトカウントが一つ増えるだけですから、違いますね。










 1990年のワールドカップ、イタリア大会。

決勝トーナメント1回戦で、ブラジル対アルゼンチンの好カードがありました。

前回優勝のマラドーナ率いるアルゼンチン。

優勝から遠ざかり、王国の復権を目指すブラジル。

熱い戦いが予想されますよね。

ただ、ブラジルが一方的に攻め込み続けます。

ところが、攻めても攻めても、ゴールが遠い。

DF,GKにぶつける、ポスト、バーに嫌われる。

すると、マラドーナが輝きを見せます。

ハーフウェーライン辺りから、ドリブルで、仕掛けていきます。

スルスルと、ゴールに迫って行きました。

DFを4人全員引き付けた瞬間、FWのカニーヒアにラストパス。

確か、右足での股抜きパス。

先制点がアルゼンチンに生まれました。



 事件は、その後に生まれました。

どうしても1点を返したいブラジル。

ところが、裏に抜け出され、ピンチに。

ブラジルのセンターバックのリカルド・ゴメス。

キャプテンの彼が、真後ろから、あからさまに、相手の足を引っかけました。

アッ!やってしまった!と思いました。

審判が寄ってきてレッドカードを高々と提示しました。

リカルド・ゴメスは、抗議することなく、受け入れました。

そして、サッとピッチの外に向かって歩き出しました。

俺は、退場になると分かっていて、反則をしたのだ。

PKにもならないようにしたので、失点はしないだろう。

0対1なら、まだブラジルは死なない。

結果、試合は、0対1で終わりました。

27年も前の出来事ですが、未だに、忘れられません。

あの背中で語る、後ろ姿。

自分が初めて認識した、プロフェッショナルファールでした。











 フェアプレーの精神とは真逆にあります。

戦術的に反則をすること。

自分の意志でプロフェッショナルファールをすること。

どうでしょうか?

ワールドカップでの勝利をつかむため。

永遠のライバルを倒すため。

受け入れることは出来ますか?

日本では、あまり堂々とは語られないテーマですよね。

もっと話し合うことが、日本のフットボールの理解を深めるキッカケになるかもしれません。

それくらい、大きなテーマだと思います。
posted by プロコーチ at 01:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月04日

サイドバックのエラー(図示)

エラーその1

センターバックの前に、出て行ってしまう。


 1   2    3    4    
     ★
     ・

 ○             ●
     ●    ●     


白い丸が、左サイドバック。

星印の選手がボールを受ける。

本来、2の位置は左センターバックが当たるべき位置。

それなのに、左サイドバックが勢いのままに当たりにいってしまう。

左サイドバックの担当は、1のはずです。









エラーその2

自分のラインを無視して、一つ高い位置に出ていく


      ●
★       ★
〇       


     ★
     ・
     ●
               
  1     ●   ●     


本来左サイドバックは、センターバックとお互いカバーしあえるポジショニングを取るべき。

それなのに、勝手に一つ前に行ってしまう。

自分のサイドのマークに固執し過ぎているのか。

ゾーンDFの意識が弱いのか。

本来は、1の位置で、センターバックのカバーをしてほしい。

抜かれてからカバーリングでなく、予め、カバーリングできるポジションに入ってあげる。

間違っても、自分のマークしたい選手のそばにいればOKではないはず。







 分かりにくいかもしれませんが、図にしてみました。

前回の文章と合わせて、確認してみてください。

http://futebol.seesaa.net/article/448706460.html

理解が深まるのではないでしょうか?
posted by プロコーチ at 19:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月15日

マスチェラーノのスプリント

 バルサの試合を観ていて、驚いたこと。

それは、マスチェラーノの、あるタイミングでのスプリントです。





 一人一人が、パスを受けるために動く。

マークを外し、サポートし、スペースを管理する。

それは、当然。






 相手CBが低い位置でボールを保持し、FWに向けてロングフィード。

その瞬間は、もちろん、守備をするために、前後左右の距離を圧縮している。

ボールを奪うために、コンパクトな陣形を保っていました。





 FWがこぼしたボールを回収したマスチェラーノ。

体勢が悪かったので、GKにバックパス。

するやいなや、ペナルティエリアの角付近に向けて、スプリント。

30M以上はあったはずです。

猛然と、本気のダッシュ。






 ビルドアップをするために、サポート。

それは、当たり前。

GKには、全くプレッシャーはかかっていません。

落ち着いてボールをコントロール。

その時には、マスチェラーノは、ペナルティエリアの角に到着している。

前を向いて、良い体の向きで、ボールを受ける準備が完了しているのです。









 もちろん、その後は、プレーを成功させました。

GKからのパスを足元で受け、前方にパス。

いつものように、ビルドアップを終えました。








 なかなか、トップレベルの他のクラブでも、この動きは目に出来ません。

当たり前のように、ここでスプリントできるのが、バルサの強さですね。

そして、マスチェラーノが重用されている理由の一つでしょう。
posted by プロコーチ at 18:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月06日

出し手と受け手に加えたい

 この年末、正月で、育成年代の試合、トレーニングを観ました。

U14ナショナルトレセン女子、全国少年サッカー大会、高校選手権、高校選手権女子。

昔に比べると、本当にレベルが上がりましたね。

適当にボールを蹴飛ばして、運を天に任せるプレーが減少しています。

観戦していて、純粋に楽しめる試合が増えました。







 その中で、気になる点がいくつかあります。

・ボールを蹴る力が落ちている。

グラウンダーのパススピードも弱い。

ミドルシュートの本数が少なく、精度も低い。

ボールを蹴る音そのものが、悪い。

・ヘディング

ボールの落下点に入れていないわけではない。

トレーニングはしていると思います。

ボールをバシッとたたけない。

競り合いながらヘディングは、もっと落ちてしまう。








 一番気になったのは、オフザボールの関わりです。

ボールホルダーがボールを持って、引き付けてパス。

もしくは、出し手と受け手との関係で、パス。

そして、それを繰り返すのみ。

パスはつながっているように見えます。

ただし、守備組織を固められると、途端にパスがつながらず、崩せない。

無理にボールを運んで、守備ブロックに引っかかる。








 3人目、4人目の関わりが弱い。

傍観者になっているのではないか?

ボールの動きに合わせて動いているように見えているけど、ただ動いているだけ。

ボールを、このようにボールホルダーが持っている。

あそこに(自分ではない違う場所に)ボールが出そうだ。

だから、次の場所に向けて、移動しよう。

この頭を持ちながら、プレーを連続させたい。






 ボールを受ける選手も足りていない。

次に、ここにプレーするために、ボールを受けているかどうか?

A → ? →C

AとCとをつなぐために、自分がボールを受けに行く。

だから、Bに入る。

何のためにボールを受けるのか?

これも、3人目の動きとして大切なポイント。








 ボールを扱う技術は、高い。

だからこそ、この頭の中身を磨いていきたい。




posted by プロコーチ at 17:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月24日

試してみました。

 何度もお伝えしている、ユーロ2016。

今回の大会の特徴として、リアクション型チームの台頭が挙げられます。

優勝したポルトガルを始め、ウェールズ、アイスランドの躍進、イタリアの意地。

これら全て、リアクション型。

堅い守備から、カウンターアタックを武器としたチーム。

元々、このような戦いをしたいわけではないのかもしれない。

自分たちのチーム力と、対戦相手とのチーム力とを比べる。

結論が導き出されたのでしょう。

「自分たちがボールを持ちながら、試合を進めていくことは出来ない。」









 そのように守備を固めるために、どのような方法を選ぶのか?

モウリーニョ監督がインテルでチャンピオンズリーグを掴んだ、あの方法。

ゴール前に2台バスを停めた!と例えられました。

低い位置にフラットなDFラインを、4人で形成。

その前に、同じく4人でMFラインを引く。

8人で、ゴール前のスペースを圧縮させ、相手の侵入を許さない。

その系譜は、アイスランドや、アルバニアに受け継がれています。









 今回特徴的だったのは、ウェールズやイタリアに見られた方法です。

3人のセンターバックで、中央を固める。

さらに、両サイドのウイングバックを最終ラインに落として、5バックに。

その5人の前に、中盤のセンターの選手が門番のように待ち構える。

7人、8人で低い位置にブロックを形成します。

攻撃は、ある程度割り切って、守備を優先しています。

中央も、サイドも、バイタルエリアも、スペースを先に埋めてしまう。

さらには、前線の3人も、最終ライン近くまで守備に戻ることをいとわない。

相手のサイドバックがオーバーラップを仕掛けてきた時などは、躊躇なく後ろまで下がります。

ここまで、スペースを埋められて、人数を掛けられると、簡単には崩せませんよね。

そしてボールを奪ったら、前線の3人を起点に、カウンターアタック!

カウンターアタックがはまらなくても、何とかロースコアの展開に持ち込み、チャンスをうかがうのです。











 先日、帰国後すぐに、社会人リーグの公式戦がありました。

対戦相手は、リーグの強豪として名高い、何度も1部で優勝を重ねているチームです。

私は、仲間たちに、3バックの導入を提案しました。

「ボールを持てるチーム、パスをつないでくるチームには有効だ!」

仲間たちは、突然の提案でしたが、納得し、取り組んでくれました。

15年以上、4バックで戦っている我々です。

さて、どうなるのでしょうか?

学生時代には3バック全盛時代でしたので、自分自身馴染みありました。

長所も、短所も、身に染みてわかっています。

そして、何より、3バックの成功例を見てきたばかりですので、自信はありました。








 3バックの欠点と言われるのは、3センターバックの両脇のスペース。

ここをどのように、管理するのか?

そして、ウイングバックの選手に、どの高さでプレーさせるのか?

この2つが、試合を進めていく上での、大きなポイント。

・ビルドアップの能力が高いかどうか。

・ウイングバックの体力はどこまであるのか。

この条件を当てはめていくと、ウイングバックの高さが調節できます。

我々が選んだのは、こうです。

ボールサイドのウイングバックは、相手のサイドハーフにプレッシャーをかける。

逆サイドのウイングバックは、ストッパーの位置までは下がらない。

出来るだけ5バックにならずに、3バックで対応する。

では、3バックの両脇のスペースは、誰が管理するのか?

ボールサイドは、スイーパーに入る選手(私)が、全部カバーに行く。

ウイングバックの背後も、ストッパーの背後も、全部スイーパーがカバーします。

逆サイドのスペースは、ウイングバックが対応。

でも、そこは、ボールが入って、初めて落ちるように。








 対戦相手は、本当に強かったです。

ボールは動かせる。

一人一人が、判断しながら、ポジションを取りながら、攻撃を進めていく。

中央も、サイドも、広く使いながら、丁寧に組み立ててきます。

こちらの薄い場所を見つけ出し、フリーランニング、そしてパス。

唯一、ドリブルで仕掛けてくる選手が少なかったのが、欠点でしょうか。

チャンピオンチームにふさわしい、堂々たる試合を展開していきました。













 でも、これら全て、織り込み済みです。

粘り強く、対応。

普段よりも、多く声を掛け合いながら、組織を作りました。

マークの受け渡しや、ポジショニングを確認をこまめに。

そして最後は、体を張って、相手の侵入を許さない。

対戦相手も、中に入ってこれなくなりました。

少し力任せに、サイドからクロスを入れて、合わせる回数が増えてきました。

でも、単純にクロスを入れてくるだけではありません。

ファーサイドまでクロスを入れて、折り返して、走り込んできます。

我々のマークをずらしたいのでしょうね。

暑い中で、熱い試合が続きました。

ロースコアの展開。








 結果は、見事2対1で勝利!!

今まで、勝ったことがない相手でしたが、狙いがズバリ。

ロースコアの展開に持ち込み、カウンター2発で逆転勝利。

最後まで、全員が体を張って、ボールを奪い、ゴールを守りました。

時間の経過と共に、イライラする対戦相手。

こんなはずではなかった?!

我々にとっては、当初のプラン通り。

美しい試合ではないかもしれませんが、気持ちの入った試合だったのではないでしょうか。

まるで、私が観戦してきた、ウェールズ対ベルギーのような熱戦。

3バックが機能し、相手の自由を奪い続けたのです。

我々のチームに、1つオプションが増えたかもしれません。
posted by プロコーチ at 01:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月17日

失点シーンを分析

 惜しくも1対2で敗れた、キリンカップ決勝戦。

ボスニアヘルツェゴビナは、良かったですね。

願っていた通りの、私の好みのチームでした。

ビッグネームは、欠けていたかもしれない。

やる気のない名前だけの選手よりも、やる気にあふれた選手。

目の前の相手に対して、ボールに対して執着心を出す。


勝負にこだわる対戦相手は、テストマッチにおいて、本当にありがたい存在でしょう。










 2失点ともに、ディフェンスラインの責任を問われています。

特に、吉田麻也。

現象だけを見ると、彼のプレーに問題があったように見えてしまいます。

例えば、1失点目。

彼が背後のヘディングに競り負けて、ヘディングシュートを打たれる。

こぼれ球を決められて、ゴール。

2失点目は、マークについていたジュリッチ選手にシュートを決められる。

先ほどとは違い、今度は地上戦で後手を踏んだ形です。









 吉田麻也の能力の低さ、試合勘の無さが失点につながった。

まるで、敗戦の責任者のような言われ方です。

こんなことを、語ったり、信じている限り、日本の守備力は上がらないでしょうね。

本当に、残念な論調です。

目の前の、目立つ現象だけを取り上げて、そこに責任を集約させる。

例えば、パスが通らなかったという現象。

すると、ボールを蹴った出し手が目立ちます。

「しっかりパスを出さないからだ!。」

まさか、それだけが、パスミスの原因だとは思いませんよね。

パスには出し手もいれば、受け手もいる。

そして、周りで動き出している選手がいる。

パスミスという現象の幾つか前に、ミスの原因が潜んでいる。

それと同じように、守備の場合も考えてほしい。

失点の原因は、守備が組織されていないこと。

組織が崩壊し、個人がさらされてしまった。

吉田が後手に回ったから、その理由だけで失点になったのではありません。








 例えば、1失点目。

失点シーンでは、たくさんの選手がミスを犯しています。

原因となる、直さなくてはならないプレーが、あちこちで見られました。

まず、長友選手。

ロングキックが出されそうになったら、半身の態勢を取り、DFラインを下げ始める。

それは、ボールホルダーのボールの持ち方や、フォームから予測します。

この時、受け手となる選手が、背後へのランニングを狙っているかも観察です。

長いボールを蹴られた時には、すでに自分たちの背後のスペースに向かったランニングをしている。

この個人戦術が、取れていなかった。

映像で確認しましたが、4人中、長友選手一人だけ、遅れてしまっています。

結果、日本の左サイドに、スペースを与えてしまいます。


 続いて、森重選手と長谷部選手。

二人が、ヘディングのこぼれ球に、同時に反応してしまっています。

ボールは、DFラインの前、中盤のラインが担当するスペースに落ちました。

正直、どちらがボールに向かっても、守り方はあったと思います。

でも、ここでは、二人がボールを拾ったジュリッチ選手に寄せています。

その結果、森重選手が元々いたスペースが、空いてしまった。

吉田選手と酒井選手との間にギャップ(裂け目)が生じてしまったのです。

二人でコミュニケーションを取り、どちらかが最終ラインに入れなかったのか?!




 酒井選手。

こうして、ギャップが生まれてしまったのに、無関心。

外の選手をマーク。

つまり、自分の目の前の選手のマークに、重きを置いてしまった。

そうすると、ギャップは解消されないままです。





 そして、問題のシーンになります。

ペナルティエリアの外、ゴール正面30Mから、ラストパス。

ふわりとコントロールされ、絶妙のボールが、最終ラインとGKとの間に入ります。

この瞬間、まさかの事態が起きています。

ゴール中央で、正しいポジションを取っているのが、吉田選手ただ一人。

長友、酒井選手の両サイドバック。

センターバックの相棒である森重選手。

誰一人、いないという、あり得ない状況なのです。




 そのためか、吉田選手はボールが蹴られる寸前に、ポジションを移動します。

中央寄りに、2歩ほどズレました。

これは、酒井選手とのギャップを埋めるため。

中央に絞るポジションを取ったのです。

結果として、この2歩が命取りになりました。

その裏にボールが出されたため、吉田選手はボールを触ることが出来ませんでした。

でも、この2歩は、DFなら当然の行動です。

仮に、もう一度このシーンが起きても、2歩絞ってポジションを修正すると思われます。




 最後のミスは、森重選手です。

自分のポジションから飛び出してまで、ジュリッチ選手にマークについた。

はずだったのですが、最後の瞬間では、マークについていません。

おそらく、自分のポジションに戻ることを優先したのだと思われます。

守備者としての嗅覚を存分に働かせて欲しかった。

ポジションに戻ることより、相手を抑えることを優先して欲しかった。

ゾーンのDFを知ってるだけに、森重選手は、このような行動をとりました。

このプレーもミスとは言い難いのですが、原則を破ってでも、最後までマークする選択肢はなかったのでしょうか。






 ちなみに、ラストパスが出た瞬間の枚数はどうなのでしょうか?

相手の攻撃のほうが枚数が多いのでしたら、エラーも起こりがちです。

日本の守備陣はフィールドが7人+GK。

一方のボスニアヘルツェゴビナの攻撃は、たったの5人。

これで、崩されてしまうのですから、問題は大きいですね。

試合後に、吉田選手が、言葉を選びながら、コメントしていました。

「最後のところでは競り勝たなきゃいけないけど」

「その回数を10回から8回、7回に減らすことによって確率も下がってくる。
また、そういうボールを出させないのも技術の1つ。
そういうところをやってかないとフィジカルだけでは僕らは難しいのかなと」

この言葉を、責任逃れからくる、言い訳ととってしまうか。

それとも、守備組織の向上を、守備への理解を求める、真の声だととるか?

どう思いますか?

一度、巻き戻して、この失点シーンを分析してみてください。

単純に競り負けたのが、悪い。

そのような分析結果を出してしまうのは、私は賛成できません






posted by プロコーチ at 01:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月05日

1%の衝撃

 衝撃的な統計です。

ワースト1位(97位)
パリサンジェルマン…1.1%

同率で同じく1位が(97位)
バイエルンミュンヘン…1.1%

3位(96位)
バルセロナ…1.4%

4位(95位)
ユベントス…1.6%

ヨーロッパ各国リーグで、首位に立っているクラブが、見事に並びました。










 実はこれは、試合におけるロングボールの割合です。

試合中の全部のパスを数え、その中で、どれくらいロングボールを使用しているのか?

スペイン、イタリア、イングランド、ドイツ、フランスの5リーグで順位付け。

彼らは、試合中に数100本のパスを出します。

ワーストランキングに入るクラブは、500〜600本は出してきます。

ボールポゼッション率も高く、ボールを保持しながら試合を組み立てていきます。

その中で、たった1%しかロングボールを蹴っていないのです。

アトレチコマドリーは、比較的ロングボールを有効に使っているかな?

と思って調べてみても、わずか2.9%にしかすぎませんでした。









 自分たちのフットボールは、どうなっているだろうか?

アバウトなロングボールを蹴り込んで、追いかける。

少しでもプレッシャーを受けると、奪われるのを恐れてか、ボールを放棄してしまう。

一体、何%、何十%のロングボールを蹴ってしまっているのか?

「100%自分たちが保持しているボールを、なぜ50%以下に落としてしまうのか?」

「なぜ、このようなプレーを繰り返すのか?」

ドイツ代表のテクニカルスタッフが、講師を務めた指導者講習会。

講師がロングボールに頼る試合を見て、漏らしていた言葉が思い出されます。











 この統計の事実から、我々は何を学ぶべきなのか?
 
私は、2つのことを考えました。

・ロングボールを減らすための働きかけ

・ロングボールの成功率を高める


ボールを持っているONの部分、持っていないOFFの部分。

その両方を高めていく。

そして、ロングボールは、0にはならない。

この辺りを、改めて考察してみたいと思いますが、また別の機会に。










 この中で、あのクラブが入っていませんよね。

そう、プレミアリーグを制したレスター。

彼らは、6.9%。

全98クラブ中、第3位の利用率の高さになっています。

ちなみに、イングランドプレミアリーグの順位で考えると、このようになります。

トッテナム…3.1%

アーセナル…3.1%

マンチェスターシティ…2.4%

岡崎の所属するレスターは、ライバルチームの2倍から3倍もロングボールを用いている計算になります。

イングランドは、元々、ロングボールを多用する傾向にありました。

このレスターの優勝を契機に、またもや先祖返りしてしまうのか?

それとも、他クラブのように地上戦を繰り広げようとするのか?

来シーズンは、見どころが、一つ増えましたね。
posted by プロコーチ at 01:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月30日

サイドアタックの有用性

 週に一度、平日に試合をしています。

いわゆる草サッカーなのですが、居心地のよい場所です。

いつもの仲間がいて、ピッチもきれい。

学生時代には、かなりのレベルでぷれーしていた選手も多く、元プロも混じるほど。

何よりも、真剣に取り組む姿勢が、スタンダードになってきている。

「ボール取られたら、追えよ!」

「意図のない縦パスはやめよう。」

互いに、当たり前の要求を、当たり前に出来る。








 先日の対戦相手は、強豪でした。

4種、3種を指導するクラブのコーチ陣との対決。

地域でもかなり名の通った、強豪クラブ。

体は動くし、技術もある。

何よりも、サッカーを理解している集団。

相手にとって不足無しどころか、対処に困るほどのレベル。

狭いところにでも平気で侵入してくる。

間で顔を出し、足元につけ、はたいて、抜けてを繰り返す。










 最初は、守備を固めて、まずは崩されないようにブロックを形成。

面白くはないのですが、リアクションで試合を進めました。

それでも、崩してくる。

ボールをドンドン動かして、こちらの穴を作ろうする。

特に、中盤とDFラインとの間を使ってくるのが、上手。

こちらからすると、奪いに行きづらい場所で、ポイントを作ってきます。

GKのミスもあったのですが、2点を先制されてしまいました。







 さあ、どのように対応しようか?

さっと、話し合いをし、守備陣形をさらに整えて、対応しました。

中盤のサイドのスペースを明け渡しても、中央を固める。

4-4でブロックを組み、ラインを押し上げる。

コンパクトの状態を維持しながら、相手の選択肢を狭めるのです。

裏にスペースは明け渡すのですが、そこはラインコントロールと、走力でカバー。

横パスはあえて捨てる。

その代わりに、短くても足元の縦パスは許さない。

試合の流れは好転しました。

いい守備から、いい攻撃の流れが生まれ、3対2と逆転!









 1点返され、3対3で、前半終了。

すると、相手が右サイドにアタッカーを配置していきました。

この選手が、速い、クロスが正確と、絵に書いたようなサイドアタッカーでした。

中央でボールを動かして、サイドに振る。

そこから、GKとDFラインとの間に、アーリークロス。

中に、3枚以上が常に飛び込んでくる。

中央に絞り、ラインを上げている我々守備陣は、振り回され続けます。

サイドにスライドし、さらにラインを下げさせられる。

ラインを上げて、また絞る。

この作業を延々と繰り返しながらも、失点せずに、耐えていました。








 ところが、相手にポゼッションされ、リアクションを続けるのは、体力的にしんどい。

それだけならまだしも、サイドを有効に使われると、走る距離が一気に増えます。

走っているのではなく、走らされる。

ふと気が付けば、こちらの走力はがた落ち。

一番気をつけていたはずの、中央のスペースまで明け渡してしまっていました。

こうなれば、対処のしようがありません。

中からも、外からも、自由にフリーパスで通過されます。

悔しいけども、大敗に終わりました。









 当たり前ですが、サイドアタックは有効ですね。

相手守備者にとっては、視野角の限界があるので、マークを外しやすい。

サイドにある時、マークすべき人とボールとを同一視するのは、困難です。

攻撃側にとって、有利に立てるサイドアタック。

それをさらに効果を高めるのが、中央での崩し。

特に、ボールを保持しながら、バイタルに侵入していくことが出来れば。

相手守備陣は、サイドをケアしている場合ではなくなります。

そんな時、サイドにいいアタッカーがいて、タイミングよく使えたなら!

サイド攻撃の有用性を、身をもって体感させられました。

あまりにも当たり前のことですが、改めて感じましたね。

本当に、守備者から見て、怖いものです。



posted by プロコーチ at 01:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月14日

サイドを崩す

 今年も熱い戦いを見せてくれた、高校選手権。

制したのは東福岡。

決勝戦は意外なほどの大差でした。

プロに行っても通用するのでは?と思わせてくれる選手も、ちらほら。

ユースとの比較で、レベルの低下が言われています。

まだまだ、高校サッカーも健在ですね。

それどころか、クラブユースとの競い合いで、サッカーの質も高まっているように感じました。

守備を固めて、ボールを蹴飛ばすだけの、トーナメント仕様の戦術。

それでは、勝ち上がっていくことが出来ないのが、現在の選手権です。










 優勝した東福岡。

東福岡と言えば、サイドアタック。

スピードあふれるサイドアタックで、相手チームを切り裂いていく。

10数年前の印象でしょうか。

忘れられない選手と言えば、古賀誠史。

卒業後は、マリノスやアビスパで活躍しました。

本山、千代反田、山下など、他にも素晴らしい選手はたくさん輩出しています。

古賀は、左サイドをグイグイと切り裂いて、ドカーンとパンチの利いた左足のキック。

サイドアタックに特徴のある、東福岡らしい選手ではないでしょうか。









 今回のチームも、サイドアタックに特徴を見ることが出来ました。

それは、個人というよりも、サイドへの関わり方。

サイドの高い位置でボールを持った時に、周りの選手がどのように関わっていくのか?

サイドチェンジ、2列目の飛び出しなのでボールを受けた時には、目の前にはスペースが。

迷うことなく、ゴールに向かって、ボールを持ち出します。

では、サイドの高い位置でボールは受けたものの、相手SBに対応されている。

よく見かけるのは、味方のサイドバックが外を回ってオーバーラップラン。

数的有利を生かして、サイドの崩しを図ります。

これは、定番中の定番ですが、効果は大きいです。

瞬間的にでも、2対1を作ることが出来れば、サイドは崩せますからね。










 もちろん、東福岡も、このオーバーラップランは何回も見せてくれました。

印象的だったのは、違う崩しです。

それは、フットサルで言う「パラ(パラレラ)」「パラレル」の動きです。

中央の選手が、ボールを持った選手の前のスペースに向かって、中から外に斜めに走っていく。

サッカーでは、ダイアゴナルランと呼ぶこともありますね。

ボールは、中を警戒している選手をあざ笑うように、タテへパスを流す。

つまり、ラインに平行のパスコース(パラレル)に、パスを出す。

中は警戒していても、外は警戒が緩いことを活かした、このパラ。

フットサルのように、スペースがない状況でも、有効な崩しです。

これ一発でゴールまで!というのは厳しいですが、サイドをえぐるのは、難しくない。











 この動きをされると、守備側の対応が難しくなります。

出し手をマークしている対応、ランニングへの対応、この両方です。

出し手をマークしている、ONの対応はどうなっているのか?

守備者は、常にゴール方向を意識しながら、守備を行います。

つまり中。

中を厳しく警戒すればするほど、縦方向は空いてしまう。

縦が怖くても、中を空けてまで、縦をつぶすのは、最初から出来ない。

さらに付け加えると、自分の後ろを走っている選手を、背中で感じながら守備するのは、難しい。


 次に受け手、OFFの対応はどうなっているのか?

中央から外へのランニング。

これに付いて行ってしまうと、中央にスペースが生まれてしまう。

そうは言っても、マークを受け渡す味方は、存在しないことがほとんど。

マークを流すことも出来ず、中央を空けることも出来ず。

ジレンマを抱えながら、どちらかを諦めてしまう。

となれば、外のスペースへダイアゴナルに走っていった選手を諦めることが多いでしょう。











 つまり、守備側は、即興でこの動きに対してバランスをとることが難しいということです。

予め、この動きに対する、準備を話し合っておかなければならない。

どこまで付いていくのか?どっちのコースを切るのか?

私も、この動きを多用するチームとの対戦は、嫌なものです。

最低でも3人のDFが、意図を合わせなければ、穴が生まれてしまう。

賢いチームは、パラの戦術にとらわれず、その穴を突いてきます。

増々、対応が難しい、、。












 東福岡が見せてくれた、サイドアタック。

なかなか見ごたえがありました。

ただ、イチフナは、東福岡を自由にさせませんでした。

様々な工夫をしてサイドを崩そうとしましたが、かなり苦労していました。

パラもオーバーラップも、ドリブルも、さまざまな崩しを見せましたが、、。

結局、無得点のまま、80分が終わりました。

3回戦で見るには惜しいカードでした。

イチフナは早々に散りましたが、ファイナリストになっても、おかしくないレベル。

準決勝、決勝を見て、改めて感じました。

このような素晴らしいライバル関係が、お互いを高め合うのでしょう。

伝統高の復活、新しいチームの台頭。

来年の選手権が、今から楽しみです。

posted by プロコーチ at 01:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月14日

クロスから失点

 強豪チームを相手にする。

個々の選手の力。

グループとしての熟成度。

一つ一つのプレーの精度。

互角に立ち向かうことは、なかなか難しい。

試合が始まると、ボールを前に運ぶこともままならない。

簡単にボールを奪われる。

ボールポゼッションされ、自陣に押し込められてしまう。








 モウリーニョ監督がインテル時代に敷いた、有名な戦略。

ペナルティエリアの前までは、相手に来させても構わない。

自陣深くに自ら閉じこもり、最後の崩し、フィニッシュするスペースを絶対に与えない。

強固な強固な守備のブロックを、形成する。

自陣深くでだけ、人数をかけて、スペースを埋めてしまう守備方式です。

「バスを2台停車させた」とまで形容されました。

この言い回しは、モウリーニョ監督本人も口にしています。

彼は、対戦相手を分析し、試合を進めることに長けています。

相手の攻撃力が優れているのならば、超守備的と言われる戦い方を選ぶことに迷いはありません。

耐えて耐えて、必殺のカウンターで相手の息の根を止めるのです。











 ワールドカップアジア2次予選、日本対シンガポール。

シンガポール代表は、バスを停める戦い方を選んできました。

GK、DF、アンカー、MF,FWが、1−4−1−4−1で並びます。

ハーフタイムを超えてボールにプレッシャーには行きません。

背後のスペースを消し、ゴール前をガッチリ固めます。

6月の試合でも活躍した、シンガポール代表のGK,イズワン・マフブード。

当たりまくった彼が、今回もゴールにカギを掛けるべく立ちふさがっていました。

彼のシュートストップの能力は高いですね。

良いポジショニングから、抜群の反射神経。

序盤のスーパーセーブを見た時には、今回も?!と悪夢が思い出されました。











 今回は、3得点を奪うことが出来ました。

この3得点奪えたのは、日本の攻撃のバリエーションの多さが後押ししたでしょう。

ミドルシュート、サイドアタック。

中央を崩すために、細かいところに固執してパス交換をして引っかかる。

わざわざ、相手が待ち構えているところに攻め込んでいく。

1タッチで狭いところを無理やり崩そうとして失敗する。

ここ数年の日本代表の悪い癖です。

一点目は、今回の狙いがはっきり表れたゴールだったのでしょう。

本田が右サイドからクロス、武藤が折り返して、金崎が胸トラップからシュート。

美しいゴールでしたね。









 このゴールをシンガポール代表は、防ぐことは出来なかったのでしょうか?

名GKに頼るだけでは、このシュートを防ぐことは出来ない。

もし失点を防ぐとしたら、DFラインの助けが必要でした。

本田が右サイドからクロスボールを上げた時の、シンガポールDF二人のポジショニング。

ここに修正の余地がありました。

その瞬間、体の向きが悪く、マークを見失っています。

さらに、ここがポイント!なのですが、DFラインの高さです。

ちょうどPKマークの辺りに位置していました。

ゴール前から11M。

言い換えれば、ペナルティエリアの中、5M以上侵入されています。

クロスボールに競り負けた瞬間は、シュートを打たれることに等しい。

その場所が、ゴールから11M以下になってしまうのです。

体の向きが悪く、相手選手を見失い、シュートまで持ち込まれる。

もしそうだとしても、この位置がもう数Mでもゴールから離れていたら!?

GKにシュートを止めるチャンスがあったかもしれません。










 シンガポール代表の守備陣は、バスを停めることに必死になりすぎて、大切なことを忘れていました。

それは、ラインコントロールです。

相手のボールの動き、状態を見て、こまめにラインを上げ下げする。

ここで言うラインコントロールは、オフサイドトラップのことではありません。

オフサイドというルールを活用はしていますが、オフサイドを取ることを目的にはしていません。

ラインを上げ下げすることにより、相手攻撃陣の動きを制限させたいのです。

実際にこの時も、ラインコントロール出来ていませんでした。

本田がボールを受けた瞬間は、DFラインは、ほぼペナルティエリアのライン上でした。

そこから、相手のフリーランニングに引っ張られ、ズルズルとラインを下げてしまった。

一方、本田のドリブルはゴールから遠ざかるように3・4Mボールを運んでいました。

ラインを上げるのならまだしも、下げる必要は無かったはずです。

このラインコントロールのミスが、日本の得点を生んだと言えます。










 最近、ラインコントロールが巧みなチームの試合を観戦しました。

チャンピオンズリーグのベンフィカリスボン対ガラタサライの試合です。

ベンフィカのDFラインは、90分を通して、こまめにラインをコントロールしていました。

そして、相手の攻撃を制限し、入ってきたボールに対して、しっかりとファイトします。

終盤に一人の退場者を出してしまいましたが、守備組織が破たんすることはありませんでした。

ベンフィカの守備を統率していたのが、私のお気に入りのCBルイゾンです。

10年以上もベンフィカでCBを務め、キャプテンマークも巻いています。

ブラジル代表としても40試合以上もキャップを重ねています。

ワールドカップでの活躍がないためか、地味な選手?かもしれません。

彼は、体型的には190センチを超える大柄で、クラッシャータイプと思われがち。

でも、あの繊細なラインコントロールは、ヨーロッパでの10年以上のキャリアの賜物なのでしょう。










 攻撃の選手が、オフ・ザ・ボールの動きで、先手を取る。

ボールを受ける前に、マークを外し、有利な体勢でボールを受けようとする。

それと同じように、守備の選手も、ボールが来る前から勝負は始まっています。

良い準備が勝負を握っているのは、攻撃も守備も共通です。

ボールにファイトし、体を張るだけがDFの仕事ではありません。

ラインコントロールを身につけ、FWとの勝負を有利に運びたい。
posted by プロコーチ at 01:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月05日

FCバルセロナを倒すために

 ヨーロッパ各国リーグも終わり、今シーズンも佳境を迎えています。

いよいよ、UEFAチャンピオンズリーグの決勝戦。

FCバルセロナ対ユベントス。

スペイン対イタリアの試合は、盛り上がります。

対極ともいえる、フットボール文化を持つ両国の対戦。

勝負に徹するイタリア、スタイルにこだわるスペイン。

一概に決めつけるのも良くないのですが、彼らの体に染みついたものは簡単には抜けないはずです。









 イタリア・ローマでの監督も経験した、バルサ監督ルイスエンリケ。

イタリアの強さも、脆さも理解しているのでしょうか?

スペイン人のメンタリティはもちろん、イタリア人との仕事の経験。

両方を持ち合わせている、希有な存在。

スペイン・イタリア両国でのプレー経験がある、元監督グアルディオラの成功が思い出されます。

リスクマネジメントをしながら、攻撃していく。

近い距離間でのパスを回しながら、ボールを保持していく。

相手のスキを見つけては、DFの間に入り込んでいく。

今年のバルセロナは、このようなプレーが減っています。

ボールポゼッションよりも、ゴールへの最短距離を前線の3人が目指す。

メッシ、スアレス、ネイマール。

南米最高峰のタレントに気持ちよくプレーさせている。

バルサらしいというよりも、効率的な試合運びの意思を感じます。










 やはり、前評判はバルサに傾いているようです。

あれだけのタレントを揃えているチーム。

一方、優勝から長く遠ざかっている、イタリア、そしてユベントス。
 
彼らがバルサを倒すには、どうすればよいのでしょうか?










 まずは失点を最小限にすること。

何よりも、前線の3人と、1対1の状況を作らない。

ボールを奪って、中盤がルーズになった瞬間。

バルサは常に、縦パスを狙っています。

中盤でプレッシャーをかけ続けることが可能なら、縦パスは通りづらいでしょう。

鬼プレス。

これが可能なのは、せいぜい、試合開始25分くらいまででしょう。

30分にもなれば、守備の出足が一瞬遅れてきます。

その一瞬のゆるみが、バルサの3人が輝かせてしまうでしょう。










 では、どうすればいいのか?

サイドバックと、中盤の選手とで、常に1対2の形を作る準備をしておくこと。

一枚抜かれても、もう一枚がカバーリングをする。

常に二人ペアで動けるなら、わざと抜かれるくらい、一気に寄せる守備も有効でしょう。

サイドのスペースを明け渡してしまうことがあってはならない。

中盤のサイドに、守備意識の高い(ボランチ系の)選手を並べる。

この形は、レアルとの準決勝でユベントスが見せてくれました。

レアルマドリードのサイドアタックを防いだ、あのやり方です。

準決勝での戦いが、いいシミュレーションになっているはずです。










 
ゴールの奪い合いになれば、バルセロナが勝利に近づくでしょう。

ユベントスとしては、少しでも長く、ロースコアで試合を進めて行く。

では、どのように点を取るのか?











 ここでもポイントは、サイドになるのではないでしょうか。

ユベントスがサイドの守備を固める。

サイドバックに加えて、中盤もサイドの深い位置を助けに行く。

すると、中盤にスペースが生まれる。

ここを狙って、バルサのサイドバックがオーバーラップしてくるでしょう。

ダニエウアウベス、ジョルディアルバが積極的に攻撃に。

まるで、ウイングのような振る舞いも見せる。

バルサの武器の一つですよね。









 昔から、攻撃的なサイドバックのいるチームの弱点は決まっています。

サイドバックが上がった後に出来るスペース。

サイドバックの裏のスペースを素早く突かれるカウンターに、脆さがあります。

ブラジル代表も、よくこのパターンでやられます。

いかに、マスケラーノといえども、一人で広大なスペースを埋めることは不可能。

このスペースにボールを入れさせない、攻から守の素早い切り替わり。

グアルディオラ監督時代のバルサは、本当にこれが素晴らしかった。

攻守が一体となった、お手本のようなチームでした。










 現在のチームは、これがあまりに緩い。

前線の3人に攻撃力のある選択をしている、その引き換えに、攻守の切り替わりを失っています。

点を取っているから、文句を言えないのでしょうか?

それとも、諦めてしまっているのでしょうか?

ハッキリ言うと、甘さがあります。

ペドロ、イニエスタ、ブスケッツなど、当時の選手は速い!

でも、全員が切り替わりを早くするから、攻守一体となった試合展開が可能なのです。

ペドロが出ていると、その違いが本当に分かりやすい。

ペドロは、100%のダッシュで、切り替え0秒1秒で守備に入ります。

ところが、その他二人は、ジョッグ程度のチェイス。

これでは、簡単に裏にボールを入れられてしまいます。

そこを素早く、ユベントスがつけ入ることが出来れば、勝利の可能性は高まります。










 私は、ユベントスを応援しているわけではありません。

実際は、どのような試合になるのか、予想は難しい。

一つだけ言えるのは、最高レベルの試合を観たい!

このような予想を立てながら試合を観るのも、楽しいものです。








 
posted by プロコーチ at 18:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月25日

壁の作り方

 先日、社会人リーグの試合がありました。

コンディションが整わず、戦力もまばら、、。

しかも対戦相手は、昨年度2位で、ここまで全勝。

前節は、いい試合が出来たので、いい流れになりつつあったのですが。










 この試合で、気づいたことがあります。

それは、セットプレー時の壁の作り方です。

フリーキックを考える時に、フリーキックの状態を分類する必要があります。

もちろん、攻撃なのか、守備なのかは当然。

次に考える重要な分類があります。

それは、直接ゴールを狙えるか、直接ゴールを狙えないのか?

今回のセットプレーは、相手ボールのセットプレー。

しかもゴールほぼ正面右寄り、25M。

相手からしてみれば、絶好の位置でのフリーキックです。








 GKが壁の指示を出します。

「5枚」

このような指示があると、壁はニアをつぶそうとしますよね。

ゴールから近い側に低く速いボールを蹴られると、GKは間に合わない。

だから、ニアの低いシュートコースを、DFの壁で隠してしまう。

GKは壁とは逆側に、少しポジションをずらします。

この時、GKとDFとで役割を分担し、信じ合うことが重要です。

壁側はDF,逆のファーサイドがGK。

壁の上をまいて落としてくるようなボールを決められたら、相手をほめる。

これが、直接ゴールを狙えるFKでの守備の基本です。

さらに、壁の脇から、ボールにプレッシャーをかけるべく、ダッシュの備えもさせていました。









 一つ、これに加えて発見がありました。

万全の備えをしたはずなのですが、前述のFKを決められてしまいました。

そのシュートは、ファーに低空飛行のシュートを少しカーブさせながらの軌道。

GKが伸ばした腕の外から入ってくるような軌道は、難しいものです。

そして、この日、グラウンドが少しスリッピーでした。

これを利用した、素晴らしいシュートだったのです。

われらがGKも反応したのですが、ボールはサイドネットに突き刺さりました。









 シュートを決められたのですが、その瞬間気づくことがありました。

「ファーサイドを完全にGKに任せるだけではない。」 

壁は通常ニアサイドのポスト側から並びます。

ニアポストとボールとの延長線上に一番端の選手が立たせる。

もしくは、ニアポストの延長線上のもう一人外側に立たせる人もいます。

どちらにせよ、ニア側です。

ところが、ファーサイドのシュートコースに一人立たせるのです。

そうすると、どのような効果があるのか?

相手フリーキッカーは、ファーに低くて速いシュートを打てなくなるのです。

ファーに高い弾道なら、GKの止めてくれる確率は上がりますよね。(ゴールへの到達時間が長い)





 





 たまたま、この試合の後半に、同じようなシーンがありました。

直接ゴールを狙える位置で、相手ボールのフリーキック。

キッカーは、先ほどゴールを決めた同じ選手。

GKと連携しながら、ニアに壁を立たせます。

GKがややファーに構える。

そして、自分で、ファーサイドのシュートコースを隠す位置に立ちました。

すると、相手はコースを消されて困ったのか、困惑した表情を一瞬浮かべた?

今度は、壁の上を狙ったシュートを打ちましたが、バーの上を超えていきました。










 たった一人、ファーのシュートコースを隠すだけ。

この単純な発見ですが、意外と有効かもしれません。

もちろん、利き足に合わせて、カーブすることも考慮に入れるべきです。

一度、このイレギュラーともいえる壁を試してみてはどうでしょうか。
posted by プロコーチ at 01:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月26日

GKとDFとの連携

 GKの目線を、何度も体験しました。

すると、DFに求められることが、見えてきました。








 フットサル大会に出場しました。

サッカー、フットサルの経験者は、ほとんど出場していないレベルの大会です。

我々のチームは、私のスクールの受講生を募って、大会出場です。

選手同士は初めて会う者同士。

女性が2人、フットサル慣れしていない選手もいました。

このままではヤバイ?!

主催者にお願いして、私がGKで出場することを認めてもらいました。

強いキック、シュートは打たないと約束。








 選手全員が、真剣に大会に臨んでくれました。

もちろん守備も、怠ることはありません。

ボールホルダーに飛び込むことなく、相手の前で粘り強く応対してくれます。

部活経験者はいない?とは言え、試合慣れした選手、技術レベルの高い選手も、相手にはいます。

若く、キレのある動きをする選手もです。

それでもしぶとくボールの前に立ちふさがってくれます。

4試合を戦いましたが、一度もGKと1対1の局面を作られることはありませんでした。










 ところが、最初の2試合は勝てませんでした。

1試合目…1対1

2試合目…2対2

2試合で3失点もしてしまいました。

得点力が低いので、ロースコアの展開に持ち込みたい。

ロースコアどころか、無失点でゲームを終わらせたい。

みんなの頑張りでロースコアの展開には持ち込んだのですが、3失点。

何が悪かったのでしょうか?









 失点の原因は、DFと私(GK)との連携にありました。

粘り強く、前に立ちふさがる。

抜かれないように、下がって来る。

そのため、シュートを打たれる位置が、ものすごくゴールに近い位置になってしまう。

さらに、シュートの瞬間が、全く見えない。

味方が私にとって、影(ブラインド)になってしまうのです。

気が付けば、ピュン!目の前にボールが飛んできている。
 
2失点は、触ることすらできず失点。

もう1失点は、なんとか触るも、こぼれ球を詰められる。








 私は選手に指示を出しました。

抜かれてもいいから、ボールに強く寄せること。

責任は私が取るから、とにかく寄せるように!

狙いは、ブラインドになるのを防ぐこと。

シュートを打たれる場所を、ゴールから離すこと。

さらには、私(GK)が飛び出すタイミングを分かりやすくする狙いもありました。









 結果、残り2試合は無失点に抑えることができました。

選手たちが、指示に従い、抜かれるのを覚悟でボールに寄せてくれたのです。

それが、チームに前進する力も与えてくれました。

守備での積極性が、攻撃にもエネルギーとなったのです。

3試合目…2対0(優勝チームに勝利!)

4試合目…3対0










 大会結果は、4試合戦って、2勝2分け。

5チーム中2位で大会を終えました。

チームの約束事が、試合が進むにつれて熟成したこと。

守備の積極性が、攻撃にいい影響を与えてくれたこと。

そのおかげで、選手全員、満足そうな表情を浮かべてくれていました。

選手6人中5人が得点を挙げたのも、良かったです。










 守備は、抜かれないように粘り強く対応するだけでは、足りない。

GKとどのように連携して守るのか?

ボールに寄せるだけでなく、守るコースを分担し合う方法も大切です。

遅らせる、ボールに寄せる、そのタイミングを共有することも、重要。

DFが頑張るだけでも、GKが頑張るだけでもダメですね。

GKの目線。

普段とは違った目線になることで、違ったものが見えます。
posted by プロコーチ at 14:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月02日

強豪チームになるための数字、61%。

 強豪チームは、61%。

ところが、そこまで至らないチームは、38%に留まる。

この数字に、チームの強化の過程を、想像することができる。








 JFAテクニカルスタディグループが、様々な大会のレポートを発表しています。

ワールドカップのような国際大会。

そして、国内で開催される、年代ごとの大会も。

今年の夏に開催された、全日本少年サッカー大会。

この大会を、あらゆる角度から分析し、報告を上げてくれています。

それによると、テクニックで最もチームによって差が見られたのが、ターン。

周りを観て、素早く前を向く。

ターンが出来るかどうかで、展開できるかが決まり、ポゼッション変わってくる。

このターンの技術の習熟度が、チーム・個人で差が見られたとのこと。










 そして、スローイン。

全試合のデータを取ると、成功率は44.5%。

さらに詳しく分析がなされています。

ベスト8に進出したチームは、61%成功している。

ところが、2次ラウンド進出のチームは、50%。

1次ラウンドの下位チームは、38.8%しか成功していません。

スローインが直接ゴールに結びつくかどうか、ということではありません。

スローインに、チーム力が現れているという分析。

オシム監督も、スローインは一人少ないのだから、攻撃側が不利になりうると説いています。









 1次ラウンド敗退チームとは言え、各都道府県でNO1のチームが集まっている。

それでも、成功率に、ここまでの差が出てしまう。

リポートでは、手で投げるので技術的な問題よりも、意識とタイミングの問題だとしています。

成功率の高いチームは、相手の準備よりも早く投げて成功している。

成功のための指針として、

・出し手と受け手とがタイミングを合わせる。

・複数の選手が関わる中でコントロールしやすいボールを投げる。

この2つを挙げているのです。








 なるほど、この2つを皆が出来れば、スローインの成功率は高まるでしょう。

個人戦術の理解が高い選手が集まっていれば、可能になるはずです。

これが、チーム全体で出来るかどうかは、また違う話になると思います。

成功率の高いチームは、おそらく、スローインのトレーニングをしているのではないか。

少なくとも、ミーティングで、共通理解を持っているはずです。

個人の判断に依存して、スローインをさせるだけでは、ある一定以上、成功率は高まらない。

それが、全体平均の44.5%なのではないでしょうか。

プラス15%を乗せ、61%にするための努力が必要です。

子供たちは忙しい。

日頃から試合もたくさん組まれている。

そして、あれも、これもトレーニングをしたい。

スローインのトレーニングまで追いついていない、目を向けれていない。

そんなチームもあるのではないでしょうか。

個人戦術の能力が高く、なおかつトレーニングをしている。

成功率には、この差が現れているのだと思います。










 フットサルでは、多くのパターンや戦術があります。

キックインも当然のようにパターンがあります。

キックインからゴールを目指すもの。

ポゼッションに切り替える。

キッカーを突然変えたり、交代を駆使するなど、トリックプレーを仕掛ける。

数多くのパターンから、各チームが幾つかのパターンを持っているのです。

5人全員が理解し、ポジションにつき、実行する。

何度もトレーニングを繰り返し、身につけていくのです。







 サッカーも、フットサルもお互いに、いい刺激を受け合い、高めれるでしょう。

フットサルのキックインから、サッカーのスローインに応用できるパターン。

強豪チームになるために、取り組んでみてはどうでしょうか。
posted by プロコーチ at 09:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月26日

対人プレーの戦術

 バスケットボール、ハンドボールに学ぶことは多い。

ゴールを守り、ゴールを奪うことは、我々のフットボールと同じ。

大きな違いは、もちろん、手でボールを扱うこと。

手でプレーをする、最大の特徴は、ボールから自由になれること。

戦術的行動を取ることが、容易になります。

なぜなら、ボールを自分たちのタイミングで、出し、受けることが出来るからです。

相手を外すための工夫、フリーになる時間を作るための工夫です。









そのプレーの一つに、スクリーンプレーがあります。

ピック&ロールとも呼ぶようですが。

スクリーンとは、
過度の接触を起こすことなく、相手のプレーヤーの希望する場所への動きを、遅らせたり、制限する正当なプレーである。

引用…wikipedia、スクリーン(バスケットボール)


味方をフリーにするために、相手DFが邪魔。

相手DFの進路に入って、自分が通せんぼしてあげる。

通せんぼされたDFはぶつかってしまうか、遠回りを余儀なくされる。

自分が犠牲になって、味方をフリーにしてあげる。

フリーにしてもらった味方は、そのチャンスを逃さず、シュート、もしくは突破を図る。

バスケットボールの試合を観ていると、頻繁に出てくるプレーです。

バスケットボール経験者の方からすれば、何を今更というレベルの話でしょう。









 このプレーは、サッカー・フットサルでも見ることが出来ます。

例えば、戦術の進んだイタリアでは、育成年代に指導するグループ戦術の一つ。

ブロッコ。(ブロック)

攻撃2人対守備1人の局面。(2対2でも)

ボールを持っていない選手が、DFに近づいて進路を塞ぐ。

空いた道に、ドリブルで侵入していく。(シュートも)



アルゼンチンの考えを紹介してくれる亘崇詞さん。

指導者として、ベルディ、ベレーザなど様々なチームで活躍されています。

もしかすると、解説の方が有名なのでしょうか。

彼の原稿でも、同じような考え方が書かれていました。

同時に、日本ではあまり見ることがないけど、、と注釈がありました。



フットサル日本代表ミゲル・ロドリゴ監督。

彼の著書でも、紹介されています。

ブロック&コンティニュー。

フットサルで非常に重要な個人戦術がブロックである。

ボールを持っていない選手が、ボールを持った選手をマークするDFに

ファールにならない程度に体をぶつけて進路をふさぎ、ボールを持った選手を自由にする。

引用…フットサル戦術パーフェクトバイブル、(株)カンゼン









 このプレーが、チャンピオンズリーグ準決勝で使われていました。

バイエルンミュンヘン対バルセロナの1STレグ。

後半のバイエルン、ロッベンが3点目を奪ったシーンです。

右サイドでボールを持つと、中にカットインして左足でシュート!が大好きなロッベン。

彼が、またぎフェイントから、縦に突破し、シュートを決めた。

この時、応対しているジョルディ・アルバは、まだ完全に突破された訳ではなかった。

一瞬置いていかれそうになったが、まだ、スライディングをすればシュートを止められる!?

必死に内側から、ロッベンを追いかけて行きました。

その瞬間、バイエルン、ミュラーがDFの進路に入って来ました。

全く視野に入ってなかったジョルディアルバは、接触そして転倒してしまう。

フリーになったロッベンは、左足に持ち替えて、余裕を持ってシュート。









 見事なブロック。

バスケットボールならスクリーンプレーが発動された瞬間です。

後からスローで見直すと、ミュラーは途中からボールを受ける気は見えません。

ブロックするための明らかな意志を持って、ボールサイドに近づいて行っています。

顔の表情まで、知らんふりの演技をして、立ち止まっています。

「何も知らないよ、ぶつかって来たのはお前だろ」とでも言わんばかりの仕草でした。

バルサの選手は、反則をアピールして、何人も手を挙げています。

しかし、主審も、目の前で見ていた追加副審は、反則をとりませんでした。











 ただし、バスケットボールなら、反則を取られていたかもしれません。

反則になるか、ならないかの基準が幾つかあります。

その一つに、スクリーンをセットした後、移動したり体を寄せて、ディフェンダーの動きを妨害した。

静止してスクリーナーが見えない相手プレーヤーへ、通常の1ステップより近づいた位置にセットしてはならない。

わかりやすく言うと、定位置から動いてはならない。

オフェンスファールを取る時と同じように、自分の元々のポジションを取っていた!というアピールでしょうか。

見えていないジョルディアルバに、ミュラーは自ら近づいて行って、ぶつかっています。

イリーガルなスクリーンなのではないでしょうか。










 セットプレーでは、フットボールの世界でも、度々目にする、このブロック。

オープンプレーでも、有効であることが、大舞台で実証されました。

もしかすると、ここまで目立ってしまうと、レフェリーのチェックが厳しくなる??

それくらい鮮やかで、効果的なプレーでした。

こういった、個人・グループ戦術は、目立たないけど、試合を有利に運んでくれる。

証明してくれた、そんなゴールだったのではないでしょうか。
posted by プロコーチ at 12:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。