中澤佑二、楢崎正剛。
代表でもクラブでも、活躍し、周りにいい影響を与え続けたと思います。
彼らの活躍そのものが、日本フットボール界、躍進の歴史とも言えますね。
2人が引退するのは、年齢、コンディションもあるでしょう。
でも、今すぐ引退しなければならない状態ではなかったようですね。
クラブから、来年の契約、他クラブからの打診もあったと、記事にありました。
それだけ、彼らのプレーや、存在意義は認められているのでしょう。
まだまだ、活躍する姿を観たかったのですが、残念です。
引退理由の一つが、似ていました。
所属クラブでの活躍の場を失ってしまったこと。
今まで、試合に出続けていたのに、突然、ベンチ、ベンチ外を命じられた。
それは、フットボールそのものの進化が、原因でしょう。
「いいチームは、一番後ろ(GKやDF)から攻撃を始め、一番前(FW)から守備を始める。」
前線の選手は、点を奪うだけ。
後ろの選手は、ゴールを守り、ボールを奪うだけ。
それでは、昔のフットボールスタイルだよ。
チーム全員が、たくさんのタスクを持ち、攻撃も守備も、免除される選手はいない。
それが、近代フットボールの流れであることは、間違いありません。
1990年前後に、バルセロナの監督を務めた、ヨハンクライフ。
スペインリーグを4連覇するなど、ドリームチームと呼ばれたチームを作り上げました。
今につながる、様々な革新をもたらしたことでも知られています。
グアルディオラがチームの中心で、ボールをさばき続けていた。
ボールを受けては出して、それを繰り返す。
全く目立たないので、ロマーリオやクーマン、ラウドルップにストイチコフにサリナスに目が行きます。
でも、ポゼッションなる言葉すら、ほぼ使われなかった、あの時代。
今でいう、ブスケッツや、アルトゥールの仕事の重要性を、見出していた。
さらに、GK。
代表のGKがいたのですが、違う選手を用いようとしていました。
ボールを足で受けて、配球する能力に長けた選手を試していたのです。
当時は、バックパスを、GKが手で拾い上げることすら許されていた時代。
それなのに、一番後ろに、パスの配球役を置こうとしていたのが、クライフ。
この試みは、あまりうまく行かなかったのですが、今思えば、先を見る目はまさに慧眼ですね。
オシム監督も、同じことを求めていましたね。
その時も、まだまだポピュラーではなかったと、覚えています。
2019年の今では、GKが足でプレーするのは当然です。
ノイアー、テアシュテーゲン、クルトワ、日本なら西川。
足でのプレーで、チームに貢献するGK像が、定着してきましたね。
バックパスは、当然、手を使えない。
でも、後ろでプラス一枚を作るために、GKがビルドアップに積極的に関わる。
私がブラジルリーグの試合を観戦した際も、ロシアワールドカップを観戦した際も同じでした。
試合前のアップで、足を使うトレーニングの比重が高まっています。
足のプレーから始めるチームが、半数を超えている印象です。
いつもなら、体をほぐして、準備が出来たらキャッチボールでした。
今は、ボールを扱い始めるならば、まずは足から。
グラウンダーだけでなく、浮き球の処理、1タッチ、2タッチ。
正面、角度を変えて、さらには近い距離に遠い距離。
とにかく、足でのプレーをたくさん求められるのが、現代のGK像と言えますね。
それは、センターバックも同じでしょう。
ボックス内で、ヘディングで弾き返す。
1対1で、相手を制圧する。
DFラインを統率、カバーリングもこなす。
これだけでは、足りないのが、現代のCB像でもありますね。
攻撃においては、ビルドアップの中核としてのプレーを求める。
バックバスを、ボカーンと蹴り返す。
とりあえず、長いボールを、FW目掛けて蹴り入れる。
このプレーだけでは、当然物足りない。
高い戦術眼と、左右の足での技術。
まるで、中盤の選手のような、組み立ての能力が求められるようになりました。
中澤と楢崎。
彼らは、ボックス内の仕事人ともいえる存在ではないでしょうか。
シュートを止める、はじく。
1対1で相手をシャットアウトする。
ロングボールやクロスに対して、制空権を制圧する。
体を泥まみれにしても、味方のために体を張り続ける。
そうして、チームに勝利やタイトルをもたらしてきたのが、この二人です。
ところが、この能力は、必要のない過去のものとなった?
それは、違うと思います。
ボックスの中で、相手に勝つ!
ボックスの中で、違いを出す!
これは、ずっと求められる能力です。
我々のプレーする、このフットボール。
その勝利の条件が、相手より得点を奪い、相手よりも少ない失点であること。
これが変わらない限り、2人の有した能力は、求められ続けるものだと、私は考えます。
それをベースとして、組み立てに必要な能力を求める。
それが、未来のCB像であり、GK像になるのでしょう。
ボックス内の仕事人は、今後も求められる。
素晴らしいお手本のお二人、長年ありがとうございました。