2009年02月27日

一つのチームの中に、

 UEFAチャンピオンズリーグが再開されました。

決勝ラウンドに進んだ16チームのレベルは、高い。

世界最高峰のカップ戦とされるだけの、水準でした。

そうなると、自分たちのやりたい方法を押し付けるだけではすまないようです。


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 相手の長所(ストロングポイント)を消していく、試合運びがあります。

マークを徹底的にするか、スペースをつぶし続ける。

自分たちの良さ(ストロングポイント)を出すことは、二の次にしてです。


「作り上げることよりも、壊すことは簡単」

攻撃を組織するよりも、守備は簡単。

家を建てるのは難しいが、壊すのは一瞬。

オシムさんの言葉です。

他にも、何人もの指導者やプレーヤーが、同じような言葉を残しています。


 裏を返せば、守備的に試合を進めてリスクを排除していく。

一瞬のカウンターやフリーキックに掛けて行く。

0対0、もしくは1対0での勝利を目指す。

リアリストと呼ばれる人々の志向する、戦い方です。


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 ところが、最近はこういった考え方だけ!で試合を進めるチームが、減少傾向にあります。

攻撃側優位のルール変更が、何度も行われています。

そして、用具の進歩によって、GKやDFは対応が難しくなっています。

昔は、無回転のブレ球なんて、無かったですよ。

ミドルシュートのレンジも、明らかに広がっています。


 南米系、アフリカ系の選手の「個の力」は圧倒的ですらあります。

ボスマン判決以降、その人数は増すばかり。

11人中、自国選手は1人、2人というのも珍しくありません。

 守ろうと思っても、守りきれないのが現状なのではないでしょうか。

イタリア勢に、ドイツ勢が優勝できていません。

セミファイナルに残るチーム数も少ないですよね。



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 改めて、何が起こっているのか?

これを確認するために、8試合全てをテレビ観戦しました。

次のような傾向があったように思います。


 
 ゲーム序盤の立ち上がりは、ガンガンにプレッシャーを掛け合う。

これが、前半の15分から30分あたりまでは続くのです。

その時間帯の傾向として、選手がヘタに見えてしまいます。

トラップミスや、パスミス、適当なロングフォワードパスが増えているからです。

おそらく、テレビで観るよりも、速く強烈なプレッシングがあるのでしょう。


 特に、攻撃から守備への切り替え(トランジション)は速い!

誰もが、奪われた瞬間に、守備を開始します。

下がらずに、その場から。

甘えの許されないフットボールとは、このことなのか。

思い知らされる時間帯であります。

この時間帯のコンセプトは、相手の良さをつぶす、壊すことでしょう。
 


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 その時間帯を過ぎると、ようやく試合が落ち着いてきます。

意図のある展開や崩しが、数多く見えるようになってくるのです。

スピードに乗った、サイドの崩し。

中盤の選手がボールに触りながらの展開。

3人目、4人目がボールに係わってくる。

オッ、オッと画面に引き込まれる回数が増えるのもこの時間帯です。

攻守共に、バランスの取れている、安定している時間帯ともいえるのでしょうか。



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 そして、後半も15分20分を過ぎると、お互いの疲れがピークになる。

全体的に間延びしてくる。

前半から飛ばしたツケが回ってくる時間帯です。
 

 ここで、各選手の個人技が輝いてきます。

選手同士のコンビネーションも、さらに見られます。

彼らは、プレッシャーがゆるくなると、本当に巧い、すごい。

これを出させたくない、気持ちがよく分かります。


 監督が、交代のカードを積極的に切る時間帯でもあります。

大きく試合が動く、もしくは動かしたい。

調子の出ない、足の止まった選手を外に出す。

取っておいた、攻撃的な選手を投入する。

もしくは、守備的に進めるための、新たなプレッシャー役の選手の投入。

勝ってるチームは、徐々に試合を終わらせようと、テンポを落とすこともあるでしょう。


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 その幾つもある、時間帯に合わせた戦い方を、平然と行う。

我慢すべきは、我慢する。

ガンガン行く時は、遠慮なく行く。

時間をゆっくり使う時は、ゆっくり行く。


 一つのチームなのに、複数の戦い方を試合の中で変化させていく。

これが、トップトップのチームの、最大の特徴に感じました。

もちろん、様々な展開はあります。

今回挙げたのは、一例にしか過ぎないでしょう。

ポイントは、自分たちで戦い方を変化させることが出来る!そのことです。

一つの戦い方しか出来ないチームは、これ以上の進出は、厳しいとも言えます。

 良くあるのは、ホームとアウェイとで、戦い方を変える。

試合の中で変えるとしたら、前後半のところ。

せいぜい、選手交代をきっかけにするやり方。

フォーメーションを変え、戦い方もシフトチェンジする。


 それが、全く違うチームに見えるほど、戦い方を変化させていく。

フォーメーションも変わっていないのにもかかわらず、システムを変更させていく。

チームの熟成度もあるでしょう。

私はそれに加えて、一人一人の試合を読む目。

この能力の素晴らしさを感じました。



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 フットボールが巧い、レベルが高いとは、この部分かもしれない。

我々には、大局的にゲームを読む力が足りていないのではないか。


 ではどうすれば、その能力を育てることが出来るのか? 

自分がそれをつかめたところで、それをどのように伝えることが出来るのか?

自分のチームの試合を観ていて「嫌な感じがする」

その逆に、「今、いい流れが来そう」

長年指導していると、それは感じれるようになってくるのです。

毎回感じれれば、勝負師と呼ばれる名将なのでしょう。


 自分が感じれれるのと、伝えるのは、話が大きく違ってきます。

答えは、霧の中でボンヤリとしか見えません。

新たな課題を、抱えてしまいました。

posted by プロコーチ at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月03日

役割を分けてしまう。

 全員で守備して、全員で攻撃する。
ただし、これがサッカーの全てではない。

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 コンディション、チームの成熟度共に、不安要素いっぱいです。
サッカー日本代表は、明日、一週間後の試合をどう戦うのでしょうか?
楽しみと、不安とが入り混じっています。

 彼らの戦うスタイルは、全員攻撃、全員守備。
より多くの人数が攻守にわたって、プレーに関与していく。
走れること、走り続けることが、選手選考の前提となっている感があります。
それが、岡田監督の目指す、形なのでしょうね。

 私も、日本人が海外の選手と戦うなら、それが妥当かなと考えます。
より多くの人数が、プレーに係わるとどうなるのか?
個と個との、勝負を避けることが出来る。
局面においても、個人の能力ではなく、グループの力で解決を目指す。

 言い換えるなら、個人の力量差で引けをとっていても、晒されることがない。
もっと強く言うなら、こうでしょうか。
かけっこや、ぶつかり合いなどで弱い日本人でも勝つチャンスが生まれる。

 大人になって、完成を迎えようとしているプロ選手
彼らが劇的に向上することは少ないでしょう。
それならば、今、この瞬間は、そういった戦い方になるのでしょうね。


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 世の中には、色々な戦い方があります。
その一つ、イタリアの名門チーム、ACMILAN。
彼らの戦い方は、日本代表チームの対極とも言えるでしょう。

 何しろ、攻める人間、守る人間とをピシッと分かれて?分けて?しまっている。
FW、もしくはトップ下のアタッカー陣の3人が点を獲る。
DFラインとGKは、守備を頑張る。
中盤の3人でさえ、攻守どちらかに役割の重きを持たされている。
守備のシーンでは、危なっかしいシーンのオンパレードです。
あわや!?というのが、毎試合繰り返されています。

 そして、走る量は少ない。
特に、アタッカー陣の3人は、少ないですね。
前線から、守備をして、後方を助けてあげる。
フリーランニングで、マーカーを外す、スペースに飛び出すことは限られている。

 つまり、攻守に係わる人数が少ないのです。
オシム監督の率いた、ジェフ千葉の正反対のスタイルだと考えればいいのでしょうか。
後ろから、どんどん人が湧き出るように飛び出してくる。
ボールを追い越す動きを頻繁に繰り返す。
スピードに乗って、相手を混乱に陥れる。
そんなシーンは、ACミランでは、見受けられないのです。
誰が攻めていくのか?サポーターでも、テレビからでも予測すら出来る。

 それでも、現在国内リーグで2位に浮上です。
失点はやや多くて、リーグ5番目の少なさ。
得点数は、なんとリーグ1位。 
日本サッカー協会なら、失格の烙印を押してしまいそうな試合運びしかしていない。
そんなチームなのに、結果はそれなりのものを残しているのです。


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 観ていて感じるのは、圧倒的な個の力。
それがあるものとして、チームを編成している。
チームの戦い方を、選択している。
そこに、要因があると考えます。

 何しろ、読まれてても関係ないのです。
カカーと、パト、ロナウジーニョ(シェフチェンコ、インザーギ)で攻めてくる。
しかも、目の前でボールを持って、そこから攻めていくことすら分かっている。
それが、はっきりと分かっていても、止めれない。
止めることが出来ない。

 相手の予測を、個の力、数人のコンビネーションで上回ってしまう。
それも、何回も必要ない。
1試合に、数回でいいのです。
たった数度の決定機をを決めてしまう。(1試合に平均1.7得点)

 それくらい、彼らのボールコントロール、フェイント、キック、シュートの能力はすさまじい。
普通、分かっていたら、そう簡単には、守備陣も許さないはずです。
守る側も、一流の選手、各国の代表選手ですからね。
その彼らさえも、上回ってしまう、圧倒的な個の力。

 さらに、最近ではベッカムが加わったのが大きいです。
顔に似合わず、攻守両面にわたって走り続けるのが彼のプレーです。
さらに、足元プレーに走りがちなブラジル人の持っていない武器がある。
一撃必殺の右足からのクロス、ロングフィードは、未だに世界のトップクラスでしたね。
ベッカムは、ACミランに欠けていた、大切なピースだったようです。



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 とは言えども、やはり彼らが、個の力を前面に押し出して、試合を運ぶのは同じです。
我々は、同じことをしようと思ったらどうでしょうか?
国内なら通用するかもしれない。
以前の浦和レッズにも、スタイルと言う面では通ずるものはあります。

 ただ、個の力を必要とします。
しかも、相手の予測や能力を、圧倒的に上回る必要があるのです。
日本国内なら出来るでしょう。
アジアに出て行くと?その時点でも難しいでしょう。
中東選手の運動能力、韓国・北朝鮮選手の激しさ・強さ。
それを上回れるのか?

 ましてや、世界レベルとなると、さらに厳しいですよね。
欧州組とは言いますが、やっと本場欧州で、認識されたかどうかのレベルです。
ACミランのアタッカー陣は、世界のトップトップの力を有している。
だからこそ、あの戦い方が可能になるのです。
それですら、一番になれるかと言えば、厳しいのが現実です。

 一つのアプローチの方法としては、面白いかもしれません。
アタッカー陣が気持ちよく能力を発揮するために、他のメンバーが下支えをする。
アタッカー陣も、それに応えようとする。

 チームが一番のスター。
この価値観だからなせるのでしょうね。
だから、実績も実力もある選手が、下支えもするし、ベンチに座っても不満を言わない。
彼らの中では、いいサイクルが出来上がっているのでしょう。


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 彼らの試合を観て、つまらない。
もしくは、頑張りが足らない、はつらつとしていない。
そう感じてしまう人も実際にいるでしょう。

 全員で守備して、全員で攻める。
それだけがサッカーでないのも、これまた事実なのです。
様々な試合、戦い方、価値観がぶつかり合うところに、フットボールの良さがある。
だからこそ、多種多様な人間が熱狂してしまうのでしょうね。
posted by プロコーチ at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月20日

多彩な攻撃と、パターン化した攻撃。

 多彩な攻撃にもメリットがあり、パターン化された攻撃にもメリットがある。
ゴールを奪うためには?
ゴール前に、パワーを持った良い状態で、繰り返し入ってくるためには?
この本質さえ外さなければ、どちらも正解といえるでしょう。


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 サッカー日本代表が2009年の活動を開始しました。
この時期に、オフ明け早々のこの時期。
公式戦が入るのは、つらいでしょう。
オフが短いと、シーズン終盤になって、息切れ、故障続発を誘発しやすくねる。

 あえて、メリットを探すならば、新戦力の発掘。
この台頭のためには、好都合だったかもしれませんね。
アジアカップを取っていないデメリットが、ここにもありました。

 もちろん、一番大きなデメリットは、コンフェデに出れないこと。
極東のアジアに位置する日本。
世界レベルのチームと、真剣な試合をする場は限られている。
しかも、日本を離れてとなると、さらに少なくなってしまう。
2010年に向けての、足かせにならなければいいのですが。


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 さて、話が飛んでしまいました。
その日本代表が、国内は鹿児島で合宿を張っていました。
調整のために、地元の大学生チームとトレーニングマッチ。

 正直、力には差があるでしょう。
いくら、鹿屋体育大学が強豪とはいえ、アマチュアチームです。
日本代表にとっては、勝って当たり前という、難しいモチベーションでの試合でしょう。

 ここで求められるのは、もちろん内容です。
トレーニングの成果を、いかに発揮するのか?!
通常の対戦相手に比べると、ゆるいプレッシャーです。
そこで、自分たちが主導権を握って、チームのスタイルを確立、確認する。

 対戦相手の、鹿屋体育大学の井上尚武監督が気になるコメントを出していました。
「若くて動ける人が入っているのはおもしろい。ああいう選手は脅威になる」
その後に、
「中盤にタメがつくれていない」
「ちょっとワンパターンでしたね」

 このコメントを聞いてどう思いますか?
特に、この「ワンパターンだった」の部分です。
単調な攻撃をしている。
国際試合では、通用しないだろう。
そんな印象を持ちませんか?

 攻撃の形、これが決まりきっている。
次、どうなるか、バレてしまうよ。
簡単に、DFに止められるのでは?
新聞などを見ていると、こんな論調です。

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 本当にそうでしょうか?
様々なスポーツで考えてみてください。

 柔道なら、どうでしょう。
背負い投げを究めて、金メダルまでたどり着いた選手。
鋭い内股を武器に、頂点をつかんだ選手。

 相撲の世界。
強烈な、突き押しを武器に、活躍した力士。
右差し、左の前みつを取って、攻め込んで行った横綱。

 野球ならどうでしょうか。
1番が塁に出て、2番が送る。
3・4・5番のクリーンナップで点を取る。
中盤を過ぎたら、セットアッパーに、押さえの切り札が出てくる、勝利の方程式。

 これらの形は、ワンパターンの典型ですよね。
ところが、この形が出てくれば来るほど、勝率は高まるのです。
どうすれば、自分たちの形に持ち込めるのか?
強い意識をここに持っているはずです。

 もちろん、対戦相手には研究されているでしょう。
だからといって、その形をそう簡単には変えたりはしないでしょう。
形を変えることよりも、自分たちの力を高める。
パターン化された、形をより高みを目指して追求していくのです。


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 フットボールでも、たくさんの事例があります。
10年ほど前のマンチェスターユナイテッドです。
彼らの攻撃は、これから何をするのかがよく解る。

 右サイドにボールが入れば、ベッカムが世界一のクロスボールを上げて来る。
少々ゴールから遠くても、お構いなし。
味方FWのタイミングに合わせて、最高のボールが、触れば入るようなボールが入る。

 左サイドでボールを持てば、ギッグスがドリブルを仕掛ける。
スピードに乗ったままのコースを変えてくるドリブルは、対応不能。
ゴールラインまでえぐって、マイナスのクロスが入る。

 味方は、彼らがボールを持ったら、走りこむだけで良い。
いつ、どこに走りこめばいいのか?
サポーターですら解っているほどでしょう。
もちろん、DFも必死に対応してます。
それでも、彼らは、パターン化された攻撃で得点を重ねました。

 DFが対応する、さらに上を行っている。
スピードにおいても、パワーにおいても、正確さにおいてもです。
だからこそ、相手にばれていても、崩すことが出来る。


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 他にも、例は幾らでもあります。
バルセロナが、サイドにめいいっぱい開いて、パスをつないでくる。
マラドーナがいたころのアルゼンチンなら、マラドーナが攻撃の全権を握っている。
アボンダンシエリがFW目掛けて、パントキックを蹴ってくる。
ジーコがスルーパスを狙っている。

 フットサルでもそうです。
シュートをファーに打ったら、それと同時に、ファーに一枚飛び込んできている。
ぐるぐると回るように動き出したら、ヘドンド(旋回)を始める。

 全て、解っているのです。
それでも、マークを外してしまう。
マークをはがされてしまう。
DFがやっつけられてしまう。

 ワンパターンだからダメなのではない。
それが通用しないのは、追求しきれていないから。
プレーの精度が、低いから。
解っていて、止められるレベルであることがダメなのです。
ばれていても、打ち破るほどに到達できれば、世界に通用するのです。


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 もしそれが無理ならば、多彩な攻撃を身につけるべきでしょう。
何をしてくるのか解らない。
変幻自在な、パスワーク。
即興性豊かで、予測不能な攻撃。

 本当かうそかは定かではありませんが、ペレには伝説があります。
…生涯、一度として、同じフェイントをしたことは無い
これが本当なら、すごいことですよね。
誰も、この後何が起こるのかが解らないのですから。
もし多彩な攻撃を武器にしたいなら、このペレの域まで多彩でないと。


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 多彩な攻撃にもメリットがあり、パターン化された攻撃にもメリットがある。
どちらかが正解なのではない。
それは、監督やチームの持つスタイルなのですから。

・ゴールを奪うためには?
・ゴール前に、パワーを持った良い状態で、繰り返し入ってくるためには?
この本質さえ外さなければ、どちらも正解といえるでしょう。
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2008年11月14日

タイミングをズラして。

 ガンバ大阪が、見事アジアNO.1の座を勝ち取りましたね!
日本でフットボールに携る者として、正直に嬉しいです。
何よりも、日本人が好きな試合を展開するチームの1つですよね。

 短いパスを丁寧につなぐ。
サイドの高い位置で、ドリブルを仕掛けていく。
個々の技術力の高さが感じられる集団です。

 そのテクニック集団の中でも、中盤に君臨する遠藤選手。
不必要なボールタッチは、ほとんどありません。
ワンタッチ、ツータッチでボールを動かしていきます。
全ての攻撃が、彼を経由していくのでは!?
そんな錯覚を覚えるほどの、存在感。

 全体がスムーズに行くように、ものすごく繊細に気をつかっています。
ピッチのあらゆる場所にボールを配球していく。
さながら、血液を全身に行き渡らせるように。
まるで、ガンバ大阪の心臓部のようにです。

 もちろん、対戦相手も分かっているのですが、なかなか止めることが出来ない。
ボールテクニック、視野の広さが際立っている。
シンプルかつ、相手DFの逆を取り続けていくのです。
彼にグッと寄せれば、パスやボールタッチで外される。
様子見でいれば、大きな展開やミドルシュートで局面そのものを変えてしまう。
フットボールの理解が、素晴らしく高い。
中盤の選手の、最高のお手本と言えます。


 さて、パスを出した後、止まってしまう。
「パス&ムーブ」「パス&ゴー」が出来ない。
これは、日本人選手の悪い特徴として、挙げられています。
パスを出しては、一回お休み。
足だけでなく、頭までも止まってしまているのではないか?!
オシム前監督は「走れ」「走れ」言い続けた。
私達の有する弱点の1つ。

 遠藤選手にも、しばしばそのような姿が見られるのです。
パスをつないだ後、ほとんど!動かずに止まっている。
そんな姿を目にしたこと、皆さんはありませんか。
フットボールの理解が高いはずなのに!!どうして?

 その疑問を氷解してくれるプレーがありました。
決勝戦の2NDレグの後半です。
右サイドに開いてボールを受けた、遠藤。
彼の目の前には、いっぱいに大きなスペースが広がっています。
ウイングや、サイドアタッカーなら、よだれの出るほど美味しいスペース。

 遠藤は、ほぼ真横(やや斜め前)の味方にパス。
ボールを受けた味方は、前を向いて、どこにでもパスを出せる状態。
にもかかわらず、遠藤はその場に留まり、とぼとぼと歩いています。
「目の前に美味しいスペースが広がっているのに!」
「ワン・ツーで簡単に右サイドを深くまで攻略できるのに!」

 とぼとぼ歩いている遠藤を見て、相手のDFは、ゴール前に戻りだしました。
「遠藤は怖くない、それよりもボールを持った選手をつぶさなくては」
そう考えたのでしょう、中央にしぽりながら、守備を固めることを選択しました。

 その次の瞬間です。
遠藤は、急激にランニングのスピードを上げたのです。
右サイドの前方に広がったスペースに向かって、仕掛けるフリーランニング。
見事なまでの、緩急を使った「だまし」です。

 中に絞っていた相手DFは慌てて対応に行くも、間に合うわけも無く・・・。
遠藤は、フリーでリターンパスを受け、ワン・ツーパスを成功させました。
惜しくもゴールにはなりませんでした。
しかし、完全にサイドを攻略して、決定的な形を作ったのです。
たった、一人の気の利いたランニングで。

 遠藤はわざと、とぼとぼとしたムーブを見せたのです。
DFの気を他に向けるためにです。
足は止まっても、頭は全く止まっていない証拠ですよね。
様々な次のプレーを考えていたのでしょう。
高性能のコンピューター並みに、計算を繰り返していたに違いありません。

 パスや、ドリブルで相手の逆を取る。
相手の変化を観て、プレーを変えていく。
ボールを持った状態では、誰もがその工夫をするでしょう。
その1つが、タイミングを外す、ずらすキックやボールタッチです。
彼は、ボールを持っていない時でさえ、相手の逆を取ってしまうのです。
ボールを持っていないのに、相手DFを走らせてしまう。
真似をしようとしても、なかなか難しいでしょうね。


 ガンバ大阪の攻撃的なスタイルは有名です。
その中心で、圧倒的な存在感を示す、遠藤。
めぐり合わせの不思議か、世界レベルの大会でお披露目していないのです。
今回のオリンピックも、前回のオリンピックも。
なぜか、ドイツワールドカップでも1人だけ出場していない。
これだけの能力の高さ、存在感がある選手なのに!!

 
 ガンバ大阪の心配事はただ1つ。
もし、遠藤が完璧に抑えられたら!?
遠藤が試合に出られなければ!?
チームと言うよりも、遠藤個人のサッカーのビジョンに頼っている。
その部分は、否定できないはずです。
彼の代わりは、他の誰であっても不可能でしょう。

 関西の、日本のローカルスターに留まっている遠藤。
彼の能力をもってすれば、世界にも通用するのでは?
是非とも、世界のトップレベルの中でプレーする姿を見てみたい。
彼のビジョンや、テクニックが通用しないならば、他の誰が通用するのか。
クラブワールドカップでの活躍が、今から楽しみですよね。


posted by プロコーチ at 17:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月09日

ゴールはどこで生まれるのか?

 遠くから突き刺さった、ミドルシュート。
強く記憶に焼きつきますよね。
バーレーン戦での中村俊輔選手のFKからのゴール。
中村憲剛選手のミドルシュート。
豪快に決まったシュートは、スカッと気持ちいいものです。

 今回のバーレーン戦では、3分の2。
つまり、66%がペナルティエリア外からのシュートでした。

 
 このミドルシュートを統計的に見ると、どうなのでしょうか?
ワールドカップなどの国際試合では、約20%にしか過ぎないのです。
新しく開発され、ミドルシュートを助けてくれたボールの力を借りた、ドイツワールドカップ。
この大会でも、たったの17%。
日韓大会だと、15%までに減少します。

 つまり、得点の8割以上は、ペナルティエリア内からのシュート。
この事実は、比較的有名ですので、ご存知の方も多いですよね。


 さらに、得点における、セットプレーの割合。
これは、おおよそ20〜30%が平均値でしょうか。
ドイツワールドカップだと、33%。
過去のワールドカップだと軒並み30数%です。
この前のユーロだと、約20%と少なめ。

 現在の岡田監督率いる日本代表は、なんと50%。
オシム監督の時代でも40%でした。
今回の試合に限ると、3点中2点。
66%がセットプレーからのゴール。

 さて、こうやって数字を並べてみると、今の日本代表の課題が簡単に分かりますよね。

セットプレーをゴールに結びつける力はある。
これは、いいキッカー、そしてチームの準備。
この2つを揃えているということ。
賞賛こそすれ、否定されるものではないです。

 残念ながら、流れの中で、ゴールを奪うことが出来ない。
これはあくまで結果。
結果のみを振り回しても、なんの解決にはなりませんよね。


 原因として考えられるのは
ペナルティエリアにどれだけ進入することができたのか?
しかも、ボールと1人だけでは可能性が低くなってしまう。
ボールと共に、3人4人と勢いを持って飛びこんできて欲しい。

 もちろん、1人でも決めてしまう。
圧倒的な能力を持った選手はいるでしょう。
ベルディなどに在籍していた、フッキ選手。
彼は、1人でボールを持ちこみ、そのままゴールを奪っていました。

 残念ながら、そういったタイプの選手は、日本代表にはいません。
そこまでの圧倒的な能力を兼ね備えた選手も、残念ながら育ちにくいでしょう。
だとしたら、チームとして可能性を高めていく必要があるでしょう。

 つまり、複数の選手がゴール前に入っていくことで、相手のGK・DFに的を絞らせない。
こぼれダマを拾える場所を増やす。
可能性を選択肢と言い替えること出来ますよね。

 前回のブログにも同じことを書きました。
バーレーン戦で数えてみました。
何回、複数の人間がボールと共にペナルティエリアに入れたのか?
前後半それぞれ4回ずつしか数えれませんでした。


 ただし、改善の芽を見つけることが出来ました。
得点にこそ至りませんでしたが、後半30分のシーン。
2トップがゴール前に迫ります。
ただし、その2人しか関われていません。
単発な攻撃に終わりそうだった、相手ゴール前。
こぼれダマを、案の定相手DFに拾われました。

 その瞬間、中盤の長谷部選手が素早い守からの攻への切り換えを見せます。
パネルティエリアでボールを持った相手に襲いかかり、奪い取りました。
そのまま、ゴールへ向かい、至近距離からのシュート。
ゴールはバーに直撃。
こぼれダマを今度は田中選手が拾って、シュート。
残念ながら、またもやバーに直撃して、チャンスを逃してしまいました。

 この瞬間、ペナルティエリアの中には、4人の選手が入っていました。
思いきって人数をかけているから、こぼれダマを拾って、分厚い攻撃ができた。
そして、得点の可能性の高い場所で、シュートを打つことも出来たのです。
これが入るか入らないかは、個人の資質の問題。

 
 ところが、その瞬間に、そこに人がいないのは、チームの抱える課題といえるでしょう。
個人の戦術眼や頑張りに頼っていては、限界があります。
チームとして取り組むからこそ、必然的にその場所に人が飛び込んでくるのです。

同じようなシーンでしたが、後半の13分。
この時は、スローインから玉田選手の個人技でシュートまで持ちこみました。
が、こぼれダマを拾う人間も、飛び込んでくる人間もいませんでした。
可能性も、選択肢もほかに無いのです。

今の試合の状態を観ると、まだまだ偶然性と、個人の資質に頼る部分が大きいようですね。


 得点を奪いたいなら、ペナルティエリアに侵入すること。
そこへ、ボールと同時に複数の人間が飛び込んでくること。
我々は、パワーを持って飛びこんでくると表現しています。
立ち止まっていて、ゴールを決めれるほど、余裕はありませんよね。


 さらに追記があります。
単にペナルティエリアと書いていますが、もちろんその中でも得点がさらに生まれやすい場所があります。
ゴールの幅(7.32M)×ペナルティマークまでの範囲。
つまり、ゴールのまん前、至近距離の場所。
ここでのシュートが、全体の60%以上を占めているのです。

 試合を思い出してみてください。
日本代表は、どこからシュートを打っていましたか?
流れの中で点を取るためには、この美味しい場所に入ること。
そして、タイミング良くボールを送り込むこと。

この2つが欠如しているようですよ。
          
posted by プロコーチ at 21:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月29日

パス、その3。発想の転換

 SFや歴史物を中心に1000を超える作品を執筆した、星新一。
本人が亡くなった今も、なお人気だそうです。
「ショートショートの神様」星新一

 小説などと比べ、格段に短い短編集。
私個人のイメージとしては、未来を描いた「日本昔話」。
とっつきやすく、短時間で読める。
難しい漢字は使っていないのです。

 
 確か、小学校の国語の教科書に掲載されていたのが、私自身初めての出会いでした。
それ以来、完璧にはまってしまいました。
学校や、街の図書館にあるだけ全ての星新一のショートショートを読み漁りました。

 でも、ものすごく奥が深い。
決して、子供だましの短編集ではない。
大人になった今、引っ張り出して読んでも、充分な読み応え。
何十年も経っているのに、時代遅れの感じがしない。
 
 皆さんもお時間があれば、一度改めて読んでみて下さい。
ものの数分もあれば、ひとつのショートショートは、完結します。
その面白さ、奥深さ、斬新さ、皮肉の詰まったジョーク、あっと驚かされる展開・・・。
たくさんの感銘を受けることが出来るはずです。


 そんな星新一。
何よりも、目の付け所が明らかに他人と違う。
お話の前提からして、不思議なことが多々ありました。
発想の転換とでも言うのでしょうか。

以前これの発想のユニークさについて、こんな言葉が残っているのが紹介されていました。

 「南極物語」にもなった、タロとジロの物語。
南極観測隊に置き去りにされた、彼ら兄弟犬。
自力で、約1年間生き延び、感動物語として紹介されました。
ペンギンやアザラシを捕まえ、寒さに耐え忍んで、生き延びた。
映画にもなり、私もジンと感動した1人でした。

 ところが星新一は、感動物語としては見ていませんでした。
この事件は人間側から見れば美談。
が、ペンギンやアザラシの立場から見れば、そうではない。
ペンギンやアザラシの気持ちになってみると?
獰猛な肉食動物を人間が置いていった為に大被害を受けたという悲劇ではないか?!


 イタリア代表であり、セリエA、ACミランに所属するピルロ選手。
当代きってのプレーメーカーとされている彼。
彼のインタビューが、掲載されていました。

・・・ゲームの中で何を考えてプレーするのか?
「論理性と非論理性」
論理性・・・システムやセオリーに従ったプレー。
非論理性・・・フィールドに出すべき答えを見出すプレー。

非論理性を裏付けるのは、本能。
自分が感じたままにプレーする。
わざと、平凡なパスを出す。
間違った場所と知りつつ、パスを出す。
全ては、次に起こるより決定的な場面のために。

 組み立てが、単調になることを避けるためにだそうです。
曰く、全ての攻めのアクションがゴールに結びつくなんてあり得ない。
だから、全てのゲームメイクを完結させる必要はない!

 言ってしまえば、わざとミスパスをする。
わざと怖さの無い、ありきたりのプレーをする。
無理をすれば、いいパスが出せるかもしれない。
が、ここは平凡な横パスをとりあえず、出してみる。

 すると何が起こるのか?
どんな現象が、変化が起こるのか?
相手DFに油断が生まれるのです。
(こいつは、怖くない。)対面した相手DFにそう思わせる。

 すると、次にピルロがプレーする時にも、相手DFには油断が見られるかもしれない。
平凡なプレーの残像が残り、相手DFの出足をわずかでも遅らせれる。
その瞬間をピルロは見逃さない。
ズバッと決定的な縦パスを通してしまう。

 スピードが無い。
身体もそれほど大きくない。
そんな彼が、当たりの激しいトップリーグのセリエAで長年プレーしている。
さらには、ワールドカップにチャンピオンリーグに活躍を見せる。
その秘密の1つは、この駆け引きの巧みさが上げられるのではないでしょうか。

 ピルロが、試合の中でタイミングを読み誤ることはない。
育成のユース年代から、コーチにそのように言われていました。
彼自身、相手DFのイメージを外した、スペースやタイミングを見つけるのは得意のようです。

 書くのは簡単です。
いざ、このプレーを実行しようとなると、ものすごく難易度が高い。
トラップ、キックの正確さ。
そして先を読む、目・感性。
プレーのビジョンとも言えます。
おそろしく、プレーヤーとしての完成度が高くないと、不可能なプレー。

 
 そして、このピルロのプレーを許して、活かそうとするコーチの存在も必要でしょう。
わざと、ミスをすることを許すことができるのか?
そもそも、そのプレーの意図を、コーチや周りのプレーヤーが理解し感ずることが出来るのか?

 
 ピルロが起こす、発想の転換。
そういった目で、もう一度彼の試合を観てみたいと思います。
どこで、わざと相手DFをだまそうとしているのか?
どんなエサを捲いて、いつどこで喰いつかそうとしているのか?

 わざとミスをする、平凡なパスをするという、発想の転換。
それは失敗を積み重ね、ようやく身につけたもの。
彼は、過ちを犯した状況を鮮明に覚えているそうです。
データベースされているからこそ、同じ過ちは起こさないそうです。
クリエイティブなプレーの影には、たくさんの良い失敗と、トレーニングが隠れている。

 20代前半時には、試合に出れない日が続きました。
その苦悩の日々が、今の彼をさらに高めたのでしょうね。
プレーのビジョンを考えに考えた。
トレーニングに、トレーニングを重ねた。
そして、自分のポジションを勝ち取ったピルロ選手。

 彼のいなかった、ユーロの準々決勝イタリア対スペイン。
優勝したスペイン代表に負けることも、失点することも無かったイタリア代表。
ピルロは、残念ながら出場停止でした。
彼さえいれば、違った展開になっていたのかもしれませんよね。



 
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2008年07月18日

パススピード、その2

 ユーロ、サッカー欧州選手権。
人によっては、ワールドカップよりもレベルが高いとも言います。
フットボールのトップシーンであることは、間違いなかったです。

一番感じたのは、スピード感とダイナミズム。
常にパス&ムーブを繰り返していく。
サイドを駆け上がっていく。
ボールを奪って、一気にカウンターアタック。
観る者を圧倒する、圧倒的な迫力。

 スタンドででも、テレビの画面を観ても伝わってきました。
ここにはフットボールの全てがある!
そう思わせるほどの魅力がありました。

 ところが、フットボールはまだまだ奥が深い。
私の浅はかな考えなど、吹き飛んでしまう。
南米のクラブチームのNO1を決める、リベルタドーレス杯。
テレビ観戦をしていました。

 トップ中のトップの選手は、数えるほどしかいません。
経営基盤の弱い南米のクラブは、すぐに選手をヨーロッパに売ってしまいます。
その移籍金で成り立っている部分もあるでしょうから、仕方が無いのですが。
それでも、次から次へと新しいタレントが生まれてくるのは、南米の凄さでしょうね。

 私の不勉強のせいなのですが、全く名前の知らなかった選手ばかりのチームもあります。
そうかといって、魅力の無い試合かと言えば、そうではありませんでした。
特に、ユーロでも見ることの出来なかったものを再発見。
私にとっては、大きな幸せでした。

 その1つは、パスのテンポ。
ゆっくりのパス。
数M先への、すぐ近くの選手へのパス。
わざと浮かせた近距離のパス。
様々なパスを駆使して、ボールをつないでいきます。

 これらのパスには、様々な意図が隠されています。
いわゆる、メッセージを込めたパスと呼ばれるものです。
パスを受ける味方に対するメッセージ。
周りの選手に向けたメッセージ。

 例えば、弱くゆっくりなパス。
教科書的に言えば、ダメ!と言われてしまうパスです。
弱いパスだと、受け手の所へのプレッシャーが厳しくなってしまう。
そして、受け手がボールを奪われたり、いい判断が出来なくなってしまうからです。
そういった味方をつぶしてしまうような弱いパス。

昔はこれを「ホスピタルパス」と呼んでいました。
・・・味方を病院送りにしてしまうパスとして、コーチングで改善を促す部分です。

 ところが彼らは、わざと弱弱しいパスを出すのです。
それは、なぜか?
弱いパスを出すことで、そこに相手DFを引き付ける。
「ボールを奪うチャンスだ!」「寄せろ!!」
DFは、このように考えるでしょう。

加えて、相手DF、特に最終ラインを油断させるのです。
「あいつらは、まだ攻めてこないな」
「中盤でボールを奪わせるぞ」

そう、ただパスをつないでゴールを目指すだけではない。
パスの強弱も駆使して、相手との駆け引きをしながら、プレーを選択しているのです。

もちろん、この駆け引きがいつも、ハマル訳ではありません。
簡単に奪われたり、味方が寄せられて窮している場面も、数多くあるのです。
それでも彼らは、パスへの様々なメッセージを込めて、駆け引きし続けるのです。

・相手に奪われない、ぎりぎりの弱いパス。
・味方がワンタッチで相手DFと入れ違えるための弱いパス。 
・中盤でわざとゆったりとつないで油断させると、一気に最前線へ。
・わざとゆっくりの展開にして、試合を落ち着かせる。

 一概には言えませんが、ユーロの試合では、こういった場面は少なかったように感じました。
確かにパススピードは強い。
あっという間に、前線までボールがつながっていく。
サイドチェンジのボールの質は、高い。

 それでも、パスの強弱は単調。
特に、リベルタドーレス杯でのプレーに比べると、意図した弱いパスが少なかった。

 優勝したスペインのパス回しは確かに素晴らしい。
主導権を握ってボールを動かしながらの攻撃は、勇気も技術も必要。
オランダやドイツを始めとするチームのキック。
音からして、違いました。
ただし、スペインの中で意図した弱いパスを出していたのは、一人。
マルコス・セナぐらいでした。
彼も、ブラジル生まれのスペイン人ですよね。
posted by プロコーチ at 18:30| Comment(1) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月30日

親知らずの位置

歯。
人体の組織で、最も硬い性質を持っている。
成人なら、通常28本が生えている。

一番の仕事は、食べ物を噛んで、細かくすること。
硬い歯が、大きな物をすりつぶす。
この咀嚼によって、消化を楽に助けている。

私は生まれて初めて、抜歯しました。
抜いたのは、29本目の歯。
「親知らず」です。

後から生えてくるためこう呼ばれている、親知らず。
無理やり生えてくるためか、歯ブラシでは磨きにくい。
私の親知らずは、虫歯になってしまっていました。

痛みは無かったのですが、歯医者さんの判断で抜歯。
抜くのに掛かった時間は、ほんの数分。
麻酔をして、何かの器具を使いながらの作業。
押し付けれているようなプレッシャーは感じたものの、あっという間の出来事でした。

大変なのは、その後です。
血はなかなか止まりません。
麻酔が切れてくると、痛みを少しずつ出ています。
さらには、身体が若干熱っぽく、だるさすら感じます。

役に立っていなかった親知らず。
歯の本来持っている役割を果たしていなかったのでしょう。
抜歯され、生涯を終えてしまいました。


 フットボールの試合。
たった一つのポジショニングのミス。
これが全体のバランスを崩す。
大きな堤防が、アリの一穴から崩れるように。
親知らずの抜歯から、身体のバランスが崩れるように。


ポジショニングのミスにも幾つか種類があるはずです。
・何が起こっているのか現象に気づいていない。
(観えていないために起こるミス)
・何をすべきなのか、判断を誤ってしまった。
(判断ミス)
・体力、気持ちが足らず走れなかった。
(実行時に起こるミス)

日本では、ポジショニングのミスに寛容に思えてなりません。
ボールコントロールのミスやシュートミス。
ドリブルで抜かれる。
ボールが絡んだミスに対しては、声を大にしますよね。
この種のミスに対しては、鬼の首を取ったかのように振舞うのに。
全く不思議でありません。
声をあげないのは、気づいていないからなのでしょうか?

 ポジショニングのミスをしないためには、まずよく観ること。
今、どんな現象が起こっているのか?
これから何が起きるのか?
両チームの選手のポジショニング(スペースも含む)を観てみます。
そうすれば、ある程度の予想がつくはずです。

 反対の言い方をします。
何かの現象を起こそうとする。
そのためには、そのためのポジショニングが必要になってくる。
正しい位置取りが出来ていなければ、当然その現象は起こせない。
(分かりやすく言えば、ゴール前にいなければ、シュートを打つことは難しい)
(パスにしても、ドリブルにしても、ディフェンスにしても同じです)

 今、ナショナルトレセンなどで強く発信しているキーファクターの1つ。
「常に関わる」
攻撃の時でも、守備の時でも。
常にプレーに関わっていく。
休憩時間は試合中には無い。

 例え足は止まっていても、頭を休める瞬間があってはならない。
今、何が起きているのか?
次、何が起きているのか?
自分は、今に、次に、次の次に関われているのか?

 常に、常に、ピッチ上での自分の仕事を探しながらプレーをする。
そうすれば、どんなポジショニングをとるべきなのか。
ここに考えが及んでいくはずです。
ボールを後から追いかけていては、絶対に考えつかない。

 抜歯された、親知らずになってはいませんか?
関わることが出来ず、合っても無くてもいい存在。
posted by プロコーチ at 23:46| Comment(1) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月25日

3対4対5

  ○          ○          ○ 


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


        ●          ●



              ●


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

◎                          ◎

         ◎         ◎



              
              GK





FCバルセロナのポジション配置図。
1−4−3−3を基本とするフォーメーションです。
ヨハン・クライフを始めとして、オランダの影響を色濃く受けています。
選手・監督・コーチ。
例を挙げれば限りないほど、多くのオランダ人が今なおバルセロナで活躍しています。

このフォーメーションの特徴は幾つかあります。
・トライアングル(三角形)が自然に数多く形成されている。
・サイドに専門の人間を配置しやすいこと。
(ウイングプレーヤー、サイドバック)

つまり、このフォーメーションを使用する意図が見えてきます。
トライアングルを活かして、パスをつないでいく。
1人、2人の関係では、点であり、線でしかない関係。
これが3人のトライアングルが形成できれば、面になりとたんに安定し得る。
この安定したポジショニングを活かしてパスをつなぎ、ボールポゼッションを高める。
その結果、攻撃の主導権を握ろうとする。

さらに、サイドで勝負をする。
攻撃の主導権を握れば、相手守備陣はどうなるか?
ゴール前に人数を割いて閉じこもり、「亀」のようになる。
そこを無理にこじ開けるのは、以下にタレント揃いの攻撃陣でも厳しい。
そこでポイントになるのは、サイド!
比較的空いているサイドを使って攻撃、フィニッシュまで持ち込もうとする。


このように書くと、良いことばかりのフォーメーションに感じます。
分かりやすい欠陥があります。
1−4−「3」−3。・・・・FCバルセロナ)
1−4−「5」−1。(1−4−2−3−1)スペインで多用されるフォーメーション
1−4−「4」−2.・・・・イングランドで多用されるフォーメーション

「 」の中の人数が中盤の枚数です。
3対5。(対スペインのクラブチーム)
3対4。(対イングランドのクラブチーム)
そう、常に中盤の枚数で少ない状態になっているのです。

ところが、バルセロナはそんなことを感じさせません。
彼らの試合を観ていても、中盤の人数不足には陥っていませんよね。
決して、ドリブルなどの個人技だけに頼っているわけではありません。
単純なことです。
中盤のエリアの枚数を増やすのです。
両サイドバックが高い位置に上がっていく。

  ○          ○          ○ 


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        ●          ●



              ●
◎                            ◎

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         ◎         ◎



              
              GK

こうすれば、中盤のエリアは5人に。
一気に数的不利は解消されます。
少なくとも、同数にはなりますよね。
それでも足りなければ?
例えば、相手中盤エリアの守備が厳しい。
そうなると、FWが下がります。
さらに、枚数を増やすのです。


                     ○ 


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
              ○

        ●          ●



              ●
◎                            ◎
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

                            

         ◎         ◎



              
              GK



こうやって、中盤を制圧。
ボールの保有率(時間)を上げていくのです・・・・ボールポゼッション。

もちろん、このことによる大きなリスクが2つあります。

・ボールを奪われたら、最終ラインには2人しかいない。

このリスクを回避するために、さらにボールをポゼッションしていきます。
ボールを奪われないから、最終ラインの枚数が少なくてもピンチは少ない。
守備の枚数を増やすのと言う、消極的な方法ではない。
ボールをポゼッションし続け、攻めることによってリスクを回避する。
ボールを奪われないから、サイドバックも自信を持って高い位置でプレーが出来る。

・ゴール前の枚数が少なくなる恐れがある。

瞬間的に、ゴール前の枚数が少なくなるでしょう。
当たり前ですよね。
下がってきて、中盤でプレーしているのですから。
このリスクも、ボールポゼッションが解決してくれます。
味方がパスを回している間に、中盤やサイドバックの選手がゴール前に!
ボールをポゼッションして、後ろから飛び出していく時間を作っているのです。
試合を観ていると、後ろの選手が決定的な場面に顔を出すシーンの多いこと!!


よく、1−4−3−3だから、「中盤が苦しい。」「枚数が足りない。」
また、1−3−5−2だと、「サイドの枚数が少なく、薄い。」
そんな話を耳にします。
本当にそうでしょうか?

フォーメーションは、始めの立ち位置、スタートポジションにしか過ぎません。
もちろん、特性はあります。
大切なことは、人を並べ、配置することではない。
それは、単なる始まり。
そこから、どのような考え方を持って、どんな約束事を作り、実行していくのか。


また、FCバルセロナの工夫も、全てではありません。
1つのやり方、つまり1つのシステムにしか過ぎないはずです。
チャンピオンズリーグのセミファイナルに残った4チーム。
それぞれ、全く異なるシステムで戦っていました。

チーム(クラブ)として、どんな哲学を持っているのか?
そして、優先順位をどうするのか?
全てのチームが、それぞれのシステムを構築していくべき。
それは、たとえどんなレベルであっても。
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2008年03月21日

スペシャリストとは。

俺の仕事は、点を取ること!!
私は、タッチライン際で、ドリブル突破をしてクロスを上げるのが自分の能力。
中盤で相手のキーマンを押さえ込むのが得意。
最終ラインを統率するのは誰にも負けない。

各ポジションのスペシャリストと呼ばれる選手たち。
日本では、少数派かもしれない。
特に攻撃の部分では、その傾向にあるといえるでしょう。
そもそも、自分の武器をアピールするのが上手くない。
それは、プレーでも、言葉ででもそうです。

使う側の監督との相性も問題にあがります。
「我が強い」
「協調性が無い」
「使いづらい」
相性の悪い監督との出会いで、選手生命が短くなる。
そんなこともよく聞く話です。


フットボールの選手は、個人事業主のはず。
だとすれば、自分のウリをアピールしてなんぼ。
自分のウリを伸ばしていくのが、成長。
例えば、なんの特長も無い飲食店。
そんな店に誰が興味を示すでしょうか?
ところが、嫌われる、外されるのを極端に怖がっている。
自分の特色を出すことよりも、周りに合わせることを選びがち。


我々指導者も、ミスの無い選手=いい選手として育てているのでは。
ミスの無い選手は、単に使い勝手がいい選手です。
際立つ特長は無いけど、様々な役割をそれなりにこなせる選手。
これもまた、使い勝手のいい選手でしょう。
そんな選手たちをポジションに当てはめて、毒にも薬にもならない試合を行なう。


 では、様々なポジションを高いレベルでこなす選手。
こんなプレーヤーを、ユーティリティープレーヤーと呼ばれます。
最近の流行で言うと、ポリバレントなプレーヤーと呼べばよいのでしょうか。
彼らをどう考えればいいのでしょうか。

フットボールの試合のレベルによっても話が変わってくるでしょう。
そのレベルが上がれば上がるほど、ユーティリティー性を発揮するのは難しくなっていきます。
それほどレベルの高くない試合でしたら、様々なポジションである程度のプレーをする。
そこまで難しいことではないでしょう。
世界一の右サイドバックとうたわれたブラジル代表ジョルジーニョ選手。
鹿島アントラーズでは、中盤の下がり目の選手として大活躍していましたよね。

 ユーティリティー。
これを考えるために、ある本の記述を引用させてもらいます。
「元オランダ・韓国・オーストラリア代表ヒディング監督の言葉です。
 「「選手選考をする上で重視したのはユーティリティー性だ。
   同じ技量なら、複数のポジションをこなせる選手を優先した。
   メンバーチェンジの幅が広がれば、采配の選択肢はおのずと増える。」」
そしてこの本では、ユーティリティープレーヤーの素晴らしさを紹介しています。
布陣が選手を育てるということのようです。

 オランダ代表はクライフ選手の活躍した70年代以降、攻撃的フットボールの代名詞。
そして、ポジションチェンジが1つの特徴になっています。
「理想のフットボールは、ポジションがないかのようにプレーすること」
オランダ代表の試合を観て、このように語る識者すらいます。


 これについて、サッカーライターの西部さんは、私にこのように語りました。
「クライフやオシムのスタイルはポジションが無いことではない。
 様々なポジションで全く変わりなくプレーできる選手の集まりでもない。
 1試合に数回、違ったポジションでプレーすることが求められる。
 例えば、DFが上がっていったときに、攻撃の選手の役割。
 後ろに残ったFWが守備で応対する。
 その時に、代わりが務まればいいのではないか。
 オシムの言うポリバレントは、それを求めていた。」

 
 ここまで読まれてどう思いましたか?

 
 様々なポジションで変わりなく能力を発揮する。
これもまた、1つのスペシャリスト。
つまり、1つの才能であり特長。
全員に求めるべきものではないのではないか。

 では求めるべきは、何か?
それぞれの持つ際立った才能であり、特長。
高いレベルの才能が、1つの塊になって機能する。
そんなチームは魅力的だと思いませんか?


 ただし育成、つまり未完成の段階でおいて様々なポジションをすることは別。
これは、将来を見据えて必要なことだと私は考えています。
様々なポジションでのプレーが自分の可能性を広げるに違いない。
将来、例えば生粋のストライカーになった時に、DFのトレーニングをしたことが生きる。
相手DFの気持ちを想像できる助けになるでしょう。
逆もまたしかりですよね。

あなたや、あなたの好きな選手はスペシャリストですか?
それともユーティリティーのスペシャリストですか?

posted by プロコーチ at 23:55| Comment(1) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月11日

フットサルの崩し

今年もJリーグが開幕しました。
海の向こうでは、チャンピオンズリーグや各国のリーグ戦も熱く佳境に差し迫っています。
そして、フットサルも全日本選手権が行なわれました。
たくさんの試合を追いかけるのは、楽しいですよね。
なかなか現場には行けないので、テレビを通しての観戦になってしまうのは残念ですが。

日本のチームは、決定力不足とよく言われます。
日本代表のチームもずーーっと言われ続けています。
各チームも、日本人のストライカーがなかなか出てこなくてブラジル人を始めとする外国人に頼っている。
この部分を解消するためには!?
永遠の命題ともいえるのではないでしょうか。

この話題でよく議論されるのが、ストライカーの育成方法。
日本人は周りとの協調を第一とされるので、良い意味でのわがままな選手が育ってこない。
「他の誰でもない俺が決める!!」
このメンタルの欠如。

さらには、ゴール前での技術。
リフティングの小技や、フェイントの種類ばかりが技術だと錯覚されている部分がある今日。
シンプルに止めて、相手より一瞬早くシュートを打つ。
GKの手の届かない部分に決める。
狭いスペースでのボールコントロール。

この自分でゴールに向かう強い気持ち。
ゴールから逆算してプレーを組み立てる。
そして、それを可能にするボールコントロールの技術。
この2つを高めていく事が、得点力不足の解消につながる。
私は、そう考えています。


さらに、チームで取り組むべき事があるはず。
そのヒントは、フットサルにありました。
フットサルの試合では、レベルが上がっていくと、個人技を発揮する余裕が無くなっていきます。
時間もスペースも無い、狭いコート。

さらにゴール前ではこの傾向は顕著。
そこでシュートまで持ちこむためにはどうすればいいのか?
ドリブルだけでは崩せない。
パスだけでも崩せない。
その組み合わせ。

さらには、ボールを持っているプレーヤーが止まらない。
「足元で、ボールをくれ。
 後は個人技で何とかする。」
これとは対極の考え方。
ボールを動かす中で、相手の穴を見つける作業。

スタートポジションのままでは、相手DFもマークを捕まえやすい。
いくら能力が高くスピードがあっても、目の前で立ち止まっている選手の怖さは半減。
それでは、崩せない事が頭に染みついているのがフットサルのプレーヤー。

ここでのポイントの1つは、ポジションチェンジを取り入れること。
センターからサイドへ流れる。
そこに新たな選手が、センターに入ってくる。
もちろん、前後でのポジションチェンジもありますよね。

ここでのメリットは、自分自身がマークを外せる可能性が高くなる事。
フリーランニングをする事で、相手のDFから逃げれるかもしれない。
もしマークを外す事が出きれば、そのままボールを受けとって、ゴールを目指す。

マークを外せなくても、相手との駆け引きの先手を取れるかもしれない。
自分に合わせて相手が動いてくれれば。
相手は、自分の動きによって動かされているということ。
一瞬でも先手を取れば、ボールを受けてからの勝負で有利に働くのは間違い無いです。

もう1つのメリットは、自分の元々いた場所がフリーなスペースになること。
相手DFを引き連れていければ、その場所には誰もいなくなる。
たとえ一瞬かもしれないけど、その場所はゴール前の美味しいスペース。

自分は厳しくマークされているので、ボールは受けれない。
だとしても、味方のためにスペースを作る事が出きる。
ポイントは、意識があるかどうか。
自分は今、スペースを作るために走っている。
その意識があれば、味方との共有が出来やすくなるはずです。


ここまで長々と書きましたが、何一つ新しい事はありませんよね。
でも、サッカーのゴール前では停滞してる事がよくよくあります。
特に、押し込み攻めこみ続けているチームで観られます。
DFの前で無理やり、シュート。
相手も無いスペースにパスを出して引っ掛かる。
観ていて、残念な気持ちになります。

フットサルの試合を観ると、このアイデアもたくさん出てくるのに。
ゴール前での狭いエリア。
ここでの崩しは、フットサルに敵わない。

技術にアイデア。
勉強する事は、山のように。
posted by プロコーチ at 19:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月11日

わざと負けることが許されるのか?

今、フットボールのワールドカップが2つ開催されています。
1つは、中国で開催した女子ワールドカップ。
今日いよいよ開幕戦です。
残念ながら注目度は、余り高く無いようです。
男子よりも、世界のトップには近い位置にいるようなのですが・・。(FIFAランキング10位)
展開している試合も、大橋監督の元で鍛え上げられた好チーム。
日本人の長所を前面に押し出しての戦いを目指しています。
男子の試合やチームと比べてみると、スピードやパワーは物足りないかもしれない。
ただし、戦術的な行動をとる力は、女子の方が上回っているかもしれない。
つまり、監督やチームの意図がピッチ上ではっきりと表現されているとも言えます。
是非、時間を見つけて応援しましょう。

もう1つのワールドカップは、主としてフランスで開催されているラグビーのワールドカップ。
日本代表は、第1回のワールドカップから参戦しており、今回で6回連続の出場。
残念ながら、世界の壁は高く日本の前にそびえ立ち、91年に上げた1勝が唯一の勝利。
そんな日本代表を率いるのは、ジョン・カーワンヘッドコーチ。
http://futebol.seesaa.net/article/39957335.html
現役時代は、祖国ニュージーランドの伝説的な英雄として活躍。
キャリアの終盤には、日本でもプレー経験があります。
ジーコ元監督と、重なるところがありませんか?!
そんな彼が、日本代表をどこまで導いてくれるのか楽しみです。
なにしろ、宮本武蔵を愛し、ジャパニーズスタイルのラグビーを展開すると断言していますからね。

さて、ジーコ、カーワン2人の英雄。
2人の大きな違いは、日本代表になる以前の監督経験。
カーワーンコーチは、イタリアで代表監督の経験があります。
その経験を生かして、今回のワールドカップに臨んでいるようです。
そんな彼が、取っている戦略は、我々日本人にとっては驚きのもの。
なんと、チームを二つに分け、ワールドカップに臨む。
初戦と2試合めの間隔が三日間と短く、充分なリフレッシュが望めない。
初戦は優勝候補のオーストラリア(前回準優勝)。
ここには、2軍(チーム・オーストラリア)をぶつける。
戦う前から、既に敗戦を覚悟したメンバー構成。
一方勝てそうな2試合めのフィジー戦に、ベストメンバー(チーム・フィジー)を持ってくる。
それを、1ヶ月前から選手たちにも告げているというのです。
ここまで極端なターンオーバーはなかなかありません。
しかもこれを、ワールドカップの本戦で実行するのですから。

結果、初戦は予定通り?2軍チームの敗戦。
スコアは3−91(前半3−23)です。
内容は、明らかなレベル差をまざまざと見せ付けられるものでした。
正直、日本のベストメンバーが出てきても敗れていたでしょう。
ここまでは、開幕前に立てた戦略通り。
とはいえ、心情的に許せない部分もあるでしょう。
・どんな試合でも、持ち得る全てをぶつけて行く必要があるのではないか?
・2軍扱いされた選手は、国内ではトップレベルの選手たち、彼らのプライドはおさまるのか?
・そこまでして、勝利を得ることが出来なければどうなるのか?
1試合1試合を積み重ねると言うよりも、グループリーグ4試合で結果を出す考え方。
とても、現実的なもの。
頭では理解できますが、心情的に理解できない部分を感じる人間も多いようです。
どうですか、サッカーやフットサルでこう言った戦略は支持されると思いますか?

 私は、次のように考えます。
フィールドで起こることは、我々は干渉することは出来ない。
どんなに力を持っている人間であっても。
そこで何かを出来るのは、コーチと選手、チームスタッフのみ。
我々に出来ることは、彼らを心から信じて応援すること。
実際にカーワンコーチは、イタリア代表監督時代にこの戦略を用いています。
見事、グループリーグ4試合で2勝を上げています。
今回もその再現を願って、見守りたいです。

最後にジョン・カーワンヘッドコーチの言葉を紹介しておきます。
「ラグビーは複雑なゲーム。それをシンプルにするのがコーチの役割です。」
「日本の文化をワールドカップに持っていく心積もりです。」
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2007年08月28日

継続は力

 U−17ワールドカップでの、日本代表の冒険が終わりました。
どこまで、自分たちのスタイルをぶつけていくことが出来るのか?
同年代の世界レベルはどの位置にいるのか?
世代別とはいえ、ワールドカップだからこそ確認できる日本サッカー界の現在地。
アジアでの予選で、日本らしい方向性をはっきりと見せていたチーム。
世界大会で、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか?
結果、内容共に期待して見守っていました。
初戦ハイチ戦での1勝だけに終わり、グループリーグ敗退。
なによりも、もっともっと、世界との真剣勝負を経験して欲しかった。

 親善試合やフェスティバルでは味わうことの出来ない緊張感。
この世代の世界のトップレベルとの3試合。
特に、持っている力の全てをぶつけてきたフランス代表との試合。
フットボール大国の持つ底力は、鬼気迫るものがありました。
それを精一杯ぎりぎりの所で耐えながらも、自分たちのスタイルを発揮しようとする日本。
明らかに、前の試合での反省が生きていましたよね。
90分間我慢するだけに終わったナイジェリア戦。
自分たちの良さを出すどころか、蹂躙され続けた90分。
それでは、世界と戦えない。
この失敗を糧に、次のフランス戦では、短期間に成長した姿が見られました。
この大会に参加しただけでは終わらなかったようですね。

 今回のグループリーグでの敗退。
そして、U−20代表の敗戦。
期待に応えてくれるような結果ではなかったのかもしれない。
話が飛躍して、彼らの取り組んだサッカーに批判が起こるかもしれない。
ボールも人も動く、ムービングフットボール。
掛け声倒れだと揶揄する声も聞こえます。
本当にそんなことが出来るのか?といった懐疑的な見方。

今は、そのような批判よりも、何が通用して、何が足りなかったのかを検証することが何よりも必要。
通用したのは、やはり動いていた時間帯。
間違い無く、主導権を握って試合を展開できた。
動いていくことで、相手を後手に回すことができた。
たとえ、どんな強豪であっても!

足りないことも、数多く上げることが出来ます。
・ゴール前での落ち着きや、積極性。
・最終ラインからの確実な組み立て。
・攻守における、1対1での強さ。
・試合の流れを読む力、特にいつ仕掛けるのかを読み取れるかどうか。
中でも、特に引き上げ続けていきたいのが、技術。
止める・蹴る・運ぶ・見る。
動きの中で、プレッシャーが厳しい中でどれだけ発揮できるのか?
一人でのリフティングやボールタッチを繰り返すだけでは、絶対に身につかない技術。
試合の局面でこそ発揮される、このオープンスキル。
動きながらプレーすることは、難しい。
速い動きや当たりを受けての中で技術を発揮することはもっともっと難しい。
ここの部分がまだ足りないようです。

止まってボールを動かす、フランスやオランダのスタイル。
彼らのそのやり方を可能としているのは、図抜けた個人能力。
190センチ近い選手と、ぶつかり合いで勝てるのか?
しなやかでバネのある黒人プレーヤー。
ナイジェリア戦の2失点目は、衝撃でした。
ファールで止めたはずの選手が、1回転でんぐり返しをしてプレーを続ける。
信じられない光景。
実は、2年前のUー20ワールドカップでもオランダのクインシー選手から洗礼を受けました。
どんなに身体をぶつけても、びくともせずに数10Mをドリブルで独走していく姿。
そんな能力は、日本人である限り備わるはずも無い。
だとすれば、勝負していくポイントは、技術。
日本は人もボールも動かすならば、さらに技術を磨き続けないと。
このスタイルへの挑戦は始まったばかり。
何十年もの継続していき、それを力に変えて行こう。
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2007年07月20日

4次元のパス

 フットボールの発達段階を、次のような表し方も出来るのかな?と考えました。
自分が認識している、味方と共有している世界
この世界は、プレーヤーの発達と共に少しずつ広がって行くのではないか?
レベルが高まるにつれて、徐々に広がる世界。
最初はボールを扱うことが精一杯。
もう少し発達すると、DFとの競り合いに追われて行く。
なかなか、余裕を持って状況を判断して行くことが出来ない。
ところが、フットボールをよく知っている人間ほど、簡単にプレーしているように見える。
戦術理解度が高く、遂行度も高いチーム。
彼らも同じく、当たり前のように簡単にプレーしている。
そんな感想を持ったことは一度や二度ではありませんよね。
それを、次のように表してみました。

・一次元(直線上の世界)
ボールを初めて触った。
フットボールを始めたばかり。
幼児。
もしくは、相手のプレッシャーが厳しく、周りが見えなくなってしまう。
ボールだけを見ている、ヘッドダウンの状態。
彼らは、足元にあるボールを前方に蹴飛ばそうとする。
ドリブルのようなことをしても、前や横だけなどの、一方方向にだけ進んでいく。
まさに、定規の上で、直線上でだけフットボールをしている。

・二次元(平面上の世界)
少しずつボールに馴染んできた。
色々な方向に自ら進んでいく。
さらには、試合の状況に合わせて方向を変えていく。
ただし、目の前にDFがいれば、ドリブルで抜くか、横・斜めへのパスをする。
平面の状態でしかまだ物を見えない、考えれない状態。
見えてる世界が狭く、味方のプレーヤーと、プレーのイメージを共有することがまだ少ない。

・三次元(立体的な空間としての世界)
ボール扱いが巧みになってきた。
平面だけでなく、高さ・奥行きといったものを駆使しながらフットボールをできるようになってきた。
前方を塞がれたとしても、浮球を使い、パスを通す。
もしくは、頭越しにDFを抜いていく。
グラウンダーでボールをつないで行ったとしても、DFの向こう側、ゴール前のスペースを認知している。
かなり見える世界が広がってきた状態。
時には、もう1人の自分が上空からピッチやフロアを見下ろしているかのような感覚が持てるかもしれない。
俯瞰図を持った状態。

・四次元(空間に加えて、時間の観念が加わる)
ボール扱いが巧みになり、キックの種類もかなり増えていている。
時間の先を見通す目も、養われてきている。
つまり、今はまだ無くても、数秒後には一瞬誰もいない空間(スペース)が生まれる。
これを予見することができる。
また逆に、今はフリーなように見えても、数秒後にはパスコースが無くなっている。
時間という新たな座標軸を持つことで、プレーの幅が広がる。
判断の誤りが少なくなる。
一番分かりやすい例が、ゴール前に通すスルーパス。
今はそこに誰もいなくても、数秒後にはフリーランニングで入り込んできてくれる。
それをお互いに信じて、走りこみ、パスを出す。
意識したことは無いのかもしれませんが、この瞬間は四次元でものを考えられているのです。

デットマール・クラマー氏の教え。
・周りを見ること。
・前もって考えること。
・ボールに寄ること。(パスを受ける時に)
・パスをしたら走ること。
この積み重ねをすることで、四次元のプレーがドンドン生まれてくる。
ゴール前へのラストパスに限らず、中盤でのつなぎのパスの時でも。
最終ラインからゲームを組み立てている時でも、四次元のプレーが生まれてくる。
もちろん、三次元のプレーは、当たり前のように繰り返される。
ただし、クラマー氏の教えを怠れば、一次元・二次元のプレーしか生まれない。
ボールを持っていないときに、仕事をしない。
周りを見ない、スペースに飛び込む走り込みをしない、プレーのイメージを持たない・・・。
そこで生まれるゲームは、退屈で平凡なプレーの積み重ね。

パスが面白いように繋がって行く試合。
足元への逃げのパスだけでないプレー。
前方のスペースへ、中盤にポッカリ出来たスペースへのパス。
パスや、ドリブルをするために時間を作る、タメのドリブル。
観るもののイメージすらも超えて生まれる、創造的なプレーの連続。
これらを言い換えれば、三次元・四次元のプレーが構成要素になっているのではないか。
どうでしょうか?
一度、こういう考えを持って、試合の観戦やプレーに臨んでみては!!
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2007年07月06日

時間稼ぎとチームのレベル

開幕2連勝でグループリーグ突破を決めた、U−20日本代表。
U−20ワールドカップでは、日本代表の奮闘が目立っています。
初戦は、世界に日本のスタイルとは!!と強くアピールをした試合内容。
2試合目は、何度も決定機を作られるも、ギリギリの所で踏ん張っての勝利。
チームの雰囲気も盛りあがっているようで、勝ちぬいていく条件を持っているチームかもしれません。

一方、南米ではコパアメリカ07がベネゼイラにて開催されています。
大会の格の割には、あまりに注目度が低過ぎるこの大会。
タレントを生み出しつづける南米、中南米。
フットボール先進国のヨーロッパでも、大事なパーツは南米出身の選手が占めていますよね。
ミラン・リバプール・バルサ・・・。
そんな、キラ星のようなタレントの品評会。
それがコパアメリカ。
私事ですが、この大会を見るために、新たにスカパーのチャンネルを増やして、チェックしています。
中でも注目は、アルゼンチンとされています。
ほぼ、ベストメンバーを揃え、本気でタイトルを奪いに来たようです。
開幕3連勝を飾り、グループリーグ首位通過を決めました。

U−20日本代表とアルゼンチンのフル代表。
この両チームとも、勝ち試合を繰り返しています。
ただし、大きな差があるのは事実です。
比べる方がおかしいと思うかもしれません。
世界のサッカー界は、20歳ならもう大人です。
日本チームでさえ、ほとんどのプレイヤーがプロ選手。
同じプロなら、同じ基準で比べないと。
ピッチに立てば、ハンデなど与えてくれませんから。

その大きな差が、如実に現れていたのが、試合終盤です。
日本代表は、相手のコーナー付近でボールをキープしようとしていました。
時間稼ぎですよね。
ボールを1人、2人で身体を張ってキープ。
自分の身体でボールを隠して、相手DFに触れさせません。
1分、2分と時間を使い、終了のホイッスルを待ちます。
これは、時間稼ぎの鉄則をしっかり守ったものです。
味方の守るゴールから、一番遠い場所でのボールキープ。
ゆえに、もし相手に奪われたとしても、失点に最もつながらないからですよね。

思い出すのが、93年のワールドカップ予選。
俗に言う、「ドーハの悲劇」です。
予選最終戦のイラク戦。
1点勝った状態で、終盤を迎えた日本代表。
ほんのもう数分、数秒守りきれば、初めてのワールドカップ出場が決まります。
当時の日本代表が、イラク陣内深くに攻めこみました。
ところが、交代で入った武田選手が、クロスボールを上げてしまったのです。
簡単にボールはいらくのものになってしまいました。
あの時、時間を稼ぐことは出来なかったのか?!
やはり、そんなことすら出来ない日本代表が世界に出ていくのは早かったのだ。
大きな議論の的になりましたよね。
それから比べると、10数年経ったU−20日本代表の方が、成熟しているとはいえますよね。

ところがです。
アルゼンチン代表は、さらに遥か上を行っています。
ボールを奪われないようにプレーをするのは同じ。
ただし、コーナー付近で身体を張ってキープ、このプレーをほとんど行ないません。
パスをドンドンつないでいって、時間を稼いでいくのです。
相手が頑張って奪いに来たら、パス、パス、ロングパス。
警戒して来なければ、ゆったりとドリブル。
まるで、闘牛士が牛をイナすようなプレー。
スタンドからは、「オーレ、オーレ」の大声援。
そしてさらに、次がありました。
相手の穴を見つけるやいなや、ゴールを目指して行くのです。
2戦目のコロンビア戦は、まさにこの流れから、追加点を奪っています。
高い技術と、穴をすぐさま見つける判断力。
そして、ゴールへの積極的な姿勢。

U−20代表は、大人になりかけている。
アルゼンチンのフル代表は、立派な大人として完成している。
14年前の日本代表は、余りにナイーブな子供だったのでしょうか。
アジアカップには、日本のフル代表が参戦します。
さて、現在地はどこなのでしょうか?
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2007年06月12日

変更を見抜く「目」。

試合の開始前は、監督も、プレーヤーも、しっかり準備をして臨むものです。
試合が始まったら、ここに気をつけよう。
今日の目標は、これだ!
絶対、こういったプレーで、貢献しよう。
必ず勝ち点3を取る。
最低でも引き分けには持ち込みたい。
そのために必要な戦略はこれとこれだ。
などなど、様々な準備をしていますよね。
用心深く、用意周到な者は、試合が始まって終わるまでをシュミレーションするでしょう。
しかも進行具合によって、シュミレーションも幾通りのパターンを行なっていきます。

この準備をチームとして徹底するためには、トレーニングとミーティングが欠かせない。
例えば試合で、ある1つの現象が起こる。
それに対して、選手の誰もが同時に行動を起こせるように。
この場面をトレーニングで反復していく。
ミーティングで、イメージのすり合わせを行なっていく。
このようにして生まれていくのが、本当のチームワーク。
仲良くみんなで試合をして行きましょうではなく。
まるで、チームが1つの生き物のように動き出す。
本当の組織力、これがチームワーク。

 先日、Jリーグの試合である事件が起こりました。
名古屋グランパスエイトの監督、フェルフォーセン氏。
26日に行われた東京戦(味スタ)でメモを試合中の選手に回すという違反行為。
試合後にマッチコミッショナーから口頭注意を受けた。
後半18分、フェルフォーセン監督が布陣イラストを書き込んだメモ用紙を選手に渡し、審判団が確認。
J実行委員会からは禁止行為として全クラブに伝えられていた。
ややこしいのは、競技規則には禁止事項として明文化されていないこと。
フェルフォーセン監督は、「今までもやってきたことだ!」と猛抗議する。
氏はオランダ、ベルギーなどで20年ものキャリアを積んだベテラン監督。
ルールはルールとして守るべきなのでしょうが、そこまで厳しくしなくてもという気がします。
日本特有のお役所気質が、この裁定に感じられます。

 それはさておき、なぜメモが回ったのか?
内容は、フォーメーションの変更。
それは初めて行なわれる変更だったのだろうか。
普通はそんなことはあり得ない。
よっぽどの特殊な事情を除いては。
では、トレーニングで徹底できていなかったのか?
充分に鍛え上げられ、真の組織力を持ったチームならば、必要無かったはず。
監督の指示1つ。
もしくは、ある選手交代をきっかけにピッチの皆が、理解する。
組織力を持って、メモなど無しに変更して欲しかった。

試合中にフォーメーションをドンドン変えていくことで有名なのが、フース・ヒディング監督。
2002年のワールドカップで韓国代表を率いていたヒディング監督。
2006年のドイツ大会では、オーストラリア代表を率いていました。
目の前で、フォーメーションが変わっていく様子を目の当たりにしました。
変えられた側は、対応に追われ、後手に回ってしまう。
どうしても、落ち着かない。
その隙を狙って、相手ゴールを陥れる。
私は、カイザースラウテルンのスタンドで、その様子を体験することが出来ました。
上から見ていても、何が起こったのかに気付くまで時間が掛かりました。
私の不勉強が大きな要因の1つなのですが・・・。
ピッチの選手は、さらに時間が掛かり、後手に回ってしまうでしょう。
オーストラリア代表チームの姿は、相手チームながら天晴れ。
「策士」と呼ばれるヒディング監督の真骨頂でした。

この変更に答えていくオーストラリア代表選手たちのレベルも高いものがあります。
前後半で変わるのなら、まだ頭も心も整理できるでしょう。
次なるレベルは、選手交代と同時にフォーメーションやポジションを変更すること。
これも、交代という分かりやすいキッカケがありますよね。
一番難しいのは、これすら無しに変更を行なうこと。
試合の流れの中でフォーメーション変更を行なうのは、本当に大変なのです。
言われた配置につくだけなら、なんとかなるでしょう。
監督やお互いの指示を聞いてさえいれば、ポジションを移動させるだけですからね。
難しいのは、そこで求められる役割を理解して、実践すること。

失敗を許されない大会。
この大舞台でフォーメーション変更が出来るチームは、本当に訓練されている証なのです。
いいトレーニング、いいミーティングを重ねているな。
目を閉じても、お互いの位置が把握できているかのような。
その意味から言うと、今現在の名古屋グランパスエイトは、発展途上なのでしょうか。
「選手交代無しでフォーメーションを変えられることが、現代サッカーに重要になってくる」
「交代無しでも変化し、一人の交代選手投入で3つ、4つ目のオプションを使えるかどうかだ」
フース・ヒディング監督の言葉です。

 こういった高いレベルのチーム戦術。
スタンドやテレビの前で気付けるかどうか?
もし変更に気付けたら、一歩進んだ「目」を持てた証拠です。
さらに、変更の対処法や、弱点を見抜けたらさらに一歩進んだ「目」ですよね。
策士を相手に回した監督。
彼の見方で、試合を観れたわけですから。

この「目」を持てたら、試合をプレイする時にも役立つはずです。
まずは、前後半の始まり。
そして、選手交代。
ここで、相手の陣形や意図を注意深く観てください。
さらには、点数の変化や、時間の経過にも要注意です。
今まで見えなかったものが見えてくるかもしれませんよ。

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2007年06月08日

新たなチャレンジ

キリンカップが終わりました。
タイトルが取れましたが、それよりも真剣に試合を行なってくれた両国に感謝でしょうか。
キリンカップにどれだけの権威があるかは分かりません。
それでも、ただの親善試合をするよりは意味がある。
意味があるかないを量るのは、選手・監督の本気度ですよね。
どんなに強豪でも、顔見世程度の試合をされては、なんの強化にもなりません。

ただ、本当に強化を考えるのなら、日本に対戦国を呼んで試合をするだけでは話にならない。
外の環境で戦ってこそ、本当の力が見えてくる。
昨日、浦和レッズが中国王者山東魯能に3対4で破れました。
アウェイでの戦いとはいえ、残り数分まで1対4。
最後に2点とって面目は保ったのかもしれませんが、完全な負け試合。
移動がある、メンバーが揃わない、気候が違う、ピッチが良くない。
様々な言い訳があるでしょう。
そういった苦しい中でこそ、真の力が試されているのですが。
コロンビア代表は、移動疲れ、厳しい中1日のスケジュールでも引き分けに持ち込む力を持っていましたよね。

そんな、コロンビア代表との試合で、日本代表が新たなチャレンジに取り組みました。
そのチャレンジは画期的なものだと私は感じました。
にも関わらず、あまりに取り上げられていなくて、びっくりしています。
海外組の融合、攻撃陣の出来については、たくさんの報道がなされていました。
後半の羽生、今野投入が成功。
それにより、チーム全体が活性化された。
まさにまさにその通り。
フリーランニングを
足元足元のパスの繰り返しだけだと形にならないのが立証されたようです。

チャレンジは、守備の陣形についてです。
オシム監督のシステムは共通。
特定の選手を決めて、マンツーマンでマークにあたる。
相手のサイドバックにまで、マークを付かせることがあるくらいです。
そして、1人カバーリング専門のスイーパー(リベロ)役を置く。
分かりやすく、最終ラインだけを図示すると次のようになります。

  
      ×相手FW          ×相手FW
      
      ○             ○ 
      左ストッパー        右ストッパー

             ○
            スイーパー

       
         守るべき自陣ゴール方向

コロンビア戦では、次のようなスタイルを起用しました。
違いは、一目瞭然ですよね。

      ×相手FW          ×相手FW
      
      ○             ○ 
      左ストッパー        右ストッパー
      (阿部選手)       (中澤選手)
             

       
         守るべき自陣ゴール方向


そうです。コロンビア戦では、スイーパーを起用しなかったのです。
観ていて冷や冷やするDFライン。
ストッパーのどちらかの選手が抜かれたら?
もしくは、マークを外してしまったら誰が対応したのでしょうか?
ゾーンDFを用いるのならば、当たり前のようによく見られる光景です。
マンツーマンを志向してたチームが、後ろに1枚余らさないのは、珍しい。
前半は、コロンビアの中盤のマークが曖昧だったために、後手に回っていました。
後半は、サイドバックにはいった、駒野・今野選手が役割を確認し、整理されたようです。

ストッパーに入った、両選手の踏ん張りは素晴らしかったです。
1対1で負けなかった。
その強さがあったからこそ、成り立ったこのシステム。
それが前提に無いと、一気に破綻してしまうやり方でした。
ただ、理論的に崩そうと思えば、簡単に崩せるシステムではあります。
一番大きなメリットは、中盤の選手を1人多く使えたこと。
日本には、中盤に好選手が多く排出される傾向があります。
スイーパーの選手を1人削って、その分多く中盤に割り当てることができた。
本来なら、坪井選手かトゥーリオ選手がスイーパー(いずれもケガで離脱)。
そして、稲本選手か中村憲剛選手、鈴木選手のうち出れていたのは、2人だったはず。

無失点に切り抜けたことで、新しいチャレンジは一応成功したのでしょう。
ただこれは、今後における(アジアカップ、WCUP予選)オプションの1つだと思われます。
同レベルの相手ならまだしも、明らかに各上の相手ならどうでしょうか?
彼らが、アンリ選手や、トーニ選手、ロナウジーニョ選手にエトー選手を1対1で止めれるとは・・。
それでも、メンバー選定以外のテストが出来たのは、大きな収穫。
今までも、このようなテストをして欲しかったのが本音ではあります。

さらに付け加えると、FWは高原選手1人。
ここも本来なら、2人起用していたところでしょう。
これもまた、中盤のタレントを使うために、1人削っています。
つまり本来なら、遠藤選手、中村俊輔選手のうち、先発はどちらか一人だったはずです。
このテストは、失敗に終わりました。
攻め手が無かったのは、この起用(稲本選手も含め)が上手く機能しなかったことが大きいでしょう。
もしかすると、日本の観客や報道陣に向けてのアピール!?
「あなた達の大好きなスターを並べても成功しないよ」
有名な90年ワールドカップのエピソードが思い浮かびませんでしたか。

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2007年05月11日

勝負する守備

 守備、受身に回るだけが守備ではない。
守備、相手FWを抑えることのみが役割ではない。
守備、相手についていくことだけがマークではない。
何よりも、守備は能動的に進めていきたい。
受動的な守備だと、ゴールは守れるかもしれない。
残念ながら、自分達が意図してボールを奪うことが出来ない。
意図した場所で狙ってボールを奪う。

そのためには頭の中身を変えたい。
ボールを持っていない選手に対する準備。
つまり、ボールを持っていない選手に対していなくてもポジショニングを修正し続ける。
残念ながら、一番あいまいになってしまう部分。
分かっていても出来ない。
時間の経過、体力の減少と共に、サボってしまう部分。

攻撃の時に、ボールを持ってから全てをスタートしていては間に合わない。
よっぽど、力の差が無いと、パスもドリブルも、ファーストタッチすらも成功しない。
ボールを持っていない時からの準備。
ポジショニングや体の向き、ルックアラウンドなど、ボールをもらう準備を繰り返す。
それが出来ているのが、いい選手の最低条件。
ここに意識が及ばないのは、球を適当に転がしている人間。
例え、ボールコントロールに長けていても、チームに貢献できないプレイヤー。

守備も同じ。
ボールが来ていない時から、準備がどれだけ出来るのか?
次のこと、次の次のことを予測しながらどれだけ準備が出来るのか?
それを集団で出来るのが、守備力のあるチーム。
勝ち上がっていけるチームとも言えますね。
この準備は、正直とてもしんどいものです。
来るかどうかも分からない相手をマークし続け、カバーし続ける。
体力的にも、精神的にも、かなりの負担になるのは間違いありません。
それでも、スーパースター達が、このしんどい作業を繰り返している。

 UEFAチャンピオンズリーグのベスト4。
圧倒的な攻撃力を誇るマンチェスターユナイテッドを下したACミラン。
ベスト8で1試合に7点をも奪う強力攻撃陣。
彼らの動きを封じたのは、いい準備からなるACミランの組織での守備。
一方、アジアチャンピオンズリーグのグループステージ。
アウェイで勝ちきれない浦和レッズ。
暑さと遠征疲れのためか、準備が出来ていない守備を繰り返す浦和レッズ。
テレビ観戦に過ぎませんが、3点も取られるような相手には、思えませんでした。

この2チームを分けたのは、守備の意識。
いい準備が出来たのか出来ていないのか?
来週には、フットサルのアジア選手権が日本で開催されます。
日本が優勝する条件の1つに、守備のいい準備が出来るか、これが挙げられます。
我々は、華麗な攻撃ばかりに目が奪われがちです。
チャンピオンチームには、組織されたいい守備が備わっている。
逆に勝ちきれないチームは、守備に対する意識の低さ、準備の悪さがついて回っている。
当たり前のことですが、改めて。

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2007年04月13日

ドリブルの名手

 ドリブルの上手い選手といえば、どんな選手を思い浮かべますか?
クリスティアーノ・ロナウド選手、ロナウジーニョ選手、ホアキン選手、・・・。
そんな彼らのどんな場面を思い浮かべますか?
多彩なフェイントを駆使して、DFをあざ笑うかのように抜き去っていく。
スピードに緩急をつけて、相手を置き去りにして行く。
一度その快感を味わったら、もう忘れることは出来ないかもしれません。
こういったプレーにはあこがれますよね。
魔力があるといってもいいかもしれません。

 近年言われ続けている、現在のフットボールのトレンド。
ゆったりとパスをつないで行く時間。
細かいパスを駆使して突破する空間。
そういった時間・空間がどんどん無くなって行く。
体力・体格の向上、守備戦術の進歩。
その結果、レスタイム・レススペースがさらに進んで行くと考えられています。
こういったトレンドの今であるからこそ、ドリブル突破の価値が上がるのではないか。
この中でドリブル突破を成功させるのは、もちろん簡単な技術ではありません。
それでも、相手DFを1人抜き去れば、その瞬間に11人対10人、5人対4人になります。
チーム戦術としても、有効だと考えられます。

 先日の、UEFAチャンピオンズリーグベスト8、2NDレグ。
マンチェスターユナイテッド対ASローマ。
ベスト8屈指の好カードと思われていました。
1STレグは、ローマのホームゲーム。
まずは2対1で、ローマの勝利。
次の対決はどうなるのか?私もとても注目していました。
前回のブログでも取り上げたとおり、ローマは興味深いスタイルで成功していたからです。
ちなみに、元フランス代表監督エメ・ジャッケ。
ワールドカップの優勝監督です。
彼は、ローマの勝ち上がりを予想していました。
ふたを開けると、7点!!も奪っての、歴史的大勝利を収めたマンチェスターユナイテッド。
あそこまでの大差がつくとは!?
フットボールは何が起こるか分からない。

この歴史的大勝利の立役者の1人は、ドリブルの名手、クリスティアーノ・ロナウド。
ローマとしては、彼に自由にドリブルをさせてしまったのが痛恨のミス。
彼は試合を通して、気持ちよくドリブルをしていました。
結果、ローマの守備陣は、後手後手に回る。
慌てて彼のドリブルをつぶしに行くと、ほかの選手がフリーになる。
ゴール前やサイドに決定的なスペースを作ってしまう。
彼のドリブルがマンチェスターユナイテッドの攻撃の形を決定付けました。
そして、ローマの守備陣の組織を崩壊に陥れていました。

 ただ、こういった華麗なドリブルは、誰もが出来るわけではありません。
ドリブルの名手といえども、毎回相手を抜きされるわけではありません。
ドリブル突破は、相手DFに奪われるかもしれない?そんなリスクを常に背負っているのです。
このリスクを本当に理解して、ドリブル突破にトライしているのかどうか?
さらには、ドリブルといえば、突破しかない!
そんな極端な発想に走ってしまってはいないか。
チーム戦術として有効なドリブルとは、ドリブル突破だけなのか?
一度考えてみる必要がありますよ。
誰でもトレーニング次第で身につけることの出来る。
試合で有効なドリブルが、必ずあるはずです。
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2007年02月14日

声出しのヒント。

レベルの高い試合になればなるほど、ピッチの中では大声を掛け合っています。
ケンカをしてるのか?!と勘違いしてしまうほどです。
声を掛けあう内容は、様々です。
パスが欲しい、と要求する声。
DFの組織を作ろう、とチームを動かす声。
他にも、チームメイトを鼓舞する声。
途切れることなく、ピッチの中に響き渡っています。

私は、この「声」、つまり「コーチング(コーリング)」も技術の一つだと捉えています。
声を出すことは目的ではなく。
頭ごなしに怒鳴りつけることが目的でもなく。
その瞬間、瞬間にチームをより良い方向に持っていく。
崩れている部分を修正する。
いい部分をもっと高めていく。
そのための技術。

とても興味深い話を、紹介します。
ブラインドサッカーの話です。
視覚障害者のスポーツとして、近年世界に普及しつつあります。
1998年には、ブラジルでワールドカップが開かれるほどに広がりを見せています。
昨年はアルゼンチンで開かれたワールドカップに、日本代表が初出場を果たしました。

ブラインドサッカーは、フットサルと同じサイズ・人数で行われています。
5人制で、20M×40Mのサイズのコート。
ただし、視覚障害者スポーツならではの工夫もあります。
ボールに鈴が入っていて、どこにボールがあるかを音で把握できるようになっています。
また、声を出し自分の位置を教えながら守備をする、そんなルールもあります。
つまり、声や音を最大限に駆使して、試合を進行していくのです。

声や、音を大事にする工夫がもう二つあります。
・GKには弱視者、晴眼者をおきます。
・相手ゴールの後ろに「コーラー」と呼ばれる、声だし専門のスタッフを配置
彼らが、プレーヤーに指示を与えることによって、プレーをよりスムーズに行うのです。
声や音は、彼らにとっては命綱同様に、大きなウェイトを占めています。
ここでの声の出し方は、われわれにとっても非常に参考になるものです。

「45、6」
と、コーラーが声を掛けます。
これは、ゴールから45度の角度にいて、6Mゴールから離れている。
これらを「45,6」の指示で伝えるのです。
この指示を聞いたほうも、声での情報を頭にインプット。
そして速やかに、プレーを決めていきます。
初めて聞いた人には、意味不明の暗号にしか聞こえませんよね。

この指示には、コーチング(コーリング)において、最も大切な部分を押さえているのです。
「今の状況を正確に、はっきりと明確で、必要最低限の短く」
言い換えれば、何か違うことと勘違いされるような声では困ります。
長すぎて、状況を伝えているうちに、変わってしまっても困ります。
その瞬間は、今だけしかないのです。
「明確で、短いこと。正確に伝えること」
これをチームメイトと共通の言語で伝えて合っていく。
そうすれば、チームのレベルがもう一つ高くなるでしょう。

posted by プロコーチ at 18:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする