2010年08月20日

エゴイスト?

 世界のフットボールシーンは、ヨーロッパ中心に回っている。

最もお金と、注目を集めるのが、ヨーロッパのクラブシーンである。

そしてそのトップにあるのが、UEFAチャンピオンズリーグなのは、否定できません。

ヨーロッパの価値基準こそが正義である。

実際に、今回のワールドカップでも、証明されたでは無いか。

この考え方に、反論することは、なかなかに難しい。







  5日間通しで見学した、FCバルセロナキャンプ。

ヨーロッパの中でも、目標にされる、FCバルセロナ。

ここでは、ドリブルだけではない、個人の力だけに頼らないフッボウを伝えていました。

7人制で行われた、トレーニング最後の試合形式でのことです。

ボールを持った選手が、ドリブルを選択する。

その時、相手DFが立ちふさがっている。

さらに、カバーリングの選手も揃って、スペースが少ない。

すると、試合はフリーズされます。

「君の前に、何人の相手選手がいるんだ?!」

「後ろを見てごらん、君の仲間がいるぞ!」

後ろにパスをして、組み立てなおすことを求めるのです。

何度も何度もこの作業をすることで、選手たちも後ろに有効なパスを出来るようになって行きます。

6歳の子供でも、12歳の子供でも、それは変わりませんでした。

子供たちがたった5日間で、グループで動くことを、決断し始めました。

その変化を観るのは、興味深いものでした。





 ヨーロッパでも、高い評価を受けている、オシム前監督。

彼は、ドリブルを多用する選手に、辛い評価を与えていました。

「彼はエゴイストだ。」

南アフリカワールドカップでの、日本代表の選手にも言っていました。

彼が率いてた頃の日本代表選手にも、批判していました。

ゴール前のフリーの選手にパスを出さず、自らドリブルからシュートを選んだ選手に対して、

「得点を挙げれば新聞の1面を飾ったり、テレビで取り上げられるということが頭にあったのかもしれない」





 少しだけ、私の感想を。

これらも、フットボールの考え方の一つにすぎない。

バルセやオシムが言うことが、100%、いつでも正しい?!

そこには、私のはるか上を行く能力と実績があるのですが、それが全てではないはず。




 

 南米クラブのチャンピオンを決める、コパ・リベルタドーレスの決勝がありました。

日本での扱いが小さいのは、現代の潮流を象徴しているかのよう。

私は、南米の試合が観たくて、CSのチャンネルを契約しているので、楽しむことが出来ました。

カードは、ブラジルのインテルナショナウ対メキシコのチーバス・グアダラハラです。

結果は、2戦合計5対3で、インテルナショナウが勝利し、南米一の称号を手にしました。




 その2ndレグの終了間際で、スーパーゴールが生まれました。

決めたのは、交代で結果を出していた、20歳のジウリアーノ選手です。

ペナルティエリアのやや外、ど真ん中の位置で、右サイドからのグラウンダーのパスを受けます。

目の前には、4人のDFとGK。

味方選手は、やや後方に2人と、両サイドに1人ずつ。

前は向いているものの、スペースは無い。

ミドルシュートを打とうとすると、おそらく相手に引っかかる。

私が予測したのは、左サイドに展開して、相手を振り回す。

もしくは、キックフェイントで相手を外し、ミドルシュートでした。





 彼の選んだプレーは全く違いました。

ドリブルでの単独突破です。

わざとスピードを落として、相手DFに近付く。

すると、2人のCBがダブルマークに来ました。

ドリブル以外、他の選択肢は益々無くなってしまいました。

彼はその瞬間を作ろうと、待っていたのでしょう。

待ってましたと、小さいキックフェイント、さらに細かいステップを1つ入れる。

2人共の足が揃ったその瞬間、ボールを足の高さ分(数10センチ)だけ浮かしました。

ボールを浮かしてボールを運び、自分もヒラリと越え、突破してしまいました。

つかみに来たDFの腕を振り解いて、さらに前に向かいます。




 ジウリアーノがDFラインを突破してもすぐに、次の選手が来ます。

南米の試合でも、ゴール前では時間の余裕はありません。

カバーリングにサイドから相手DFがスライディングしながらコースをふさぎます。

前からは、GKがカラダを投げ出してコースをふさぎました。

シュートコースなど無い、と思った瞬間、ボールの下に足を差し込みました。

また小さくボールを浮かしてシュート。

ボールは、ふんわりとゴールに吸い込まれていきました。   

おそらく、この瞬間も待っていたのでしょう。

GKが寝転がるその瞬間を。




 たった一人で、相手のDFとGK5人を打ち破り、ゴールを決めてしまったのです。

相手との駆け引き、タイミングの外し方、わざと2人を相手にする、GKを寝転ばせてのループシュート。

テレビを観ている人間をも、簡単にあざむくプレーでした。

もちろんスタジアムは、熱狂に包まれました。






 10回挑戦して、1回成功することがあるのでしょうか?

ゴール前だからといって・・・。

彼自身、他に可能性の高いプレーも分かっていたはずです。

それでも、彼はトライしました。

そしてスーパーなプレーを、南米一を決める試合で出してしまうなんて!

こんなゴールがあるから、南米のクラブシーンは面白い。


   
posted by プロコーチ at 23:35| Comment(1) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
オシムさんは、一概にミドルシュートやドリブル突破が嫌いなわけではないと思いますよ。

本人にしか考えは分かりませんが、ミドルシュートにしても決めた選手だけが褒められるのではなく、外を追い越した選手も含めた複数でのゴールのように賞賛してほしいと思ってるのではないでしょうか?(例えばの話)


ジェフ時代の選手の談話では、監督が「こうしろ、ああしろ」と言われたままやるだけではなく、もっと良いものなら選手が約束を破ってもいいようです。

以下コピペ

(坂本) 「2対1で、監督はまず一度FWにボールを当ててから始めろ、と指示したことがあったんです。でも、僕(坂本)と組んだ林(丈統)は相手の裏でボールを欲しがったので、僕(坂本)は最初から裏へパスを出した。そしたら、監督は”ブラボー”ですよ。」

(佐藤勇人) 「オシム監督の場合は、ただ真ん中からノーマークで打たせるようなシュート練習はなくて、いろいろなバリエーションをつけます。例えば、ペナルティエリア内の角度のない所から右足のアウトサイドでカーブをかけて狙え、とか。そんなときに、あえて敢えてインサイドで巻いたり、逆の足で狙ったりすると、褒められますね。」

(坂本) 「2対1とか3対2とかで、相手をうまく崩せたときに褒められるじゃないですか。でも、その後に、ただし他にもこんな方法があるぞ、こういうアイディアもあるぞ、と次から次へといろんな方法を教えてくれるんです。」とも語っている。


…ただ、どうも忠実に言われたことを守るにしても、破るにしても、どちらにしても度が過ぎると怒るそうですが。
Posted by ちゃらーん at 2010年08月21日 22:28
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