2011年04月22日

セットプレーの駆け引き

 相手がいるスポーツには、駆け引きが存在する。

自分のベストをぶつけるだけで、毎回勝利に近づけるわけでは無いはずです。

相手がいる中で、いかに自分を発揮できるか?

相手の良さを消し、自分の強みを発揮する。

常に、相手がいる中でのプレーが求められるのが、サッカーであり、フットサル。








 FCバルセロナ対レアルマドリーCFのリーグ戦での対決、クラシコ。

この試合で、興味深いことがありました。

それは、両チームのセットプレーです。

全得点の約3割は、このセットプレーから生まれる統計は、有名ですよね。

28%、33%、25%。

ワールドカップのここ3大会での、全得点におけるセットプレーの割合です。

勝利に近付くために、セットプレーの準備は欠かすことが出来ない要素です。






 レアルマドリーは、CK、コーナーで、いい準備をしていました。

キッカーのディマリアは、常に、ニアサイドにボールを送り込んでいました。

バルサGKに飛び出させないような、ニアに速いボールを入れ続けました。

残念ながら、DF・GKに弾き返され、チャンスらしいチャンスにはなりません。

バルサの選手は、高さで勝負できる選手がご存知のように少ない。

身長のミスマッチがあるので、レアルは、これを活かした方が良いのでは?

高いボールをファー、センターに入れてもチャンスになりそうなのに。

4本連続ニアに蹴られたCKを観て、私は、そう思っていました。








 ところが、5本目になる、前半終了間際のCKは違いました。

ディマリアが突然、ファーサイドに、ボールを蹴りました。

しかも、ゴールを横切るほど、ファーでも一番深い場所に蹴りました。

今まで、ニアを狙われ続けたバルサDF陣は、対応が遅れます。

ヘディングでセルヒオラモスが折り返し、フリーのクリスティアーノロナウドへ。

待ち構えて、フリーでヘディングシュートを放ちます。

ゴールのライン上で、アドリアーノが何とかクリアしました。






 バルサの守備陣は、完全に裏をかかれました。

スロー再生を観てみると、偶然ではなく、狙ったプレーであることがよく分かります。

ファーサイドに、ペペと、セルヒオラモスの2人が入っているのです。

(実は、4本目のCKの時も、2人はこのポジションを取っていました)

ボールを迎え撃ち、有利な体勢な、ペペとセルヒオラモス。

一方のバルサDFは、後ろに下がりながら、無理な体勢で競らざるを得なくなってしまった。

さらに、ゴールの中央には、5人のバルサの選手がいるのですが、完全にマークを見失っている。

ロナウドは、ジャンプヘッドのお手本のようなフォームを取る余裕さえありました。







 実際、折り返されるとフリーにはなりやすいです。

ただし、ここまで、後手を踏んでしまったのは、その前の4本が効いているからです。

ニアに入れたCKは、ニアに蹴ってくる印象を強めるための捨て札だったのです。

本当の狙いは、このファーに入れて折り返すパターンだったのでしょう。

その瞬間だけでなく、1試合を通して、駆け引きをしている。

セットプレー1つに、何という、周到な準備をしているのか!!






 この駆け引きは、もう一度ありました。

このチャンスの直後のCKでは、もう一度ニアを狙いました。

やはり、ニアへのボールは、クリアされてしまいます。

後半65分のCKです。

両チームの選手共に、中央からニアにかけて、人口密度が高くなっています。

ところがボールはファーに。

またもやセルヒオラモスがニアに折り返し、あわや!というチャンスを作ったのです。

4本+1本の、ニアへの捨てCKが効いた、瞬間でした。






 その一方で、このようなシーンもありました。

直接シュートを狙える、セレモニーとも呼ばれる、おいしいセットプレーの場面です。

レアルは、3回のチャンス全て、クリスティアーノロナウドが、シュートを狙いました。

彼の無回転のブレながら落ちる球は、GK泣かせの、素晴らしいものです。

このクラシコでも、ポストに直撃する、惜しいシュートを放っています。






 
 左利きの選手の方が狙いやすい角度もありました。

左足で狙うなら、ディマリア、マルセロ、後半ならエジルという選択肢もありました。

右足でも、素晴らしいキックの持ち主である、シャビアロンソも控えていました。

それでも3回全て、ロナウドだけが、蹴ることを許されていたのです。

ここで、相手の裏をかくような、駆け引きは用いないのか?

違う選手が蹴るのもいいでしょうし、意表を突いたトリックプレーも考えられます。

そのようなことは一切無く、エースであるロナウドが、いつものブレ球を蹴り続けました。







 もしかしたら、違ったことをした方が、ゴールが生まれていたかもしれない。

それでも、エースのロナウドに蹴らせ続けた。

これは、監督のモウリーニョからの強いメッセージではないのか?

「俺は、ロナウドお前をエースとして認め、信頼を寄せている」

彼の真摯に取り組むトレーニングを信じたのかもしれません。









 小細工をするよりも、エースのプライドを尊重して、気持ちよくプレーをさせる。

そのようなメッセージを発したのではないか。

信頼を感じ、気持ちよくプレーできたことが、その後のゴールにつながったとも言えます。

自信を持ってPKを蹴りこみ、同点に追いつきました。

さらには、国王杯の決勝でのクラシコでも、見事なシュートを決めています。









 一方のバルサ。

彼らのセットプレーは、セットプレーのようで、セットプレーではありませんでした。

CKもFKもショートパスをつなぎ、オープンプレーに変えてしまっていたからです。

高さで勝負しても、不利にしかならない。

それなら、得意な地上戦に持ち込もう。

明確な意図、チームのスタイルが、そこには存在しました。

それも1つの選択肢でしょう。








 セットプレー1つをとっても、奥の深さを感じる、両者の戦い。

次なる戦いでは、どのような駆け引きを見せてくれるのでしょうか?


posted by プロコーチ at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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