2012年04月06日

生け贄の牛

 FCバルセロナをどのチームが止めるのか?!

特にチャンピオンリーグでの、本気を出したバルサを止める術など無いのではないか。

ボールを散々回され、ボールを追いかけて疲れ果てる。

後ろに引いてスペースを消したつもりでも、こじ開けられる。

ドリブル、パス、シュート。

常にたくさんの選択肢を持ち続けるバルサ。

試合を観ていると、彼ら独自のルールに、無理やり合わさざるを得ない対戦相手。

バルサペースで試合が常に進んでいく。

結果は、試合の途中で見えてしまっている・・・。







 チャンピオンズリーグ準々決勝、バルサ対ミランの2NDレグ。

結果だけを見ると、3−1で、バルサの完勝です。

内容を見ていくと、そこまでバルサの思い通りの展開ではなかったようです。

得点も2本もPKと、こぼれ球がラッキーにもイニエスタの前に転がってきたもの。

崩してゴールを奪ったわけではない。

それどころか、ミランの同点ゴール後の数分間は、バルサ敗退の危機すらあったのです。







 そのポイントは、メッシが気持ちよくプレーを出来なかった。

ミランが、メッシのドリブルを止めるための必死の対応が見えました。

メッシのドリブルは、本当に素晴らしい。

まるで、ラグビー選手がボールを手に持って、自由に走っているかのようです。

あの、手に持ったような感覚で、スピード・方向を変化させる。

ボールをコントロールするだけでなく、自分の体も自由にコントロールできている。

その2つが高いレベルで揃っていることが、彼のドリブルの大きな武器ではないでしょうか。








 そのメッシのドリブルをいかにして止めるのか?

もちろん、彼にボールを持たせずに、孤立させるのが最も有効な方法でしょう。

ただし、バルサのようにあれだけポゼッションしていれば、それも難しい。

仮にマンツーマンでメッシをマークしても、ボールを受けるのが上手いメッシ。

タイトなマークをものともせず、気がつけば、ボールを足元におさめてしまっている。

ふらふら歩く、止まってボーっとしている(本当にボーっとしているわけではないですが・・)

逆にフェイクを入れて相手から離れる。

様々な工夫を凝らして、メッシはボールを受けているのです。

パスだけでなく、メッシのドリブル、ドリブルからの決定的なプレー。

それがあるからこそ、バルサの強さが群を抜いているのです。







 
 ミランは、メッシのドリブルを止めるために、細心の注意を払っていました。

特に、ミランが取った方法で特徴的なものは、生け贄の牛を捧げることです。

メッシと正対したDFが、距離を詰めて、奪おうとします。

正面からスライディングタックルを仕掛けることもありました。

深く、体を触れるくらい近くまで、距離を詰めていきます。

その最初の仕掛けで奪えることもありましたが、それは本来の意図ではありません。

メッシは高い確率で、最初のDFの仕掛けを外します。

ただし、イタリアの守備職人たちの仕掛けは、深く、強烈です。

メッシと言えども、抜く瞬間に、足からボールが離れてしまう。








 しかも、ミランの守備陣の用意は周到です。

自分たちのカバーリングが分厚い方向に、メッシのドリブルを誘導します。

たとえば、左側から強く寄せます。

するとメッシは相手の動きを見えているので、その逆の右側に抜いてきます。

ところがこれは、ミラン守備陣の罠なのです。

右側のカバーリングが分厚いから、あえてそちら側に抜かれたのです。

ドリブルが大きくなった瞬間、カバーリングの選手がボールを奪うチャンスが出てきます。

ボールを奪えないまでも、メッシのプレーの方向を限定することは成功しています。

最初のDFは、ボールを奪うことよりも、ボールを足元から離させるのが目的。

そのために、深く、厳しく、メッシの体に寄せていきます。








 ブラジルでは、アマゾン川があります。

ピラニアが多数生息していて、毎年多くの牛が、食べられてしまっている。

牛を連れて、アマゾンを渡ろうとすると、ピラニアに襲われて全滅してしまう。

そこで、牛を一頭だけ、川に入れると、ピラニアがそこに集中する。

その隙を逃さず、他の牛を連れて川を渡らせるのです。

一頭は、まるで生け贄のように犠牲になってしまうのですが、集団は助かる。

強力なドリブラーに対処する方法として、一頭の牛を犠牲にする。

今回のミランが行ったようにです。

ブラジルなどの南米諸国では、よく取られる方法である。

以前テレビで、アデマール・マリーニョさんが紹介していました。








 粘り強く相手のドリブルに応対する。

簡単に相手に向かって飛び込んでいかない。

これが、守備の鉄則の一つです。

ところが、どれだけ粘り強く応対しようとしても、その上を行くドリブラーがいる。

それでも、「足を出すな!」「もっと粘り強く!」と求め続けるのか。

生け贄の牛を差し出す方法を知っていれば、止めれる局面もあるでしょう。

もちろん基本は大切ですが、フットボールの世界には様々な応用もあるのです。
posted by プロコーチ at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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