2007年01月30日

最初の笛

日本の女子が抱える弱点の一つに、体のぶつかり合いがあります。
これをフィジカルコンタクトと呼んでいます。
東アジア諸国を除けば、小さい部類に入る日本代表。
まともにぶつかっても、弾き飛ばされるだけ。
相手にどうやってぶつかるのか?
どのように身体を使うのか?
我々は、これを技術の1つとして捉えています。
「コンタクトスキル」
相手との競り合いの中での、どのようにコンタクトしていくのか。

何年も継続して、JFAは発信し続けています。
「技術が優れているだけでは世界に通用しない。
 タフであることが求められる!!」
競り合いに強い選手を育てよう。
この課題は、女子だけでなく、男子にも言えることです。
高い技術を発揮するためには、肉体的にも精神的にもタフでなくては。

先日、女子の練習試合で、主審を務めました。
両チームとも、中学生と高校生との混成チーム。
レベルは双方共に高いものでした。
特にボールコントロールを徹底的にトレーニングしているのをひしひしと感じました。
DFに間合いを詰められても、あわてることはありません。
ボールを動かして、突破や味方へのパスを平然と続けていました。

そんな彼女達なので、コンタクトスキルも身につけようとしていました。
攻撃でも守備でも、相手にぶつかることを嫌がりません。
むしろ積極的にコンタクトし、有利に展開しようとするのです。
その姿を見て、感心することしきりでした。
主審であることを忘れるほど、彼女達のプレーを観察していたのです。

ここで、一つ問題となるプレーが、開始数分で起こりました。
守備側の選手が、ボールを保持しようとする選手に、素早く近づきました。
これに気づいた攻撃の選手は、ボールを奪われないように、相手に背中を向けます。
いわゆる、ボールをキープする状態に入りました。
問題はこの次です。
守備側の選手が、相手の背中を両手で押したのです。
その瞬間、私は反則の笛を吹きました。

ところが、反則を取られた守備者は不服な表情を浮かべています。
小声で「なにもしてないじゃん」ともつぶやいていました。
なぜなら、後ろから押したと言っても、それほど激しくはないのです。
押された攻撃側も、少ししかバランスを崩していませんでした。
だから、彼女の「なにもしてないじゃん」につながったのでしょう。

審判によっては、この一言を聞いて、強く注意する方もいるかもしれません。
まさか、イエローカードを出す主審はいないとは思いますが・・・。
私は、彼女を優しく呼び寄せました。
そして、周りに聞こえる声で一言伝えたのです。
「後ろから、手を使わないようにね。」

私はこの行動に、2つの目的を持っていました。
1つは、この試合での主審の基準を、皆に伝えること。
そのためには、最初に起きたファールは必ず、反則をとる。
見逃したり、迷ってはダメ。
さらに、アドバンテージも取らない。
選手や、ベンチ、スタッフや観客も含め全員に向けて発信するのです。
「この試合では、このプレーは反則ですよ」

もう1つは、選手の将来に対してのメッセージです。
反則まがいのプレーをして、相手を止める、ボールを奪う。
これは、楽な方法なのです。
楽な方法に流れてしまっては、その選手の成長を止めてしまいます。
激しいプレーと汚いプレーは違う!!
もっといい方法でボールを奪う方法は無いものか?

ポジティブな考え方をもって、今後のフットボールライフを進んでもらいたい。
このメッセージをこめて、彼女に接したのです。
反則まがいのプレーなど、大人になってからでも身につくでしょう。
向上心をもった育成年代の、中学生・高校生。
フェアで、激しく。
心も、技術も、身体も。
私の思いが伝わっていることを、心底願っています。
ちなみに、その試合では、後ろからのファールは一度も無かったのです。
メッセージを伝えた彼女も含めて、疑わしいプレーすらありませんでした。
2つの目的が伝わったのなら、嬉しい限りです。


posted by プロコーチ at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | トレーニング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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